ペットに関する訴訟を始め割に合わないもめ事の解決を依頼されて断れずに受けてしまう「猫弁」こと百瀬太郎が、25年来借主なく幽霊屋敷となっている空き家の処理を依頼され、他方で事務所で預かっている猫たちを懇意の獣医師柳まことが「にゃんにゃんお見合いパーティー」に参加させたところお見合い成立した猫が宿泊していたペットホテルで立てこもり事件が生じて百瀬法律事務所の主のような存在だった黒猫ボコまでもが人質ならぬ「獣質」になり、その解決のために百瀬が奔走するという小説。
猫弁シリーズ8作目または「第2シーズン」3作目にあたります。
今回、初めて障害者問題に触れ、LGBTにも間接的に触れているのは、作者がよりマイノリティ・弱者の視点を持つようになったことを示唆していると感じられ、私には望ましい方向性に思えます。シリーズの今後に期待したいと思います。
シリーズ第1作で独立5年目(「猫弁」文庫版33ページ)で39歳(同36ページ)だった百瀬太郎は「第2シーズン」開始の「猫弁と星の王子」で独立7年で「今年41歳になる」とされ(同文庫版44ページ)、この作品は「猫弁と星の王子」の1年後(正水直は翌年の受験をし:27ページ、「猫弁と星の王子」冒頭で百瀬が赤ちゃんを預けられた11か月後:158ページ)という設定です。百瀬法律事務所が1階に入っているビルは、シリーズ第1作から「猫弁と星の王子」までは一貫して「ひびだらけの三階建て」だった(「猫弁」文庫版26ページ、「猫弁と透明人間」文庫版21ページ、「猫弁と星の王子」文庫版34ページ)が、その後1年間のうちに「今にもくずれそうな三階建て」(「猫弁と鉄の女」文庫版16ページ)、「傾きかけたビル」(「猫弁と幽霊屋敷」7ページ)とみるみるうちに老朽化しています。作者の気持ちの変化があるのかもしれませんが、ちょっと違和感を持ちました。
弁護士が主人公の作品なので、裁判シーンを避けても法律の話題は出てくるのですが、「国選弁護人は国費を使うため制限があり、活動が制限されている。逮捕から勾留が決定されるまでのあいだは本人に会えないのだ」(214ページ)は、そうではなくて被疑者国選弁護人は勾留請求されて初めて請求できるから勾留請求前は国選弁護人が選任できないということで、国選弁護人が選任されていても会えないかのような書き方は誤解というほかありません。「現行犯逮捕ということもあり、勾留は一日で決まり」(同ページ)というのも、逮捕状逮捕でも現行犯逮捕でも逮捕から勾留請求までの時間制限は同じですし、他方勾留請求されてから勾留決定まで何日もかかることはまず考えられません。売れているシリーズなのだし、弁護士に法律チェックくらいしてもらえばいいのにと、しみじみ思います。

大山淳子 講談社 2022年5月23日発行
猫弁シリーズ8作目または「第2シーズン」3作目にあたります。
今回、初めて障害者問題に触れ、LGBTにも間接的に触れているのは、作者がよりマイノリティ・弱者の視点を持つようになったことを示唆していると感じられ、私には望ましい方向性に思えます。シリーズの今後に期待したいと思います。
シリーズ第1作で独立5年目(「猫弁」文庫版33ページ)で39歳(同36ページ)だった百瀬太郎は「第2シーズン」開始の「猫弁と星の王子」で独立7年で「今年41歳になる」とされ(同文庫版44ページ)、この作品は「猫弁と星の王子」の1年後(正水直は翌年の受験をし:27ページ、「猫弁と星の王子」冒頭で百瀬が赤ちゃんを預けられた11か月後:158ページ)という設定です。百瀬法律事務所が1階に入っているビルは、シリーズ第1作から「猫弁と星の王子」までは一貫して「ひびだらけの三階建て」だった(「猫弁」文庫版26ページ、「猫弁と透明人間」文庫版21ページ、「猫弁と星の王子」文庫版34ページ)が、その後1年間のうちに「今にもくずれそうな三階建て」(「猫弁と鉄の女」文庫版16ページ)、「傾きかけたビル」(「猫弁と幽霊屋敷」7ページ)とみるみるうちに老朽化しています。作者の気持ちの変化があるのかもしれませんが、ちょっと違和感を持ちました。
弁護士が主人公の作品なので、裁判シーンを避けても法律の話題は出てくるのですが、「国選弁護人は国費を使うため制限があり、活動が制限されている。逮捕から勾留が決定されるまでのあいだは本人に会えないのだ」(214ページ)は、そうではなくて被疑者国選弁護人は勾留請求されて初めて請求できるから勾留請求前は国選弁護人が選任できないということで、国選弁護人が選任されていても会えないかのような書き方は誤解というほかありません。「現行犯逮捕ということもあり、勾留は一日で決まり」(同ページ)というのも、逮捕状逮捕でも現行犯逮捕でも逮捕から勾留請求までの時間制限は同じですし、他方勾留請求されてから勾留決定まで何日もかかることはまず考えられません。売れているシリーズなのだし、弁護士に法律チェックくらいしてもらえばいいのにと、しみじみ思います。

大山淳子 講談社 2022年5月23日発行