伊東良徳の超乱読読書日記

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美しい距離

2018-03-21 22:58:44 | 小説
 末期癌の妻の病床に通う夫の目から、病床の妻、そして妻の母、妻の仕事上の関係者、病院のスタッフ、自分の会社の関係者との間での立ち位置、感情、相手の立場への理解と譲歩、いらだちといらだってしまったことへの後悔、末期癌患者と家族への世間の視線やステレオタイプの反応への違和感等を綴った小説。
 当事者の様々な思いへの作者の繊細な感性に驚きと共感を覚えました。
 病床の妻の爪が伸びているのを見て切ってあげたいと思っていたのだけどなかなか言い出せずにいて、「勇気を振り絞って」爪を切ってあげようかと言い「うん、頼むわ」と言われて、妻の爪を切るシーン。「ぎょっとするほど楽しい。この愉悦は何だろう。好きな人の爪を切るというのは、こんなにも面白いことだったのか。」(61ページ)・・・介護をしている人からは、そんな甘いもんじゃないという苦言・怨嗟の念が聞こえてきそうでもありますが、しかし、こういう思い、わかるような気がするし、そう思える関係でいたいと思う。
 状況の変化により、その思いや立ち位置も変化していく様子も描かれ、いろいろに考えさせられるところがあり、しかし後味の悪さを残さない、珠玉の小品という感じでした。


山崎ナオコーラ 文藝春秋 2016年7月10日発行
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