昨年6月19日にこのシベリウス「ヴァイオリン協奏曲」を取り上げた時は、ヴァイオリンがシルヴィア・マルコヴィッチ、ネーメ・ヤルヴィ指揮、エーテボリ交響楽団による1987年の録音であった。
今回かけているCDはヴァイオリンは五嶋みどり、指揮スーピン・メータ、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団による1993年の録音。
前回のCDよりはヴァイオリンの音はもっと渋いというか、派手さ・透明感が少ないと感じる。暗闇の中で絞り出すようにヴァイオリンの音色である。五嶋みどりの艶やかな力強さはあまり感じられない。ヴァイオリン協奏曲なのにヴァイオリンが後景にあって浮かび上がってこないように聴こえる。五嶋みどりのシベリウスの音楽に対する解釈なのか、録音のためなのかはよく解らないが、私としてはどちらも受け入れたい表現である。ただしこちらの演奏は、盛り上がり部分はもう一瞬であってももう少し明るい光明が見えてもいいような気分にはなる。最初から最後まで、混沌の中で暗い情念にもがいているような感じである。そのような解決の見えない世界、とても惹かれるが、シベリウスはもう少し垣間見える光明も表現してほしいような気分もある。
ブルッフのスコットランド幻想曲と一緒に録音されることが多いが、シベリウスだけを聴きたいことの方が多いので、いつもこれは聴かずに止めてしまう。美しい曲であることは承知をしているし、この曲だけを聴きたい気分の時が無いわけではない。本日はシベリウスだけを繰り返し聴きたい。