交通事故で急死した母が開店を準備していた店を引き継ぐことにした32歳のキャリアウーマン前原葵が、スタッフ急募の張り紙を見て応募してきた31歳の厨房経験者松尾還二と千駄ヶ谷でワインバーを始め、やりくりしながら店舗を運営しつつ、さまざまな男と絡んでいくという展開の小説。
う~ん、何というか、「婦人公論」連載だし、時折折に見せ場を作らなきゃならないということはあるんでしょうけど、主人公の男性関係の、考えがあるようなないような行き当たりばったり加減が、読んでいて楽しいような悲しいような情けないような、そういう小説です。「振り返った過去の中に、今も自分が手にしていたいと思うものは一つもなかった」(256ページ)という心持ち、相手に対しても「どうして男の人は今目の前にいる私ではなく、過去の私にばかり気を向けてしまうのだろう」(255ページ)と訝しく思い、といって今が幸せと思っているのでもない、それがこの主人公の哀しい性というか、どこまでも満たされない昏さを示しているように思えました。

島本理生 中央公論新社 2020年11月25日発行
「婦人公論」連載
う~ん、何というか、「婦人公論」連載だし、時折折に見せ場を作らなきゃならないということはあるんでしょうけど、主人公の男性関係の、考えがあるようなないような行き当たりばったり加減が、読んでいて楽しいような悲しいような情けないような、そういう小説です。「振り返った過去の中に、今も自分が手にしていたいと思うものは一つもなかった」(256ページ)という心持ち、相手に対しても「どうして男の人は今目の前にいる私ではなく、過去の私にばかり気を向けてしまうのだろう」(255ページ)と訝しく思い、といって今が幸せと思っているのでもない、それがこの主人公の哀しい性というか、どこまでも満たされない昏さを示しているように思えました。

島本理生 中央公論新社 2020年11月25日発行
「婦人公論」連載