伊東良徳の超乱読読書日記

読んだ本の感想を中心に本に対するコメントを書き散らします。読み終わった本は図書館に返すのでフォローは保証できません。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

リアリズム・チャレンジ 紙切れ1枚からはじめる写実への挑戦

2017-10-25 02:04:40 | 趣味の本・暇つぶし本
 折り目としわのある紙、2つに切ったマッシュルーム、ちぎったトランプを精密に描写するコマ抜き動画をYouTubeにアップして話題になったイラストレーターが、6つのテーマ(陰影を描き分ける、色を加える、複雑な表面、透明な物、金属の表面、工業製品)合計30点の写実画を描き、その過程を解説した本。
 著者は、すべて透明水彩絵の具と色鉛筆、ガッシュ(不透明水彩絵の具)の白で写実画を描き、原則として、鉛筆で輪郭を精密に描いて、透明水彩絵の具でベースカラーを塗り、薄く明るい色から少しずつ濃く暗い色へと水彩絵の具・筆で可能な範囲を描き込み、細部は色鉛筆で描き込んで行き、最後にガッシュの白でハイライト(最も明るい部分、光っている部分)を入れるという手順を取っています。その過程を見せながら、水彩絵の具では薄めて塗り乾かすと自動的に輪郭が濃く描かれることや、影とハイライトで絵のリアリティが劇的に変化することを実感させています。
 透明なものや光るものの描かれる過程を見ていると、自分もやってみたいなぁという気持ちが生まれますが、しかしものすごく根気のいる作業だろうなぁとも思います。いつかたっぷり時間ができたら・・・と思うと、いつまでもできないんですよね (^^;)
 著者の作品のほとんどで、対象物はかなり写真に近く仕上がっているのに、影は「面」にし切らずに「線」を残しています。たぶん、やろうと思えば、写真とほぼ同じ「面」の影にできるのでしょうけれど、そうしてしまうと写真と変わらなくなってしまうので、あえて影を完全にしないことで、これは絵なんだとわからせようとしているのでしょうね。


原題:The Realism Challenge Drawing and Painting Secrets from a Modern Master of Hyperrealism
マーク・クリリー 訳:森屋利夫
マール社 2017年7月20日発行 (原書は2015年)
コメント

最高の1枚を「撮る・仕上げる」で生み出す超絶写真術

2017-09-22 23:45:57 | 趣味の本・暇つぶし本
 写真家7人が、それぞれの得意分野の風景写真、花写真、スナップ写真、ポートレート、夜写真、テーブルフォトについて、「最高の1枚」を生み出すテクニックを解説した本。
 撮りたい写真のイメージ、構図、事前リサーチ、光(時間、位置関係、天候、ストロボ、レフ:反射板)、使用するレンズ等の意味・重要性も説明されていて、それによる違いも相当程度にはあるのですが、この本で一番重視されているのは、デジタル写真データのソフトウェアによる補正(RAW現像)。それぞれの写真について、補正項目ごとの補正に用いた数値が示されて1回の補正による変化(補正の経過)が補正中の画像として掲載されていて、同様の補正にチャレンジする人には絶好の教材なんでしょう。
 自分で撮った写真は、夜景はもちろんのこと、昼間に撮った写真でもハイライト(一番明るいところ)以外は暗めで細部が識別できないことが多い。掲載写真例のこの細部まで見える明るさは何だろう、これがプロの腕かと思っていたら、プロが撮った「元写真」もやっぱり暗い。この本の説明からすると、後からのソフトウェアでの補正を見越してあえて暗めに撮っているというところがあるようですが、補正前の元写真を見ていると、なんだ、プロの写真だって、オリジナルは暗くてよく見えない、素人写真と(構図はさておいて)そんなに違わないじゃない、と思う。それをソフトウェアで色補正、コントラスト補正等をしてきれいに見せているんだということが、化粧前/化粧後みたいな対比でよくわかってしまう。素人にとっては、実に興味深いとも、興ざめとも思える本です。


別所隆弘 外6名 インプレス 2017年7月11日発行
コメント (2)

図説 紅茶 世界のティータイム

2017-05-11 21:52:05 | 趣味の本・暇つぶし本
 紅茶の歴史、茶葉の産地、淹れ方/飲み方、世界の紅茶事情などを解説した本。
 5月から6月に摘まれるダージリンの「セカンドフラッシュ」のマスカット(マスカテル)フレーバーは、ウンカが大量発生して茶葉の柔らかい部分から汁を吸い、ウンカに噛まれた葉が治癒しようとして作り出す「ファイトアレキシン」の香りだとか(43ページ)。ウンカは「害虫」じゃなくてウンカのおかげでダージリンの商品価値が上がるんだ。
 茶(緑茶・ウーロン茶を含む)の1人あたり消費量の上位3国は、トルコ、アイルランド、イギリスで、トルコの1人あたり消費量は日本の3倍以上、イギリスは日本のほぼ2倍だそうな(49ページ)。
 イギリスでは紅茶に入れるミルクは新鮮な冷たい低温殺菌牛乳(イギリスで流通している牛乳の8割が低温殺菌牛乳。高温殺菌牛乳がほとんどの日本とは事情が違う)だそうです(66ページ)。「コーヒーフレッシュを使用したミルクティは日本独自の文化です」(67ページ)って。そして、ロシアには紅茶にジャムを入れる習慣はない!(108~109ページ)のだそうです。
 ちょっと意外なトリビアが楽しめました。


Cha Tea 紅茶教室 河出書房新社 2017年2月28日発行
コメント

傑作浮世絵コレクション 歌川広重 日本の原風景を描いた俊才絵師

2017-03-03 23:49:17 | 趣味の本・暇つぶし本
 「東海道五拾三次」や「木曾海道六十九次」(山地を貫く道がなぜ「海道」なんでしょう…)などで有名な広重の浮世絵を紹介し解説した本。
 日ごろ、断片的に、特に有名な絵しか見ない広重の浮世絵をまとめて見て比べると、いろいろ思うところがありました。
 改めて見ると、現在とは使える画材(染料・色素)が違うためでしょう、色合い、色の組み合わせが現代のものとは相当違うのですが、それがまた味わい深く、しゃれた感じがします。「東海道五拾三次」の「神奈川・台之景」「戸塚・元町別道」の茶色、黄色、灰色の家並み(宿屋)、その柔らかな色彩とは合わないように思える黒(暗緑色)の樹々、藍色の海/空の意外に美しい組み合わせなど、感心します。
 広重が、何度も描いた東海道五拾三次を比べると、見慣れているせいかもしれませんが、やはり保永堂版が一番完成度が高いと感じます。
 広重の版画は、風景画が多いのですが、その風景画も、その中にほとんどの絵で漫画のような人が書き込まれていて、その人(旅人や宿場の人たち)の様子が絵の味わいを深めていることがわかります。
 「双筆五十三次」という広重と三代歌川豊国(歌川国貞)の合作のシリーズがあるのは、初めて知りました。美術作品としては中途半端にも思えますが、なんだかおもしろく飾り物としてはいいセンスのように思いました。


河出書房新社 2017年1月30日発行
コメント

東京のDEEPスポットに行ってみた!

2016-08-24 23:49:20 | 趣味の本・暇つぶし本
 ガイドブックに載っていない東京のマイナーな施設等の訪問ルポ。
 紹介されているのは、最初が全国矯正展(刑務所収容者の作業製品の展示即売会)で、その他の紹介先に東京少年鑑別所や東京地裁まで入っているのを見ると、弁護士の世界ではごく普通の場所なんですが(特に東京地裁なんて連日通う仕事場ですし)、世間では「マイナーな」場所なんだなぁと思いを新たにします。
 東京都薬用植物園(麻薬をとれるケシ、麻等の栽培)とか、ふれあい下水道館とか、猿島(東京湾の無人島)とか、行ってみたい気もします。
 しかし、ほとんどの記事の訪問時期が2010年~2012年と、古すぎるのが、この種の読み物の命といえる情報の鮮度の悪さを示していて、読む意欲を半減させます。


のなかあき子 彩図社 2015年9月4日発行(単行本は2014年7月)
コメント

浮世絵の謎

2016-08-14 21:06:28 | 趣味の本・暇つぶし本
 浮世絵について、画題やテクニック、絵師の人柄や正体、当時の世相や浮世絵の用途などに関して50のテーマに分けて解説した本。
 絵師が絵の中のこまごまとした部分でさまざまな自己主張をしたり、幕府の規制を逃れるためにさまざまな工夫をして、判じ物のような形で風刺をしたりする様子が興味深く読めました。幕府が遊女以外の女性の名前を入れることを禁止すると名前が入っていた絵をそのままに名前を削って「三美人」として売り出したり、美人大首絵の自粛が指令されると美人の山姥の絵を描いて売り出しと、歌麿が抵抗した様子、しかし1804年には太閤秀吉に関する浮世絵を描いたために捕縛されて手鎖50日の刑に服しその2年後に死亡したなどのエピソード(44~47ページ、164~167ページ)には共感します。歌麿って、「うたまる」と読むのだそうですね(162ページ)。


福田智弘 実業之日本社じっぴコンパクト新書 2016年3月7日発行
コメント

「りぼん」おとめチック♡ワールド 陸奥A子

2016-07-21 23:46:05 | 趣味の本・暇つぶし本
 1970年代後半から80年代初頭、私の学生時代の少女漫画雑誌「りぼん」で、田渕由美子、太刀掛秀子とともにおとめチック漫画を先導した陸奥A子の漫画や「りぼん」の付録の写真と、作品や当時の事情の解説、編集者等の関係者や陸奥A子ファンたちの回想と、本人インタビューで構成したムック本。
 当時、私は、竹宮惠子とか、山岸凉子とか、恋愛ものでも私が恋愛根性ものと呼んでいた里中満智子とか、より少女漫画らしい精神的な深みを追求するシリアスでストーリー性のあるものを好んでいましたが、今読み返してみると、陸奥A子の作品は容姿端麗でもセクシーでもない(身体はほとんど棒状)「等身大」の若い女性が、はにかみパニクりながらも思うことをしれっと言っている、力を抜きながらも「待ち」でもないスタイルが女性読者の共感を得たのだなぁと思います。
 少女漫画を卒業してからの絵は今回初めて見ましたが、いろいろ彷徨ったようで、画風を確立するに至る苦しみ・悩みが忍ばれます。


外舘惠子 河出書房新社 2015年9月30日発行
コメント

獣医さんだけが知っている動物園のヒミツ人気者のホンネ

2016-03-21 17:31:53 | 趣味の本・暇つぶし本
 動物園勤務を経験した獣医である著者が、動物園での経験から動物園の人気者の動物の生態を説明する本。
 動物のトリビアというか意外な面の説明があれこれあります。キリンはオス同士でいちゃつくことが多くオス同士のペアが70%を超えるというデータもある(20ページ)、オランウータンはヤキモチ妬きで観客のカップルに吐いた物を飛ばすことがあるし飼育員が妻や恋人といるのを見ると翌日からヤキモチで寝室に引きこもったりして大変(90~91ページ)とか。シマウマの縞は1頭ずつ違う(56ページ)とか、カンガルーは前には大きく跳べる(8メートルくらい1回でジャンプできる)けど後ろにはジャンプできない(76ページ)とか。
 動物園に行ったときに動物をもっとじっと観察したくなります。
 執筆は編集者のようですが、「動物園の楽しみ方と本書の使い方」(6ページ)で監修者の名前を出して「掲載した動物の情報は、北澤功先生が実際に体験したことをベースにまとめています。」って、書くかなぁ。


北澤功監修 日東書院 2016年2月20日発行
コメント

直感を裏切るデザイン・パズル

2015-10-07 19:45:14 | 趣味の本・暇つぶし本
 錯視などの視覚現象を説明しつつ、視覚や空間認識等に関するパズルのクイズを集めた本。
 錯視について説明する第1章では、割と素直な驚きを感じることができます。私は、2つの傾いたものの写真を並べると左側に傾いている塔の写真なら左側にある塔の方がより傾いて見えるという斜塔錯視(22ページ)や、縞模様を直線で切断(横断)して横にずらすとその境界線の直線が傾斜して見えるというミュンスターバーグの錯視図(44~46ページ。表紙にも採用されている)、同一の円弧(半円等)を等間隔で並べる(「)))))))」こんな感じ)と円弧の出っ張り側の端(←の例では右側)がより大きく見えるというヴントの錯視図(49~50ページ)に感心しました。
 第2章以降は、図形や空間認識、数字を使ったクイズですが、だいたい私が子どもの頃に流行った「頭の体操」(多湖輝)のレベルとセンスで、著者は、難しいだろうというような書きぶりで解説しているのですが、ほとんど歯ごたえがなく、正解しても何か満足感を得られるレベルには思えません。円を分割して楕円を作れるかという問題(157ページ)は私はお手上げでしたが、これは楕円の定義の問題で、弧成楕円(円弧をつなげて作る楕円:4心楕円)を楕円と考えるかだけの問題です。線1本で100分の1にという問題(179ページ)に至っては、1%(0.01)は100の100分の1じゃなくて1万分の1ですから解答になっていませんし。
 後半に読み進むにつれてだれていきます。第2章以降はやめて、第1章の内容で1冊書いてくれるととてもよかったのですが。


馬場雄二 講談社ブルーバックス 2015年8月20日発行
コメント

堕落のグルメ ヨイショする客、舞い上がるシェフ

2015-03-02 21:28:43 | 趣味の本・暇つぶし本
 副業として自腹で食べて辛口の料理評論をする著者が、飲食店業界の裏側について論じるとともに、飲食店をダメにしている要因としては客側の問題もあると指摘する本。
 批判されたレストラン側からの脅迫や出入り禁止を紹介する第1章は、そういうものかなとは思いますが、私怨感情が強く見え、延々と読まされるとちょっと辟易します。
 偽装問題をめぐる第2章は、食べログでのセミプロさくらライターを多数抱える会社の飲食店への営業の会話が、やはりそういうことはあるだろうなとは思いながらも、ショッキングです。後半の、産地偽装は一般人に見破れるはずがないのだから全ての店に偽装はあるものとしてつきあえというのは、処世術としてはそうでしょうし、味がわかりもしないで産地等の詳しい情報ばかり求めてありがたがる客のせいで飲食店が産地偽装をすることになるという指摘には一理あるとも思いますが、それでも表示する以上は嘘を言ってはいけないと、私は素朴に思います。
 第3章では、「日本広しといえど訴訟問題を語れるグルメライターは友里ただ一人」(36ページ)という著者が、飲食店側のわがままな対応を法的に論じています。しかし、予約拒否や店独自のルールについて憲法第14条(法の下の平等)違反の可能性を指摘する(79ページ、91ページ)のは、国が経営しているレストランであれば別論となるかも知れませんが、憲法第14条の私人間での直接適用を否定している最高裁判例(最高裁1973年12月12日大法廷判決:三菱樹脂事件)の下では無理があると思いますし、レストラン側が予約を拒否したり出入り禁止にするのに「合理的な理由」を求める(79ページ、85ページ)ことも私企業が誰と契約するのかは原則として自由(電気、ガス、水道等の公共企業の場合は別)である以上、法律論としては無理があると思います。もちろん、予約ができているのに当日追い返すことは債務不履行ですから、この場合店側の追い返しは違法ということになりますが。
 客側の問題点については、指摘されるような客の主張があるのならなるほどと思いますし、一見客や下戸が平等取扱いを求めるのは無理があるという指摘はもっともだと思いますが、それを言うなら第3章で憲法第14条など持ち出すなよと思いますし、関西人批判は出身地差別じゃないかとも思ってしまいます。私も大阪生まれですが、大阪生まれだから関西人批判をしてよい(誰よりも説得力がある:154ページ)という考え方には疑問を持ちます。言われている内容は関西人に共通してみられる文化だとも思えませんし、そういう行動が関西特有とも思えませんし。
 第2章、第4章、第5章と第1章の一部で構成すれば、もっと読み味のいい本になったのにと、思いました。


友里征耶 角川SSC新書 2014年3月25日発行
コメント