南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

ロンドンに学べ!

2006-08-24 02:52:46 | オリンピック
今、日本では、オリンピック候補地として、東京か福岡かという
絞り込みが行われているようなのですが、昨年シンガポールで
行われたIOC総会でのロンドンのプレゼンと比較すると、ちょっと
これは無理なんじゃないかと思ってしまうのです。

昨年の7月、うちの会社の近くのラッフルズシティーの会議場で
IOCの総会が開かれました。世界各国から著名人が集まったので
当時のシンガポールはものすごい警戒態勢でした。イギリスから
はベッカムやブレア首相が、ニューヨークからはヒラリー・クリン
トンやニューヨーク市長が、フランスからはシラクとかが来ており
ました。

数日間の会期のうちに何度か投票が行われ、モスクワが落ち、
ニューヨークが落ち、マドリッドが落ち、最後に残ったのはパリ
とロンドンという百年戦争の頃からの宿敵の戦いでした。パリが
有力と言われていましたが、最後に勝ったのはロンドンでした。

ロンドンのプレゼンは見事だったと言われました。その頃、私は
「プレゼンテーションスキル」に関してのミニ講演会を予定して
いましたので、ロンドンのプレゼンを素材として取り上げようか
と思っていました。しかし、決定の喜びもつかの間、ロンドンで
のテロのため、ロンドンのプレゼンのことはほとんどマスコミで
取り上げられることもなくなってしまいました。

実はこのロンドンのプレゼンは、ウェブサイトですべてを見るこ
とができます。ロンドンだけではなくて、パリ、マドリッド、
ニューヨーク、モスクワのすべてのプレゼンが見られます。日本
にオリンピックを誘致しようと考えている人は、この映像を研究
してオリンピック誘致をどうすれば成功させられるかを研究すべ
きです。

WWW.OLYMPIC.ORGというオリンピックのオフィシャルサイト
があります。このページの中にいくつかリンクが紹介されて
います。この中のLondon is elected host cityという中の、
Relive the bid presentation of Londonというところを
クリックすると映像でプレゼンの一部始終が見られるように
なっています。

数名のプレゼンターがプレゼンをしていく間に、プロモーション
フィルムが挿入されていきます。それぞれのプレゼン自体は決して
大げさなショーマンシップがあるというわけではないのですが、
全体の構成が見事です。また随所で紹介されるプロモーション
ビデオも見事です。フランスは映画監督のリュックベッソンが
ディレクションした華やかなものですが、ロンドンのそれは地味
でありながらヒューマンタッチのものでした。

ロンドンは、元オリンピック陸上選手のセバスチャン・コーが
プレゼンチームの代表として、最終演説をしました。この人がまだ
子供の頃、メキシコオリンピックをテレビで見て、感動し、未来
のオリンピックを夢見たという話をしました。実はこのときの
ロンドンは、これが一つのメッセージになっていました。

今は貧しい国の子供たちも、スポーツを通して、未来に、世界に
つながることができるというメッセージです。このテーマで作ら
れたプロモーションビデオは秀逸です。また、会場には、通常
お役所のお偉いさんを並べるのですが、ロンドンが連れてきたのは
子供たちでした。これは感動的でした。

また、プレゼンの見事さは、何人かが、フランス語で話をしたこと
でした。IOCのディシジョンメーカーの何人かはフランスだし、
ロンドンがアピールした「第三世界のためのオリンピック」という
のは、実はアフリカ大陸で、アフリカではフランス語を国語にして
いる国々も数多くあります。

ブレア首相は、当日はビデオプレゼンできわめて説得力のある演説
をしたのですが、導入部分はフランス語でした。決して流暢では
なく外国人がしゃべるフランス語という感じでしょうが、こういう
のも一生懸命さが伝わってきてかなりのポイントになったのではと
思います。

さらに、ロンドンは事前から積極的なPR活動を行っていました。
英国のオリンピク関係のウェブサイトは非常にわかりやすく情報公開
しておりました。世界の広告コミュニケーションビジネスの中で
イギリスは世界をリードしているのですが、オリンピックに関しても
これはちょっと日本人にはかなわないというような展開をしておりま
した。

さらに、アテネが古代スポーツの殿堂であるとすれば、サッカーや
ゴルフやテニス、ラグビーなどの現代スポーツの発祥の地はイギリス
です。ロンドンのプレゼンでは、スポーツを人類にとって重要な資産
と位置づけていました。これもプレゼン全体をスケールの大きなもの
にしました。

このようなロンドンのプレゼンに比較して見ると、東京のコンセプト
が実にふにゃふにゃな感じがします。どうしてこの都市でオリンピック
をしないといけないのか、それをそこで開催することで、その都市だけ
ではなく、人類全体にとってどういう意味をもたらすのか、そういう
部分が全く感じられません。福岡にはちょっとコンセプトを感じるの
ですが、でも世界にアピールするには視野が小さい気がします。

まあ、せいぜいがんばってもらいたいと思います。