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伊東良徳の超乱読読書日記

はてなブログに引っ越しました→https://shomin-law.hatenablog.com/

陽だまりの彼女

2025-03-31 00:04:39 | 小説
 交通広告代理店に勤務して3年目の営業担当奥田浩介が、今ではクライアントの広報担当となっている、中学時代に周囲から「学年有数のバカ」と蔑まれていじめられていた渡来真緒と、10年ぶりに再会し、その変貌ぶりに驚きながら交際を始め…という展開のオカルト恋愛小説。
 再会した元同級生が魅力的に変身していてギャップ萌えし、相手からも好意を示されという流れは、おっさん読者には恥ずかしくて身もだえしてしまいそうなうれしい設定です。裏側カバーに「完全無欠の恋愛小説」とあるのも、おっさんのノスタルジーと妄想にマッチするという点では、受け容れていい気もします。
 このまま行くとおっさんの妄想に奉仕するだけで小説にならんということで設けられたラストかとは思いますが、私にはどうも取って付けたような感じが残りました。


越谷オサム 新潮文庫 2011年6月1日発行(単行本は2008年4月)
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天使の卵

2025-03-30 17:45:35 | 小説
 芸大受験を目指して浪人している19歳の予備校生一本槍歩太が、10年来心を病んで入院中の父を担当する8歳年上で交際中の彼女の姉でもある精神科医五堂春妃に恋い焦がれるという設定の恋愛小説。
 年上の女性に恋心を持ち、それがかなって行くどきどき感わくわく感幸福感は、やはり19歳の時に年上の医療従事者とお付き合いさせていただいた経験のある者にとっては、甘酸っぱくも至上の読み物で、抗いがたい魅力があります。
 恋愛小説で、相手が一度としてよそ見しない安心感、そして相手が年上の女性なのに保護者のように思い振る舞える(いつもではなくそういう場面もあるということですが)優越感というか自尊心への配慮といったあたりが、作者のその後の大ヒット作「おいしいコーヒーのいれ方」にも通ずるところですが、若年男性(ガキんちょ男)に媚びすぎじゃない?とも感じます(そのうっぷんを晴らしたくなって「ダブルファンタジー」以降ではっちゃけたのかなとも思えますが)。


村山由佳 集英社文庫 1996年6月25日発行(単行本は1994年1月)
小説すばる新人賞受賞作
  
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ぼくは明日、昨日のきみとデートする

2025-03-29 20:20:28 | 小説
 叡山電車沿線の美大に通う20歳の学生南山高寿が、出会うべき運命にあった20歳の美容専門学校生福寿愛美に、2010年4月13日に通学中の車内で遭遇して声をかけてから40日間の交際を描いたSF恋愛小説。
 基本的に南山サイドの視点で描写されていて、前半は南山の幸福な浮かれた恋愛を描き、後半は福寿の心情を思い切なくなるという、奇抜な(荒唐無稽な)設定でありながら恋愛小説の王道ともいうべき読み味です。男性読者を想定した男性側からの王道ではありましょうけれど。
 映画を見たとき、って8年前ですが、抱いたシンデレラの福寿が南山に発見された手帳をいつどうやって回収したのかという疑問(映画の感想記事はこちら)は、原作では回収していない/回収する必要がないと説明されていました(265ページ)。ようやく疑問解決(もっと早く読めって)。
 福寿が手帳を置き忘れて/あえて置いて帰るのが初めてHした夜というのがなかなかに意味深な設定になります。福寿は(福寿の立場から)もっと早くそうしたくならなかったのか(もっとHしたくなかったのか)と南山の立場からは後で哀しくならないか、そこよりもより早く理解して欲しかったのか…福寿側からの内心の描写がないだけにいろいろに想像させます。


七月隆文 宝島社文庫 2014年8月20日発行(文庫書き下ろし)
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夜は短し歩けよ乙女

2025-03-28 22:17:39 | 小説
 クラブの後輩の黒髪の乙女に一目惚れしストーカーのようにつけ回しては偶然を装って目の前に現れ続ける「私」と、それを奇遇と受け止める「彼女」の半年の交錯を描いた小説。
 5月終わりの先斗町飲み歩き編、真夏の下鴨古本市放浪編、京大11月祭ゲリラ興行編、師走の風邪連鎖寝込み編ともいうべき4編の短編連作の趣です。
 恋愛小説のお薦めページでほぼ確実に出てくる作品のため、いつかは読もうと思っていて読んだものですが、大仰で妄想に満ちた文章にはなじめませんでした。舞台が京都でなじみの地名が頻出し、特に第3章は京大のキャンパスが舞台でイメージしやすいため、なんとか読み切ったという感じです。
 「私」は3回生、「彼女」は1回生で、最初の第1章は「彼女」が入学したての5月終わりということになりますが、それでもう「私」がずっとつけ回している状態とか、彼女の方は入学して2か月足らず(浪人したかは言及されていませんが、ふつうに考えて未成年)で底なしのウワバミというのはいかがなものか…解説のイラストの「彼女」の童顔とのギャップ、妊婦にふつうに見えるお腹の膨らみ具合も…


森見登美彦 角川文庫 2008年12月25日発行(単行本は2006年11月)
山本周五郎賞受賞作
2007年本屋大賞2位

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海の底

2025-03-27 23:45:40 | 小説
 海上自衛隊の潜水艦「きりしお」で実習中の夏木大和と冬原春臣が、巨大ザリガニの大群の襲撃を受けて横須賀基地の春祭りに来ていた子どもたちを逃がしきれずに「きりしお」内に籠城することとなり、救助を待ちつつ子どもたちの不満と離反対立に悩まされ…という展開の小説。
 映画を見た関係で、「レインツリーの国」、「植物図鑑」から入った私には、作者はふつうにラブコメの人と思っていたのですが、デビューの頃は、こういう怪獣をネタに自衛隊を賛美する「社会派」(解説者がそう書いている)の小説を書いていたと知り、意外に思いました。きっと、「ウルトラマン」などで科学特捜隊がウルトラマンの引き立て役に終始しているのを「悔しい」とか思って見ていた人なんでしょうね。その鬱屈を吐き出すような終盤にカタルシスがありますが、それまではむしろ自衛隊に防衛出動をさせない政治家や官僚への批判がメインで、自衛隊を違憲だなどという勢力は存在も許されない感じです(登場もしないのは、論外というか眼中にもないということなんでしょう)。


有川浩 角川文庫 2009年4月25日発行(単行本は2005年6月)
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空の中

2025-03-25 14:04:07 | 小説
 国産超音速小型旅客機開発プロジェクトの試験機スワローテイルが四国沖の高度2万メートルで爆発、続いて同じ空域で高度1万メートルから2万メートルへの急上昇の演習中のF15Jも爆発という事態を受け、スワローテイルプロジェクトから調査のために自衛隊岐阜基地に派遣された春名高巳が、演習で生き残ったパイロット武田光稀への聴取を求めるが難航し…という展開のSF恋愛小説。
 「白鯨」とかディックとかフェイクと名付けられた、波動をエネルギーとして生存し電波から知識を得る大規模浮遊体という、バルンガ(ウルトラQ)だかAI(HALか…)だかもどきを用いて、春名と武田、演習で死亡したパイロットの息子斉木瞬と幼なじみの天野佳江の関係を描く恋愛小説、あるいは2人の子どもを見守る宮じいこと宮田喜三郎、スワローテイル試験飛行パイロットの娘白川真帆も含めたヒューマンドラマと読むべきなのでしょう。
 武田と春名の掛け合いは、後日の作者の出世作「図書館戦争」をイメージさせます。


有川浩 角川文庫 2008年6月25日発行(単行本は2004年11月)
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悪い夏

2025-03-21 23:53:29 | 小説
 船岡市役所生活福祉課に勤務する26歳のケースワーカー佐々木守は、受給停止に励むようにとの課長の指示を受けて担当の受給者を回るが、受給者を詰問しても抵抗を受けて辞退届を取れない日々を送っていた。そんなある日、同僚で遣り手の宮田有子から、7年先輩の高野洋司が担当の受給者林野愛美を脅して生活保護費のキックバックを受け肉体関係も結んでいるという情報を受け…という展開の小説。
 働けるのに働かずに生活保護を受けている不正受給者が跋扈しており、国民の税金が無駄に使われているという安倍政権以来政権とメディア、ネット民が流布し強調している見方・価値観に基づいた、同情すべき生活保護受給者も、誠実に真摯に困窮者を助けようと精励している職員もまったく登場しない(最も困窮の度合いが高く生活保護を受けられずに自殺する古川佳澄でさえ困窮していないときでも万引きをする常習犯と描かれ共感を得にくくされています)作品です。作者の価値観なのか、そういったメディアやネトウヨが流布した生活保護への偏見に迎合しているのかはわかりませんが、私には志の低さが感じられ読後感の悪い作品でした。


染井為人 角川書店 2017年9月29日発行
横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作
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韓国が嫌いで

2025-03-20 18:06:28 | 小説
 満員の地下鉄で勤務先のソウルの金融会社への通勤を続けて3年のケナが、大学の同期生で新聞記者になるべく挑戦中の恋人ジミョンと別れてオーストラリアに渡航し、さまざまなバイトをしさまざまな出会いを経て変わっていくという小説。映画「ケナは韓国が嫌いで」の原作。
 韓国の競争社会になじめないなら、韓国にこだわることなく生きやすい場所で好きに生きるという選択肢があるよというテーマですが、それを、弘益大学(芸術系では韓国有数の私学)卒業生で大手の金融会社に勤務していた、つまりトップエリートではないもののそこそこ競争の勝者と見える設定の主人公で、渡航後もソウルに戻ってきたり、他の男とデキた後にもジミョンともよりを戻してみたりという逡巡し揺れ動く展開で、そんなに固い意志で潔癖にやらなくてもいいよという描き方をした、(底辺層やフェミニストではなく)中間層をターゲットにした緩い読み物にしたところがヒットにつながったものかと思いました。
 作者は、元新聞記者の男性、つまりこの作品の中ではジミョンの立場に位置します。そこが作品中のケナの設定、心情、言動にどのように影響しているかは、興味深いところです。


張康明 訳:吉良佳奈江
ころから 2020年1月11日発行(原書は2015年)
 
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意識の脳科学 「デジタル不老不死」の扉を開く

2025-03-18 21:48:23 | 自然科学・工学系
 コンピュータに脳の記憶と意識を移し(アップロードし)デジタル世界で永遠に生きることに向けた研究とその可能性を語る本。
 プロローグ段階で衒学趣味的なあるいは自己陶酔的な(15歳にして自慢の美尻だったそうだし)語りに既に倦怠感を持ちつつも、攻殻機動隊のイメージの世界にどこまで理解がたどり着けるかの関心から読みました。
 しかし、神経科学の実験の話はいいのですが、肝心の機械脳への置き換えで意識は持続するのか、機械脳に意識が生じるのかという問題になると、科学から哲学にトーンが変わるように思えます。機械脳に置き換えても意識が持続するという根拠/論証?は、思考実験としてニューロン1つの置き換えがきちんとできればその前後で意識に影響がない状態にできるというようなこと(30~42ページ)ですが、ミクロ部分の1つが果てしなく同じように繰り返せるという仮説自体に不確かさがあり、繰り返しの中でどこかに臨界点/特異点があり意識が失われるとか、そもそも意識はある/ないではなくレベルの問題で置き換えの過程で少しずつレベルが下がりどこからか意識が一部残ってもそれはもう意識として機能しないというようなことの方が、私にはよりありそうに見えます。ミクロに区切ったところに注目させた論証というのは、どこかアキレスはカメに追いつけないと言われているような気持ち悪さを感じます。それに、論証できたと言っては、その後また問いに戻りという繰り返しで(少しずつ置き換えれば大丈夫という議論は327~333ページでもまた登場します)、私には最後まで腑に落ちず、読み終わっても攻殻機動隊は攻殻機動隊のままの理解に留まったという思いです。


渡辺正峰 講談社現代新書 2024年6月20日発行

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ムーミン全集 [新版] 1~9

2025-03-17 21:31:37 | 物語・ファンタジー・SF
 ムーミントロールとムーミンパパ、ムーミンママらと周囲のものたちが交流し冒険しながら思い思いに振る舞い問題を乗り越えて行く様子を描いた童話。
 アニメと有名な童話シリーズだということしか知らず、今回初めて通しで読んでみたのですが、前の話が前提となって話が続いているということはあまりなく、各巻が読み切りのように読むことができます。私の印象では、童話作品としては4巻(5作目)の「ムーミン谷の夏まつり」がピークで、スナフキンがミイにいう「大切なのは、自分のしたいことがなにかを、わかっているってことだよ」(108ページ)が通しテーマかなと思います。文学作品として見ると次の「ムーミン谷の冬」の方が洗練されているかも知れませんが少し小さくまとまった感じです。「ムーミン谷の仲間たち」は短編集で外伝みたいなものですし(あまり「外伝」っぽくもないのですが)、その後の「ムーミンパパ海へいく」と「ムーミン谷の十一月」は、構築した世界を崩して誰もそんないい人じゃいられないし、いつまでも他人に守り導いてもらうんじゃなくて自分の途は自分で見いだせよというメッセージを感じますが、童話というよりも教訓的でありまた成長物語のイメージです。
 通し読みすると、作者がきちんと説明しよう、つじつまを合わせようとしていないことが感じられます。多くの登場人物が種族名なのか固有名詞なのか判別しにくいのですが、特に戸惑うのは「ヘムレンさん」です。種族名としては「へムル」なので、「ヘムレンさん」は固有名詞と思ったのですが、「たのしいムーミン一家」では1人称が「わし」で性別に言及されないヘムレンさんが登場し、「ムーミンパパの思い出」では1人称が「わたし」のヘムレンさん(ヘムレンおばさん)、「ムーミン谷の冬」では1人称が「ぼく」のヘムレンさんが登場した挙げ句、「ムーミン谷の仲間たち」に至り「あるヘムレンさん」(116ページ)というのが登場します。ミムラねえさんは、34姉妹の長姉、ミイは末娘としてムーミンパパの若き日の冒険の中で登場します(「ムーミンパパの思い出」)が、どちらもムーミントロールやスナフキンとともにも登場します(スナフキンはミイの異父弟の設定)。ミイとミムラねえさんの年齢差はいくつなのか、ミムラねえさんは何歳なのか、説明もありません(まぁ、人間じゃないから、妊娠期間が短いかも、一度にたくさん生まれるのかも…)。「ムーミン谷の仲間たち」でムーミンパパは「竜というものは、ほぼ70年まえに、人々の意識から消えてしまったんだよ」とムーミントロールに説明しています(106ページ)。「ムーミンパパの思い出」で、自分がフレドリクソンと謀って竜のエドワードを騙して利用し(68~75ページ)、その後エドワードに恨まれて執念深く追われたことなどなかったかのように(ムーミンパパがそのことをムーミントロールには隠しておきたかったなどの説明があるならわかりますが、それもありません)。
 そういううるさいことを言わずに、その世界に浸りしみじみ味わうべき作品なのですね。


トーベ・ヤンソン 講談社
1巻 ムーミン谷の彗星 KOMETEN KOMMER
 2019年3月26日発行 原書初版1946年、第3版1968年 訳:下村隆一
2巻 たのしいムーミン一家 TROLLKARLENS HATT
 2019年6月3日発行 原書初版1948年、第3版1968年 訳:山室静
3巻 ムーミンパパの思い出 MUMINPAPPANS MEMOARER
 2019年6月25日発行 原書初版1950年、第3版1968年 訳:小野寺百合子
4巻 ムーミン谷の夏まつり FARLIG MIDSOMMAR
 2019年8月5日発行 原書1954年 訳:下村隆一
5巻 ムーミン谷の冬 TROLLVINTER
 2020年2月25日発行 原書1957年 訳:山室静
6巻 ムーミン谷の仲間たち DET OSYNLIGA BARNET
 2020年4月21日発行 原書1962年 訳:山室静
7巻 ムーミンパパ海へいく PAPPAN OCH HAVET
 2020年8月3日発行 原書1965年 訳:小野寺百合子
8巻 ムーミン谷の十一月 SENTI NOVEMBER
 2020年9月29日発行 原書1970年 訳:鈴木徹郎
9巻 小さなトロールと大きな洪水 SMATROLLEN OCH DEN STORA OVERSVAMNINGEN
 2020年10月12日発行 原書1945年 訳:冨原眞弓
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