南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

まぼろしのマドリード・オリンピック

2009-10-11 21:35:48 | オリンピック
マドリードは2012年のオリンピックにも立候補していましたが、
破れ、今回再び、2016年のオリンピックに立候補して再び破れ
ました。東京も破れましたが、市民の支持率が90%近くで4都
市中最高の支持率だったマドリードの悔しさは、東京の比では
なかったと思います。

コペンハーゲンでのプレゼンテーションの時、レベッカ・ワイ
バーグというIOC委員からの「東京の地元の支持率が低かった
が、これを約30%も上昇させられたのはどのようなことでそう
なったのか、詳しく説明してほしい」という質問に、河野事務
総長は、「IOCの調査の後、かなりの盛り上がりを見せ、
最新の調査では80.9%となった」と回答しただけで、どうして
支持率向上を達成したのかは触れられませんでした。レベッカ
さんは、自分の質問の意図が正確に受け取られなかったことで
ちょっとがっかりしてしまったのではないでしょうか。

しかし、あまり盛り上がらなかった東京招致の支持率が80%
を超えていたというのはびっくりでした。でも本当かな?

しかし、マドリードはもっと盛り上がっていました。事前の
調査をみてもダントツの盛り上がりで、それはコペンハーゲン
でのプレゼンテーションにも顕著に現れていました。サマランチ
前会長をはじめ、カルロス国王、サパテロ首相がプレゼンに
参加したのを始め、招致委員会代表のメルセデス・コーゲンさん
(ホッケーのメダリスト)の説明も熱が入っていました。

この人は、自分でプロモーションビデオに登場して、マドリー
ドの素晴らしさをレポートしていくのですが、これがなかな
かよくできていました。各施設が具体的に映像、あるいはCG
で説明されていて、マドリードで開催することが全く問題ない
という雰囲気は非常によく伝わってきておりました。
しかしスペインは奇麗な人が多いですね。

また東京がアピールした環境に関しても、マドリードは自らを
「グリーンシティー」と称し、2016年のオリンピックを通して
街をさらに環境に適応した緑の街に生まれ変わらせるという
明確な計画を打ち出していました。

マドリードのプレゼンのコンセプトは、“Human Touch"そして
"We Believe"というキャッチフレーズでした。人間的な情熱と
それを信じる気持ち、極めて人間的な部分をアピールしていま
した。プレゼンのために用意された5つのビデオ映像もそれぞ
れ秀逸でした。ギターをベースにした音楽もよかったし、編集
もまた見事でした。スペインは広告の世界でもかなりレベルが
高いのですが、ひとつひとつの映像の作りはかなりよかったと
思います。

そして、最後の映像がすばらしかったです。2017年という
タイトルで始まるこの映像は、マドリードで行われる2016年
のオリンピックを通して、様々な人がどのように変わったのか
を描いたものです。すべてはマドリードでオリンピックが開催
されたらとう仮定に基づいているのですが、オリンピック選手
らしき人、オリンピックの観客、ごく普通の市民など様々な
人物が、スペイン語で、「私は~した」という短い言葉で語り
ます。

この女性は、「私は理解した」と言います。何を理解したのか
不明ですが、スポーツの大切さを理解したというのでしょうか。
こういう感じで、いろんな人々が登場してきます。
「私は見た」「私は感じた」「私は乗り越えた」「私は変わっ
た」などいろんな人が、いろんなコメントをしていきます。
その中に、こんな人たちも出てきます。

「私は跳んだ」とこの老人は言います。画面が引いていくと、
この老人は車椅子に乗っていて、とても跳べる感じはしません。
左のほうにテレビが見えてきます。そうかこの老人はオリン
ピックの中継を見て、跳べるはずのない自分も跳んだ感覚を
経験したのだな、ということがわかります。

夜のマドリードの街を走るバスにたたずむ一人の女性が振り
向くと、テロップに"I shouted"(私は叫んだ)という文字。
彼女は聾唖者のようで言葉を発することができません。
それでも彼女は、マドリードオリンピックで、肉体的には
不可能な叫びを経験したと言っているかのようです。

そしてこれが最後のコメントです。「私は忘れない」。
この青年は、マドリードオリンピックのことを一生忘れない
だろうと言います。

2016年に、マドリードでオリンピックが開催されたら、
こんなにもいろんな素敵な奇跡が起きる。街が変わるだけ
じゃない。マドリードの市民の一人一人の心が、スペイン
人に一人一人の心が、世界の人々の心が変わる。それほど
までに素敵で、影響力のあるマドリード・オリンピック。
そんなメッセージが、伝わってきます。

プレゼンの会場では、このビデオ映像の後で割れんばかり
の拍手が起こっていました。まるでアンコールとかいわん
ばかりの雰囲気のように聞こえました。マドリードが最後
のリオデジャネイロとの決戦まで残ったのは、しかも
ロンドンの次にまたヨーロッパはないのではというハン
ディを乗り越えて残ったのは、それだけの理由があったの
だと思います。

日本が、サッカーのワールドカップを誘致しようとして
立候補を宣言したようです。オリンピック誘致が失敗に
終わって、会場設備的に問題があります。また、東京が
再びオリンピックに立候補しようとする動きがあります。
広島と長崎が、平和をアピールするためにオリッピック
招致に向けて立ち上がるというニュースも入ってきました。

これから招致プレゼンを準備しようとされている組織、
団体の皆様、是非、過去のプレゼンを研究されて、国際的
に競争力のあるプレゼンをしていただきたいと思います。