ムーミントロールとムーミンパパ、ムーミンママらと周囲のものたちが交流し冒険しながら思い思いに振る舞い問題を乗り越えて行く様子を描いた童話。
アニメと有名な童話シリーズだということしか知らず、今回初めて通しで読んでみたのですが、前の話が前提となって話が続いているということはあまりなく、各巻が読み切りのように読むことができます。私の印象では、童話作品としては4巻(5作目)の「ムーミン谷の夏まつり」がピークで、スナフキンがミイにいう「大切なのは、自分のしたいことがなにかを、わかっているってことだよ」(108ページ)が通しテーマかなと思います。文学作品として見ると次の「ムーミン谷の冬」の方が洗練されているかも知れませんが少し小さくまとまった感じです。「ムーミン谷の仲間たち」は短編集で外伝みたいなものですし(あまり「外伝」っぽくもないのですが)、その後の「ムーミンパパ海へいく」と「ムーミン谷の十一月」は、構築した世界を崩して誰もそんないい人じゃいられないし、いつまでも他人に守り導いてもらうんじゃなくて自分の途は自分で見いだせよというメッセージを感じますが、童話というよりも教訓的でありまた成長物語のイメージです。
通し読みすると、作者がきちんと説明しよう、つじつまを合わせようとしていないことが感じられます。多くの登場人物が種族名なのか固有名詞なのか判別しにくいのですが、特に戸惑うのは「ヘムレンさん」です。種族名としては「へムル」なので、「ヘムレンさん」は固有名詞と思ったのですが、「たのしいムーミン一家」では1人称が「わし」で性別に言及されないヘムレンさんが登場し、「ムーミンパパの思い出」では1人称が「わたし」のヘムレンさん(ヘムレンおばさん)、「ムーミン谷の冬」では1人称が「ぼく」のヘムレンさんが登場した挙げ句、「ムーミン谷の仲間たち」に至り「あるヘムレンさん」(116ページ)というのが登場します。ミムラねえさんは、34姉妹の長姉、ミイは末娘としてムーミンパパの若き日の冒険の中で登場します(「ムーミンパパの思い出」)が、どちらもムーミントロールやスナフキンとともにも登場します(スナフキンはミイの異父弟の設定)。ミイとミムラねえさんの年齢差はいくつなのか、ミムラねえさんは何歳なのか、説明もありません(まぁ、人間じゃないから、妊娠期間が短いかも、一度にたくさん生まれるのかも…)。「ムーミン谷の仲間たち」でムーミンパパは「竜というものは、ほぼ70年まえに、人々の意識から消えてしまったんだよ」とムーミントロールに説明しています(106ページ)。「ムーミンパパの思い出」で、自分がフレドリクソンと謀って竜のエドワードを騙して利用し(68~75ページ)、その後エドワードに恨まれて執念深く追われたことなどなかったかのように(ムーミンパパがそのことをムーミントロールには隠しておきたかったなどの説明があるならわかりますが、それもありません)。
そういううるさいことを言わずに、その世界に浸りしみじみ味わうべき作品なのですね。

トーベ・ヤンソン 講談社
1巻 ムーミン谷の彗星 KOMETEN KOMMER
2019年3月26日発行 原書初版1946年、第3版1968年 訳:下村隆一
2巻 たのしいムーミン一家 TROLLKARLENS HATT
2019年6月3日発行 原書初版1948年、第3版1968年 訳:山室静
3巻 ムーミンパパの思い出 MUMINPAPPANS MEMOARER
2019年6月25日発行 原書初版1950年、第3版1968年 訳:小野寺百合子
4巻 ムーミン谷の夏まつり FARLIG MIDSOMMAR
2019年8月5日発行 原書1954年 訳:下村隆一
5巻 ムーミン谷の冬 TROLLVINTER
2020年2月25日発行 原書1957年 訳:山室静
6巻 ムーミン谷の仲間たち DET OSYNLIGA BARNET
2020年4月21日発行 原書1962年 訳:山室静
7巻 ムーミンパパ海へいく PAPPAN OCH HAVET
2020年8月3日発行 原書1965年 訳:小野寺百合子
8巻 ムーミン谷の十一月 SENTI NOVEMBER
2020年9月29日発行 原書1970年 訳:鈴木徹郎
9巻 小さなトロールと大きな洪水 SMATROLLEN OCH DEN STORA OVERSVAMNINGEN
2020年10月12日発行 原書1945年 訳:冨原眞弓
アニメと有名な童話シリーズだということしか知らず、今回初めて通しで読んでみたのですが、前の話が前提となって話が続いているということはあまりなく、各巻が読み切りのように読むことができます。私の印象では、童話作品としては4巻(5作目)の「ムーミン谷の夏まつり」がピークで、スナフキンがミイにいう「大切なのは、自分のしたいことがなにかを、わかっているってことだよ」(108ページ)が通しテーマかなと思います。文学作品として見ると次の「ムーミン谷の冬」の方が洗練されているかも知れませんが少し小さくまとまった感じです。「ムーミン谷の仲間たち」は短編集で外伝みたいなものですし(あまり「外伝」っぽくもないのですが)、その後の「ムーミンパパ海へいく」と「ムーミン谷の十一月」は、構築した世界を崩して誰もそんないい人じゃいられないし、いつまでも他人に守り導いてもらうんじゃなくて自分の途は自分で見いだせよというメッセージを感じますが、童話というよりも教訓的でありまた成長物語のイメージです。
通し読みすると、作者がきちんと説明しよう、つじつまを合わせようとしていないことが感じられます。多くの登場人物が種族名なのか固有名詞なのか判別しにくいのですが、特に戸惑うのは「ヘムレンさん」です。種族名としては「へムル」なので、「ヘムレンさん」は固有名詞と思ったのですが、「たのしいムーミン一家」では1人称が「わし」で性別に言及されないヘムレンさんが登場し、「ムーミンパパの思い出」では1人称が「わたし」のヘムレンさん(ヘムレンおばさん)、「ムーミン谷の冬」では1人称が「ぼく」のヘムレンさんが登場した挙げ句、「ムーミン谷の仲間たち」に至り「あるヘムレンさん」(116ページ)というのが登場します。ミムラねえさんは、34姉妹の長姉、ミイは末娘としてムーミンパパの若き日の冒険の中で登場します(「ムーミンパパの思い出」)が、どちらもムーミントロールやスナフキンとともにも登場します(スナフキンはミイの異父弟の設定)。ミイとミムラねえさんの年齢差はいくつなのか、ミムラねえさんは何歳なのか、説明もありません(まぁ、人間じゃないから、妊娠期間が短いかも、一度にたくさん生まれるのかも…)。「ムーミン谷の仲間たち」でムーミンパパは「竜というものは、ほぼ70年まえに、人々の意識から消えてしまったんだよ」とムーミントロールに説明しています(106ページ)。「ムーミンパパの思い出」で、自分がフレドリクソンと謀って竜のエドワードを騙して利用し(68~75ページ)、その後エドワードに恨まれて執念深く追われたことなどなかったかのように(ムーミンパパがそのことをムーミントロールには隠しておきたかったなどの説明があるならわかりますが、それもありません)。
そういううるさいことを言わずに、その世界に浸りしみじみ味わうべき作品なのですね。

トーベ・ヤンソン 講談社
1巻 ムーミン谷の彗星 KOMETEN KOMMER
2019年3月26日発行 原書初版1946年、第3版1968年 訳:下村隆一
2巻 たのしいムーミン一家 TROLLKARLENS HATT
2019年6月3日発行 原書初版1948年、第3版1968年 訳:山室静
3巻 ムーミンパパの思い出 MUMINPAPPANS MEMOARER
2019年6月25日発行 原書初版1950年、第3版1968年 訳:小野寺百合子
4巻 ムーミン谷の夏まつり FARLIG MIDSOMMAR
2019年8月5日発行 原書1954年 訳:下村隆一
5巻 ムーミン谷の冬 TROLLVINTER
2020年2月25日発行 原書1957年 訳:山室静
6巻 ムーミン谷の仲間たち DET OSYNLIGA BARNET
2020年4月21日発行 原書1962年 訳:山室静
7巻 ムーミンパパ海へいく PAPPAN OCH HAVET
2020年8月3日発行 原書1965年 訳:小野寺百合子
8巻 ムーミン谷の十一月 SENTI NOVEMBER
2020年9月29日発行 原書1970年 訳:鈴木徹郎
9巻 小さなトロールと大きな洪水 SMATROLLEN OCH DEN STORA OVERSVAMNINGEN
2020年10月12日発行 原書1945年 訳:冨原眞弓
