脳内にマイクロチップを埋め込んで人の感情や記憶を制御できる技術であるが倫理上の問題から使用が禁じられている「脳チップ」を埋め込まれているサイコパスの殺人鬼弁護士二宮彰が、鋭い牙と大きな耳の生えた怪物のマスクをかぶり手斧で攻撃してきた襲撃者に襲われて逃げ切った後復讐を決意し、他方で頭蓋骨を割られて脳を持ち去られた死体が次々と見つかって「脳泥棒」と呼ばれることとなった連続殺人犯を警察が追うというミステリー小説。
プロローグと二宮サイドの展開で、読者には警察がたどり着けない犯人の狙いが序盤から察せられ、警察の動きをじれったく思い、またそこに一定の優越感を持たせるという手法なのかと思いますが、結局のところ、犯人が狙い犯行を遂げて行く過程はわかるもののなぜ連続殺人に至ったかという動機は今ひとつ説得力を感じず、そこに消化不良が残る感じがしました。
傲慢で冷酷、平然と嘘をつき良心が咎めないという二宮の設定、作者はきっと弁護士が嫌いなんでしょうね。世間から弁護士がこういうふうに見られているのかも、と考えておくべきかもしれませんが。
脳内にマイクロチップを埋め込んで人の感情や記憶を制御する技術が2000年にはすでに開発され実験が進んでいたという設定は、私が知らないだけかもしれませんが、不気味な、あるいは挑発的なものに見えます(カズオ・イシグロが「わたしを離さないで」で臓器移植のためのクローン人間の作成管理を過去の時制で描いていたように)。
倉井眉介 宝島社文庫 2020年2月20日発行(単行本は2019年1月)
2018年このミステリーがすごい!大賞受賞作
プロローグと二宮サイドの展開で、読者には警察がたどり着けない犯人の狙いが序盤から察せられ、警察の動きをじれったく思い、またそこに一定の優越感を持たせるという手法なのかと思いますが、結局のところ、犯人が狙い犯行を遂げて行く過程はわかるもののなぜ連続殺人に至ったかという動機は今ひとつ説得力を感じず、そこに消化不良が残る感じがしました。
傲慢で冷酷、平然と嘘をつき良心が咎めないという二宮の設定、作者はきっと弁護士が嫌いなんでしょうね。世間から弁護士がこういうふうに見られているのかも、と考えておくべきかもしれませんが。
脳内にマイクロチップを埋め込んで人の感情や記憶を制御する技術が2000年にはすでに開発され実験が進んでいたという設定は、私が知らないだけかもしれませんが、不気味な、あるいは挑発的なものに見えます(カズオ・イシグロが「わたしを離さないで」で臓器移植のためのクローン人間の作成管理を過去の時制で描いていたように)。
倉井眉介 宝島社文庫 2020年2月20日発行(単行本は2019年1月)
2018年このミステリーがすごい!大賞受賞作