法学ないし法律を専門的に学ぶ前に修得しておくべき「論理的に読み・書き・議論するための基本」を学ぶための教科書として執筆された(「はじめに」冒頭)本。
使用する例文には法学系統の本や裁判所の判決等が用いられていることが多いのですが、基本的には、法学・法律学の本ではなく論理学の本です。練習問題とその解答が62ページに及ぶ(本全体の3割くらい)というところも、教科書的な印象です。
ある前提となる根拠から何らかの結論/主張を導き出すことを「論証」として、その論証を論理的に行うための方法論を論じ、法学の世界では前提(経験的事実)に含まれない結論を導く、したがって結論の導出において「飛躍」のある帰納的論証にこそ意味がある(前提事実=根拠自体に結論が含まれている「演繹的論証」は論理的に正しいが、論証の意味がない)という説明(56~62ページ)は、読んでいるとホーッと思いました(論理の飛躍があっていいんだ…)。しかし、弁護士実務での問題は、「飛躍」があっていいとして、どこまでの飛躍が許されるのか、その飛躍をどう裁判官に説得できるか、言い換えれば、事実認定での推測では「経験則」の範囲、論理の組立・流れでの推論ではその合理性をどのように考えるかにあります。どういう「飛躍」と論証が説得力を持ちうるのか、そちらの方には全然踏み込まれていないのが残念です。
この本では、論証の論理構造、考え方と、それをいかにシンプルに表現するかが論じられ説明されています。後者は、端的に言えば、論証に論理的に必要ないことは書かない、骨だけ書けという、どこか昔の司法研修所の要件事実教育を思い出させます。まぁ、その方が論旨はわかりやすいでしょうけど、裁判実務では事実関係はシンプルじゃなくて、主張すべきことも、相手の主張との絡みがあって、論文みたいに明快な論点だけで済まないので、そうも言ってられないところがあります。

福澤一吉編著、花本広志、廣澤努、宮城哲著
弘文堂 2022年7月30日発行
使用する例文には法学系統の本や裁判所の判決等が用いられていることが多いのですが、基本的には、法学・法律学の本ではなく論理学の本です。練習問題とその解答が62ページに及ぶ(本全体の3割くらい)というところも、教科書的な印象です。
ある前提となる根拠から何らかの結論/主張を導き出すことを「論証」として、その論証を論理的に行うための方法論を論じ、法学の世界では前提(経験的事実)に含まれない結論を導く、したがって結論の導出において「飛躍」のある帰納的論証にこそ意味がある(前提事実=根拠自体に結論が含まれている「演繹的論証」は論理的に正しいが、論証の意味がない)という説明(56~62ページ)は、読んでいるとホーッと思いました(論理の飛躍があっていいんだ…)。しかし、弁護士実務での問題は、「飛躍」があっていいとして、どこまでの飛躍が許されるのか、その飛躍をどう裁判官に説得できるか、言い換えれば、事実認定での推測では「経験則」の範囲、論理の組立・流れでの推論ではその合理性をどのように考えるかにあります。どういう「飛躍」と論証が説得力を持ちうるのか、そちらの方には全然踏み込まれていないのが残念です。
この本では、論証の論理構造、考え方と、それをいかにシンプルに表現するかが論じられ説明されています。後者は、端的に言えば、論証に論理的に必要ないことは書かない、骨だけ書けという、どこか昔の司法研修所の要件事実教育を思い出させます。まぁ、その方が論旨はわかりやすいでしょうけど、裁判実務では事実関係はシンプルじゃなくて、主張すべきことも、相手の主張との絡みがあって、論文みたいに明快な論点だけで済まないので、そうも言ってられないところがあります。

福澤一吉編著、花本広志、廣澤努、宮城哲著
弘文堂 2022年7月30日発行