伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

「いいね!」を集めるワードセンス

2024-03-31 23:43:47 | 実用書・ビジネス書
 著者がセンスがいいと思う言葉の用い方、切り返し方などについて紹介し論じた本。
 タイトルの「いいね!」を集めるというのは、いかにものキャッチコピーで、それに向けたとかそれに特化したような記述は見られません。
 著者は、芸人と文豪がお好きなようで、紹介事例、文例はその方面が多くなっています。
 状況に合わせて間髪を入れず言葉の返しができるような「運動反射神経」を鍛えるためにといって、著者は、テレビを見ながらツッコミを入れる練習をすることを勧めています。私の89歳の母親がいつもテレビを見ながらテレビに文句を言っていると聞きますが、そうか、ワードセンスを磨く効果があるのか…


齋藤孝 ちくま新書 2024年1月10日発行
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漫画を描く 凜としたヒロインは美しい

2024-03-30 22:44:30 | ノンフィクション
 漫画家里中満智子が、作品を描く姿勢、これまでに描いてきた作品やこれまでの人生などについて語った本。
 里中作品については子どもの頃~若い頃に読んだ記憶があり、タイトルも覚えていなかったのですが、「男のことばなんか信用しちゃいけない 男にとって行動が第二 ことばは第三の価値しかない」(149~150ページ)というのを読んで、これは読んだことがあると覚えていました。発行年を見ると、私が中学生のときです。で、作者はこの台詞を書いたとき、第一の価値を考えていなくて、あちこちから第一の価値は何だという質問が来て困ったと告白しています(149~150ページ)。そうだったのか…当時、この第一の価値について答える台詞(本文ではタネ明かしをせずに、151ページの絵で答えを示しています)、わりと感動した覚えがあるのですけど。
 さまざまな個性と主体性を追求してきた作者の姿勢にはもともと共感を覚えていました。この本で説明されているところでそれが強められたところもありますが、スペースシャトルの搭乗ツアーにポンと1000万円払って申し込んだ話(197~199ページ)とか政府や自治体の委員とかの話は、功成り名を遂げるとそうなるものとは思いますが、私にはちょっとねというところでした。


里中満智子 中央公論新社 2024年1月25日発行
日本経済新聞「私の履歴書」
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カケラ

2024-03-29 22:16:44 | 小説
 テレビ番組でコメンテーターなどを務める売れっ子の論客で元ミス・ワールドビューティー日本代表の美容外科医橘久乃が、小学校時代の太った同級生横網八重子の娘吉良有羽が自殺した原因を調べるために関係者に面談した際の聞き取りの形式で横網八重子と吉良有羽の周囲と様子を描き出して行くミステリー小説。
 久しぶりに読んで、あぁこの人はこういう構成、こういう文体の人だったなぁと思い起こしました。聡明で美人の橘久乃に対してあからさまに持ち上げる人、敵愾心を露わにし辛辣に非難する人の物言いを、作者は自分がそういう人に向ける気持ちで書いているのか、自分がそういう視線を受けているという思いで書いているのか…
 最後にこの小説のモデルとなっている美人女医(そう明記されているので)が「解説」を書いています。それはそれで珍しい趣向ではあるのですが、ミステリーなのですから解説者が架空/虚構の人物でその「解説」も作品の一部だったというオチの方がしゃれていると思います。


湊かなえ 集英社文庫 2023年1月25日発行(単行本は2020年5月)
「小説すばる」連載
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Excelの本当に正しい使い方

2024-03-28 22:41:25 | 実用書・ビジネス書
 Excel のセルへの入力・表示・書式、数式の基本的な考え方、関数の使い方、シートのつくり方等について解説した本。
 いろいろ気づきがありましたが、そもそもエクセルを何のために使うのか、計算じゃなくて文書を作るの止めようよという怒りというか叫びが、一番共感できたように思えます。
 テクニカルな面でそうかと思ったのは、INDIRECT関数でシート名をセルにいれ、例えば+INDIRECT(A3&"!B3")のようにして各シートのB3セルのデータを一覧表にする(133~134ページ)とか、ホームタブの「ふりがなの表示/非表示」ボタンでふりがなをふれる(48~51ページ。以前、ふりがなを打つためにマクロ書いたことも (-_-; )とか。
 SUMIF、SUMIFSで、合計範囲は1列しか指定できない(複数列指定するとそのとおりには集計してくれない)とか、間違いやすいんじゃないかと思うのですが、そういうところも説明してくれると親切だと思うのですが。ふつうの人はそういう間違いしないのかな。


田中亨 日経BP 2021年9月27日発行
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言いわけばかりの私にさよならを

2024-03-27 23:08:17 | 小説
 中学最後の大会で相手チームのエースのスパイクを自分がブロックできなかったことを自分のミスで負けた、自分には才能がないんだと悲観して高校ではバレーボール部を避けて帰宅部となっていた白河鈴乃が、向かいに住む男子バレー部2年のエースでストイックにトレーニングを続ける一ノ瀬隆二に惹かれ、放課後や朝に一緒のトレーニングするようになり、隆二の科学的な探究に基づく鍛錬と知識に圧倒されながらバレーボール部への復帰を決心するというスポーツ恋愛小説。
 スポーツ根性ものとしての側面と、恋愛小説、難病もの、兄弟愛の要素が絡み、読んでいて興奮と哀感を持ちます。鈴乃自身、そして隆二の弟達也のひねた感情・態度が表されながら、基本的に素直さ・まっすぐさを感じさせる作品で、読後感はいいです。
 あとがきで才能がないことを理由にあきらめるな、成功に必要なのは長期的かつ効率的な訓練だと書かれていて、作者からの強いメッセージとなっています。


加賀美真也 角川文庫 2023年11月25日発行
 
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教誨

2024-03-26 21:24:04 | 小説
 10年前に当時8歳の自分の娘と5歳の近所の子どもを殺害したとして死刑に処せられた三原響子の身元引受人と登録されていたために遺骨と遺品の受け取りを求められた遠縁の32歳吉沢香純が、響子の郷里の本家に遺骨の引き取り・埋葬を求めに訪れるが断られ、途方に暮れつつ、事件の真相、特に響子の動機・心情を知ろうと奔走するという小説。
 濃密な閉塞した人間関係の中で、生きづらさを感じ追い込まれて行く様子に涙し、見て見ぬ振りで手を差し伸べる者のいない状況にも哀しみを感じます。世間から非難を浴びる死刑囚と犯罪のそういった部分を描き出そうとする作者の思いが沁みました。


柚月裕子 小学館 2022年11月30日発行
「STORY BOX」連載
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インタビュー大全 相手の心を開くための14章

2024-03-25 21:30:14 | ノンフィクション
 インタビューで相手から話を聞き出す、特にこれまで明かしていなかったことを聞き出すための準備や会話での心がけやテクニックを解説した本。
 あくまでもインタビューに応じた基本的には話をしたい人から友好的に聞き出すという条件でのことですので、私たちが裁判で行う尋問とは場面や条件が異なるのですが、自分と相手ですいすいわかって進めてしまうと第三者が聞いた(読んだ)ときにわかる話になっていない(相手の言葉にできていない=大事なところが相手の言葉として記録に残っていない)というミスに注意(141~143ページ)とかは、証人尋問などにも通じる話です。
 そういう点以外でも、尋問の場以外でもさまざまな場面で情報を聞き取るしごとには、心がけとしてためになりそうなところが多々ありました。


大塚明子 田畑書店 2024年2月20日発行
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四月になれば彼女は

2024-03-24 16:18:09 | 小説
 3歳年上の獣医坂本弥生と都心のタワーマンションの28階に住み、同棲して3年でセックスレス2年の状態で1年後の4月に結婚式を挙げることを決めた精神科医藤代俊の元に、大学3年生だった9年前に別れた元カノ伊予田春のウユニ湖畔からの手紙が届き、学生時代を回想する藤代の1年を描く小説。
 恵まれた境遇にあるがマリッジブルーの青年藤代の視点からのノスタルジーを描いたもので、藤代の生き様・人生観に共感できるかどうかが作品の評価に影響すると思います。私は、春にしても、また藤代の先輩の大島にしても(あるいはその妻にしても)もう少し描き込んで欲しかったなと思いました。私には、藤代よりもはるかに魅力的な人物に思えるので。
 タイトルは、ストレートにサイモン&ガーファンクルの有名な曲から。学生時代の合宿で大島がギターを手に歌っている場面(88ページ)から引いているのですが、他人の有名な作品を自分の作品のタイトルにしてしまえるセンス、私には理解できません(章タイトルとかで使うのはよく見られますし:私もやってますし…違和感ないのですが、作品自体のタイトルにするのは)。冒頭にウユニ湖畔からの手紙、その後もプラハから、アイスランドからの手紙を置き、もういかにも映像化を最初から意識しているような作品を書ける人・境遇だからなんでしょうね。


川村元気 文春文庫 2019年7月10日発行(単行本は2016年11月)
「週刊文春」連載

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センセイの鞄

2024-03-23 21:16:26 | 小説
 高校時代に国語を習った30歳あまり年上の教師松本春綱と駅前の一杯飲み屋で再会した37歳の大町ツキコが、特に約束もない居酒屋での遭遇を続けるうちにさまざまな思いを持ち逢瀬を重ねて行く高年恋愛小説。
 酒をつぐのがうまい(1滴もこぼれない:43ページ)巨人ファンの60代後半のセンセイと、酒をよくこぼすアンチ巨人のツキコの不器用な恋愛というか、古風で不器用なおっさんにアラフォーの女性が恋心を抱いて迫って行くという構図が、切ないというか、高年齢のおっさんの心にヒットします。「おいしいコーヒーのいれ方」がジャンプ読者層の青年たちのニーズ・幻想に奉仕する設定とストーリーだったのと同様、おっさん読者層の幻想・妄想に奉仕する作品なんでしょうね。


川上弘美 文春文庫 2004年9月10日発行(単行本は2001年6月:平凡社、月刊「太陽」=2000年12月休刊 1999年7月号~2000年12月号連載)
谷崎潤一郎賞受賞作

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仕事と江戸時代 武士・町人・百姓はどう働いたか

2024-03-21 22:31:03 | 人文・社会科学系
 江戸時代の旗本・御家人、武家奉公人、経済官僚、家持町人・地借・店借、商家奉公人、奥女中奉公・下女奉公・遊女、百姓、運送業、漁業、鉱山労働などのさまざまな立場、業種での労働について取りまとめて解説した本。
 人に雇われて働く、それも長期間安定して働く「正社員」のような雇用形態が歴史的にはまだ新しいもので、江戸時代までは自営業者が中心であったということが基本になり、その中で短期雇用がなされた場面や例外的に集団的な雇用がなされてきた業種などを解説しています。
 江戸時代はまだ奉公人が主人を訴えることは許されず(正確には、主人が許せば訴えられるが、許すはずがない)(主人を相手どることは忠義に反するから許されない)、賃金未払いがあっても泣き寝入りせざるを得なかった(192~193ページ)のだとか。民事裁判も、民の権利を守るのではなく、強きを保護して権力者に都合のいい秩序を守るための制度だったわけですね。時代劇でよく見られる「越後屋」と悪代官が示し合わせている図が頭に浮かびます。
 そういった事情もあってか、奉公人の待遇は劣悪で、大店の「白木屋」(後の東急百貨店)でさえ「採用された奉公人の半数弱が病気により退店あるいは死亡している」(161ページ)状態だったとか。
 遊女奉公の身代金は、民間の下女奉公の給金相場と比べて格段に高いわけではないが、前金で一括してもらえるのでその身代金を受け取る者のために多くの女性が遊女にされ続けた(180~183ページ)というのも悲哀を感じさせます。
 いつの世も、富豪や特権階級のために虐げられ踏みつけられる労働者が多数いることをも、改めて感じました。


戸森麻衣子 ちくま新書 2023年12月10日発行
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