伊東良徳の超乱読読書日記

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夜の桃

2012-04-30 22:14:25 | 小説
 45歳のIT企業社長が、今も「主婦向けファッション誌の読者モデルとしても通用しそうな」美貌の妻、モニカ・ベルッチのようなグラマーな11歳年下のバツイチの愛人、25歳処女で本当に「肌があう」部下の契約社員を相手に爛れきった性生活を繰り広げる官能小説。
 前8割は、中年男の妄想満開の展開、終盤はそんなうまいこと行くもんかいという読者の嫉妬に答えた展開です(ネタバレというよりも、誰が読んでもいずれこうなるだろうと予測する流れです)。
 肌があう相手というのが、肌と肌が触れただけでまったく違う、しっとり吸いつくようなのに弱い電気が流れているみたいにぴりぴりした刺激がたまらない、「ただ気持ちがいいなんてものじゃない。ほんとうに肌があう女っていうのは凶器といっしょだ。セックスは気が遠くなるくらいいいが、やるたびに怖くなる。このままどこまでよくなるんだろう」(149ページ)というような調子で描かれています。そういうことってあるんだろうか。あるのかもしれない。そういうものを求めてさすらう気にもなれないのですが、ちょっと憧れも感じます。私は、どちらかというと、やっかみは感じず、むしろ妄想炸裂ならそれはそれで最後まで突っ走ってみてもよかったんじゃないかなと思います。
 その一方で、「男は一生罪悪感をもって歩く生きものなのだろうか。まえの晩よその女と会った翌朝は、慣れているはずの雅人でも薄い氷を踏むような気分だった」(30ページ)、「別な女と会ってきたばかりの夫は、草むらに潜むバッタのように敏感なものだ。雅人は妻の表情になにか危険なものを感じた」(211ページ)、「なぜか別な女性と会った日は、その人のにおいが身体に染みついているように感じられるものだ。血まみれの手をして犯行現場の近くを歩いている殺人犯にでもなった気がする」(213ページ)、「雅人は恐妻家ではないつもりだが、なにげない妻のひと言にはいつも内心どぎまぎしてしまう。夫が妻を恐れるというのは、リンゴが木から落ちるのと同じだった」(218ページ)という心理描写は・・・そうなんだろうなと思いつつ、笑ってしまうというか、考えさせられるというか。


石田衣良 新潮文庫 2011年1月1日発行(単行本は2008年5月発行)
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