伊東良徳の超乱読読書日記

読んだ本の感想を中心に本に対するコメントを書き散らします。読み終わった本は図書館に返すのでフォローは保証できません。

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歌舞伎町事変1996~2006

2006-09-30 19:44:25 | ノンフィクション
 歌舞伎町の案内人として18年間歌舞伎町を見てきた在日中国人と歌舞伎町の写真を撮り続けてきた写真家が、歌舞伎町でのヤクザ、中国マフィア・「不良中国人」、アジア系外国人たちと警察の悲喜こもごもを文章と写真でつづった本です。 歌舞伎町で、あるいは堂々と、あるいは片隅でこっそりと行われる暴力沙汰の話が中心で、迫力があります。
 写真の方もけんかと摘発関係が多いです。写真は、被写体への配慮から顔に修正がかかっていますが、テーマからして表情が見えると深み・凄みが出るものだけに、その点が残念。


李小牧、権徹 ワニマガジン
2006年10月10日発行(この発行日って・・・)
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下流喰い 消費者金融の実態

2006-09-29 00:45:09 | ノンフィクション
 消費者金融とヤミ金融の実情についての最近のレポートです。
 消費者金融については執拗な取立とともに押し貸しとも言える多重債務者への追加貸付セールスを論じています。消費者金融が好む客層は低収入の長くつきあえる、つまり完済できずに高い金利を払い続けてくれる人達という分析は納得します。そういう人達に多額の貸付をすること自体が多重債務者・自己破産予備軍を作り、ヤミ金融への借入に追い立てているわけです。消費者金融の標準的な貸付金利では毎月の返済可能額が4万5000円の人は借入総額が200万円になると「永遠に完済できない」ことが明確に指摘されています。そういう人達に平気で総額200万円はおろか300万、400万と貸し付けているのが、今の消費者金融の実情というわけです。著者はそれを「悪魔的ビジネスモデル」と呼んでいます。
 ヤミ金融については、債務者の女性を風俗店に沈めて売春させる「おんな市」の潜入レポート(123~133頁)が圧巻。いまだにそんなことがあるんですね。ビックリしました。

 著者も論じているように、消費者金融が主張している、「上限金利を下げると借り手の多くはヤミ金融に流れる」というのはウソ。借り手がヤミ金融に借りざるを得なくなるのは、ほとんどの場合、消費者金融の高金利に返済ができなくなった末のこと。金利が低ければ、消費者金融が積極的にセールスして借金の額を増やさなければ、ヤミ金融からの借入に追い込まれる人はかなり減るはず。
 そのあたりも含めて、「グレーゾーン金利」問題など最近の諸費者金融をめぐる問題がコンパクトにまとめられています。


須田慎一郎 ちくま新書 2006年9月10日発行
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もう一つの鎖国 日本は世界で孤立する

2006-09-28 22:04:39 | 人文・社会科学系
 オランダ生まれ・日本在住のジャーナリストによる日本政府・官僚の外交姿勢についての分析・批判の本。
 書かれている内容は概ね以下の通り。
 日本は、戦後一貫して、アメリカの保護の下で経済活動に専念し、国際政治・外交の場では何もしないという姿勢をとってきた。このことを著者は実質的な鎖国と評価しています。
 しかし、アメリカの側には既に日本を保護し続ける意志はない。戦後アメリカは、平和・秩序維持に努力してきたために国際的な権威を持っていたが、近年は国際秩序の破壊者となり、軍事力はあっても国際政治をリードするパワーは失われた。それでもアメリカの行動を支持し続ける日本の姿勢は国際的に理解されない。
 アメリカは常に外敵を求めており、ソ連崩壊後「ならず者国家」「国際テロネットワーク」を外敵と位置づけたが役不足で、今は中国をターゲットにしようとしている。
 中国の支配層はかなり変貌し開放的になって経済的成功を求めているが、中心的世代は文革などの記憶から秩序の崩壊を極度に恐れており、人民の蜂起の芽を感じると弾圧に走るという事情があり、中国に欧米のような意味での民主主義を求めても実現できない。しかし中国が対外的な(台湾は国内と考えられている)武力行使に至ることは想定しがたい。現在ではアメリカ経済(ドル)を支えているのは日本と中国(の大量のドル保有)であり、ブッシュ政権の中国批判は的はずれ。
 日本は、中国への不毛な批判・中国政府への侮辱をやめて、中国政府の立場を理解しつつ、東アジアの安定のために役割を果たすべき・・・
 こういうことを少しまわりくどく、ちょっと論証不足な感じも残しつつ書いてあります。

 前半のもうアメリカの保護は期待できないし、アメリカに追随していると国際社会で尊敬されないという主張はよく理解できますが、後半の中国との友好にまず取り組めという主張と中国への評価はちょっと飛躍がある気がします。今時の日本にどっぷり浸かっている身には、著者の主張はずいぶんと中国寄りに感じられます。でも、アジアの他の諸国の中国の評価と日本の中国に対する評価の落差、特に「多くの面で日本よりも民主的な」韓国が中国には好意的という指摘は、ちょっとハッとします。


カレル・ヴァン・ウォルフレン 訳:井上実
角川書店 2006年7月31日発行
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人口減少パニック

2006-09-27 01:47:11 | ノンフィクション
 人口減少問題を切り口にして、外国人エリートの争奪や外国人労働者の受け入れ問題、出産・子育て、高齢者のクォリティ・オブ・ライフや生き甲斐、自治体の過疎対策等を広く浅く紹介した本。
 後半は共同通信が配信した記事そのままのようで、連載記事で読めば読む日が違うから気にならない話のズレが、連載を同じ章にそのままつなげているために気になります。1つの読み物にするなら文章は少し編集する手間をかけてほしい。
 そして広くは人口問題でくくっているけど扱っている問題は様々で、やはり1つの読み物としては統一性が感じにくくなっています。
 それを補うのに前半をつけたのでしょうけど、これがまたいくつかのことを通り一遍に書いていてしっかりした芯になっていないように思えます。

 人口減少がいろいろなことに関わり影響していくのだなあということは感じられるでしょうけど、1つの読み物として読むにはまとまりや哲学を感じにくいと思いました。


高橋乗宣 PHP研究所 2006年8月3日発行
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ルーベンス

2006-09-26 08:06:05 | 人文・社会科学系
 17世紀前半に活躍した画家ルーベンスの画集+解説の本。「フランダースの犬」でネロが最後に聖堂に忍び込んで見る絵を描いた画家ですね。
 ルーベンスは商業的にかなり成功した画家で、工房を作りチームで大量の絵を生産したそうです(作品は1600点以上に及び、旅行や外交活動の時間を除けば32年間に毎週1点の割合で制作されたことになるそうです。54頁)。ルーベンスは得意な人物を自分で描いて動物や植物は工房のスタッフの画家に描かせることが多かったけれども、だれが何を書いたかは正確に記録しルーベンス自身が描いた割合で価格を決めていたそうです(43頁)。

 私は、ルーベンスの絵をまとめてみたのは初めてですが、得意の人物は、注文主を神話中の人物にしたりの媚びはありますが、体のふくらみ、たるみ、しわが必ず描かれていてあまり美化はしないタイプと感じました。
 意外だったのは、今回初めて見た「フランドルの村祭り」(73頁)とか「イタリア村の農民の踊り」(79頁)のような風景画・農民画の巧みさ・躍動感です。人物画だけじゃなくてこういうのも上手なんですね。スタッフが描いたのかも知れませんが。
 画集でじっくりと見ると、細部の描写がかなり丁寧で、展覧会が来たら現物で見たいなと思いました。


原題:RUBENS
ジル・ネレ タッシェン・ジャパン 2006年9月5日発行
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天と地の守り人 新刊情報

2006-09-25 22:08:29 | Weblog
 守り人シリーズの最新刊「天と地の守り人 ロタ王国編」が偕成社のサイトで昨日現在も2006年秋刊行となっていました。そこで、昨日、偕成社にメールで「このサイトの情報ステーションに、現在も、『天と地の守り人』ロタ王国編が『2006年秋刊行』と書かれたままですが、いまだに刊行時期が決まっていないのですか。また、同じ箇所に『これにともない『守り人&旅人スペシャルサイト』が8月にリニューアルされます。ご期待ください!』と書かれたままですが、もう9月も終わろうとしているのにスペシャルサイトは全くリニューアルされていません。どうなって いるのでしょうか。」という問い合わせをしました(いじわるなヤツ!)。そうすると早速今朝、偕成社から発売は11月下旬の予定、スペシャルサイトの立ち上げは10月上旬の予定と回答があり、サイトの情報ステーションも更新されました。対応が早くて感激しました。
 ということで守り人シリーズの最新刊は11月下旬発売だそうです。楽しみに待ちましょう。

 なお、守り人シリーズについての私の感想は私のHPを見てください。
http://www.shomin-law.com/girlSeireinoMoribito.html



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”ハリー・ポッター”の料理・お菓子CookingBook

2006-09-25 03:30:09 | 趣味の本・暇つぶし本
 ハリー・ポッターに登場するイギリスの料理とお菓子を写真入りで解説し、作り方を書いた本。
 新しい本ではありませんが、私はこういう本を探していました。ハリー・ポッターを読んでいて、様々な料理やお菓子が登場しますが、どういうものかイメージできないことがよくあります。魔法のお菓子はしかたないですが(これは映画に期待したいのですが・・・)、せめて普通のイギリス料理はと思ってイギリスの料理を紹介する本を探しました。でも意外にイギリス料理を写真入りで紹介した本は見あたりません。

 ハリーのお気に入りのステーキ・キドニー・パイの写真は、この本で初めて見ました。他にもいくつかハリー・ポッターに登場する料理で初めてイメージできたものがあり、ハリー・ポッターファンとしては、収穫でした。
 魔法のお菓子の方は、ちょっと無理な想像が多い感じで、やめた方がよかったかなと思いますが。


魔法の料理会 コアラブックス 2002年11月30日発行
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金色の雨がふる

2006-09-24 11:01:04 | 小説
 現代の42歳のバツイチ女性が35歳の嘘つき・暴力男に入れ込んで破綻していくストーリーと明治時代の足尾銅山での女郎と坑夫の果たせぬ恋のストーリーを絡めた小説。

 2つのストーリーは最初と最後に現代に明治時代の女郎の幽霊が現れるところでシンクロするだけです。400頁あまりの小説で、現代に明治時代の幽霊が出てくるのは最初の数ページの後は408頁から。いつになったらこの同時進行が交わるのかなと思って読んでいると、めげます。何のために同時進行させているのか、私には理解できませんでした。

 明治時代の女郎の方は、澄んだ眼の腕のいい坑夫に恋し、実業家に身請けされた後、安楽な生活の中で坑夫との再会を先延ばしにするうちに坑夫が落盤で死に、駆けつけなかったことを後悔し鉱山街に戻って死に、幽霊となります。
 現代の話は、財布を拾われたことを契機に知り合った自称司法書士・バツイチ、実際は性犯罪の前科あり・離婚歴3回・日雇い労働者の暴力男と知り合った主人公が、男の強引な言い寄り方に惹かれて2度目のデートで肉体関係を持ちその関係にのめり込み、次第に男の化けの皮がはがれて行き、さらには男が主人公と同じマンションに住む知人を強姦し殺害する事態になっても、あの人は誤解されている、可哀想な人、あの人を理解できるのは私だけ、私ならあの人を変えられるという、典型的な別れられないDV(ドメスティック・バイオレンス=夫婦・恋人間での暴力)被害者の心理で逃避行に付いていき逮捕されます。
 私がとても理解できないのは、作者が主人公にその行動をさせ・正当化しようとしていると見えること。明治時代の女郎が坑夫の死を知ってすぐに再会しようとしなかったことを後悔して幽霊となること、主人公が小学校の頃いじめに遭いそれをかばってくれた子を後に見殺しにしたことへの後悔、そういうエピソードを並べた上、最後にはこのDV男を明治時代のまじめで一途だった坑夫の生まれ変わりだとしています。私には、明治時代の坑夫と現代のこのDV男に共通点を見ることはできません。最後の方のこの言いぐさには違和感しか感じませんでした。しかし、現代のストーリーに明治時代のエピソードを並行させる意味は、この構成からすると現代の主人公とこのDV男を正当化することだけにあったと読めます。主人公は最後に逮捕されながら自分の選んだ道を後悔しない様子です。主人公の友人は、DV男から逃げろ、関わり合いになるなと正しいアドヴァイスをするのですが、主人公はそれを無視してのめり込む道を選び、しかもそれを後悔しないというエンディングです。光文社が「新刊案内」でつけたキャッチが「ふた組の男女の運命的な出会いを通して描く後悔から願いへの物語」「私は逃げない」です。かなり確信的に、DV男には関わるなという世間の常識に反して、DV男から逃げるなというメッセージですね。
 私はDVの事件はやっていません(断言しておきます)が、DVに詳しい弁護士の意見では、あの人を理解できるのは自分だけ、あの人には私が必要という心理がDV被害の深みにはまっていく典型的パターンとのことです。そういう心理にはまり破綻する主人公を美化するような小説には、強い違和感を持ちました。


桐生典子 光文社 2006年5月25日発行
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なぜ紫の夜明けに

2006-09-23 07:43:56 | 小説
 非行少年に脅され続け高校時代にナイフで脅されてレイプに加わり、その後自殺を試みて奇跡的に一命を取り留めた過去を持つ主人公が、3人の女性とその親たちとの間で繰り広げる愛憎の心理ミステリーといったところ。
 この主人公、かなり読みが浅くて場当たり的なところがありますが、基本的にはそれほど悪人ではありません(レイプも、ナイフを突きつけられて加わったもの)。にもかかわらずその行動からまわりが次々と不幸になり精神を病んでいく展開には、話ができすぎとは感じますが、やりきれない思いがします。

 また、この主人公、死のうと思ってバイクでフルスピードで突っ込んでも、ナイフで腹を刺されて内蔵をえぐられても、火事で燃える建材の下敷きになっても死なず、ゾンビのように生きのびるのがまたいかにもウソっぽい。ちょっと、その昔読んだ竹宮恵子の「ファラオの墓」のサリオキスを思い出してしまいました(こんなこと言ってわかる人ほとんどいないと思いますが)。

 でも、ここまでこじれるかと思うほどぐちゃぐちゃにした後、こじれをほどいていく最後は、それなりに美しく感動的でもあり圧巻(あえて中身は書きませんけど、読んでいたら、こじれをほどくにはこれしかないよねってパターンではありますが)。ちょっと「愛と誠」と「タイタニック」を連想してしまいましたけどね。


吉村達也 双葉社 2006年8月25日発行
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愛闇殺

2006-09-22 22:06:41 | 小説
 タイでの保険金殺人事件に端を発する一連の事件をめぐる、刑事が主人公の人情ものです。
 本のカバーには「直木賞作家による待望の長編書き下ろしミステリ」とありますが、謎やトリックはあまりなく、話の展開もおおかた見えてますから、ミステリーとして読むのはちょっと辛い感じがします。登場人物の人物描写に重みを置いた人情話的刑事娯楽小説として読むのなら楽しめます。

 ただ、最後に犯人を殺害した人物が逮捕を免れる作りにちょっと無理を感じます。逮捕されないのが正義に反するという意味じゃなくて、タイの警察をなめ過ぎ。深夜にゲストハウスのすぐ前で射殺されていて、呼び出されて出てきたところを打たれたと思われる状況で、警察が死者の携帯電話を押収・チェックしないなんて考えられません。今時は携帯電話は普通の事件でも重要な証拠物件として押収されます。ましてや呼び出されて打たれたと思われるときに、その携帯は死者が持ったままで、その携帯に直前の着信履歴が残っている人物にタイの警察が事情聴取もせずに迷宮入りなんて・・・そういうストーリーにしたいのならせめて死者の携帯を処分しておかないと・・・


笹倉明 早川書房 2006年6月30日発行
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