伊東良徳の超乱読読書日記

読んだ本の感想を中心に本に対するコメントを書き散らします。読み終わった本は図書館に返すのでフォローは保証できません。

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ひとりで抱え込まない仕事術

2007-03-31 15:28:41 | 実用書・ビジネス書
 仕事(プロジェクト)で他人に参加してもらうときの方法論についてのビジネス書。
 書かれていることは、具体的に何を助けてもらいたいか、役割分担、相手にかけてもらう労力等をはっきりさせる、仕事の目的と相手にとってのメリットをはっきりさせるというようなことで、人にお願いをするには、ある意味で当然のこと。でも実際の場面ではそういう目的意識を持っていないことが多いですからね。終わりをはっきりさせ、気持ちよく終わらせてまた一緒に仕事をしたいという気持ちを持ってもらう、これもなかなかできないんですよね。まあ、当たり前のことですが、改めて自覚しましょうという程度の本です。


原題:You Don’t Have to Do It Alone
リチャード・アクセルロッド他 訳:森口美由紀
ダイヤモンド社 2007年2月8日発行 (原書は2004年)
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九月の恋と出会うまで

2007-03-31 08:15:38 | 小説
 タイムマシン・パラドックス(タイムマシンで過去に遡って過去に干渉した場合未来自身が変わってしまい過去に干渉しなくなるはずというパラドックス)を小道具にしたSF仕立てのご近所恋愛小説。
 前半はご近所ものというかミニミニマンションものの軽めのタッチで話が進みますが、主人公がエアコン用の壁の穴から未来から話しかける声を聞くところからSFになっていきます。未来からの声の時点で十分荒唐無稽なわけですから、謎解きとかしてもしかたない感じですけど、作者はそれなりにこだわって最後に謎解きをしています。でもまあ、タイムマシンパラドックスの話とか、謎解きよりは、落ちつくべきところに落ちつく普通の恋愛小説って感じで読む話かなと思います。


松尾由美 新潮社 2007年2月20日発行
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チェルノブイリの森 事故後20年の自然誌

2007-03-30 19:49:53 | ノンフィクション
 チェルノブイリ原発周辺の立入制限区域の最近の状況についてのレポート。
 著者の立ち位置は、草木も生えないあるいはネズミとゴキブリばかりの荒廃した世界という予想に反して(ゴキブリはそのイメージに反して放射能には弱いという指摘もありますが:191頁)、人間がいないことによって植物も動物も大いに繁殖しているということの方に力点が置かれ、その意味では原発推進側に近い感じがしますが、同時にその野生生物からはとんでもなく高濃度の放射性物質が検出されていることや先天性異常の動物が見あたらないのはすぐ死んでしまうから、野生生物の寿命が短くないか繁殖力が通常より低くないかは調査されていないためにわからないなどの指摘も各所にあり、考えさせられます。基本的に立証しがたい問題について、現実に厳密な調査がなされていない故に断定できないことを、だから事故の影響でない/影響はないと見るか安全とは言えないと見るか、その評価基準・価値観で読後感にかなり幅が出るかもしれません。
 最初の方の植物の繁茂の話は、日本人には(アニメファンには?)風の谷のナウシカの腐海をイメージさせます。でも現実には放射性物質は(半減期の長い放射性物質は)腐海の植物によっても浄化されずに植物の枯死・分解でまた環境に放出されますし、この本でも事故後時間がたって地中数cmのところに沈着した放射性物質がイノシシが掘り返したり車が通ったり建築作業をしたり湿地が乾燥したりでまた地表に現れて埃となって舞いあがってまた汚染が広がることが指摘されています。時間がたてば放射能汚染が収まっていくという単純なことにはならないのが、この問題の難しいところです。立入制限区域もウクライナ側は比較的調査され管理されているけど不法残留・立入者が多い、ベラルーシ側は調査も管理もろくにされていないけど人はいないとか、政治体制の違いに起因する話もいろいろ考えさせられます。立入制限の中で表面的には楽園に住む動物たちと故郷を捨てられずに不法残留する人びとと、現実に検出される高濃度汚染の数値の対比がもの悲しく切ない。


原題:WORMWOOD FOREST : A Natural History of Chernobyl
メアリー・マイシオ 訳:中尾ゆかり
NHK出版 2007年2月25日発行 (原書は2005年)
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魚はなぜ群れで泳ぐか

2007-03-25 15:43:58 | 自然科学・工学系
 魚についての動物行動学の本。
 表題となっている魚はなぜ群れで泳ぐかについては、保身(全体で大きく見せる幻影効果、襲われたときにちりぢりになることで捕獲者を混乱させる効果等)、餌や敵についての情報収集・学習効果、水流により楽に泳げる等の説明がなされているけれどもまだはっきりわかっていないようです。魚の群れにはリーダーはおらず先頭は交互に代わるけれども、確固たる動き(勝手気ままな動き)をする個体が先頭にいるとその個体に引きずられて群れが動きリーダーになってしまうそうです(33頁)。
 水の中では視界はあまり利かないので聴覚や嗅覚の方が大事とか、ドジョウやナマズのひげには味覚があって口に物を入れなくても味がわかる(45頁)とか、魚は巡航速度ではいくら泳いでも疲れず巡航速度で泳ぐときは血合い筋で泳いでいてそれ以外の筋肉(白身等の部分)は敵から逃げたり餌を捕獲するときにごく短時間全速力で泳ぐときに使う(133~134頁)とかいうあたりが勉強になりました。


有元貴文 大修館書店 2007年3月10日発行
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焼肉店開業マガジン

2007-03-24 08:38:47 | 実用書・ビジネス書
 焼肉店の開業のための情報をまとめたMOOK。
 焼肉店の場合、カルビとタンは原価率を上げ(客にとってはお買い得)、一品料理の石焼きビビンバ、冷麺、チヂミで儲けるとか、キムチの味が評判を左右するのでキムチの副材料はケチってはならないとか経営側の視点が参考になります。肉を軟らかくする調味料とかいうのもあるそうで、客としては複雑な思いがしますね。
 排煙設備等の設備投資に金がかかることや、リピーターの獲得に営業の成否がかかる、2~4ヵ月目が売上が落ち込むがここで焦ってコンセプトを変えるのはよくないとか、当初は宣伝しないで休業日も決めないで試験的に営業してトレーニングをかねて顧客のニーズを見るというアドヴァイスとか、自営業一般としてみても参考になりそう。


旭屋出版MOOK 2007年2月28日発行
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ネパール王制解体

2007-03-24 08:36:14 | ノンフィクション
 ネパール在住のジャーナリストによる近年のネパールの政治情勢についてのレポート。
 ネパールでは長く続いた絶対王制が1990年の該当運動の結果立憲君主制と複数政党制へと移行したが、最大政党ネパール会議派を中心とする政党間の政争、山間部でのネパール共産党毛沢東主義派(マオイスト)の武装蜂起と国軍による弾圧、2001年6月1日の発砲事件で王族のほとんどが殺害された末に王位についた現国王への国民の不信と国王の強権介入、国王・ネパール会議派等の政党・マオイストの確執を経て、2006年4月主要政党とマオイストの共闘による首都圏ゼネスト・街頭闘争により国王が国民主権を認め下院復活、これから制憲議会選挙へと進んでいるそうです。現在は制憲議会選挙後に共和制が実現するか、マオイストの武装解除が無事にできるか等なお予断を許さない局面のようです。
 著者は基本的にマオイストへの潜入・インタビューを繰り返しており、基本的にはマオイスト側の視点でレポートされていると感じます。山岳地帯での毛沢東思想に基づく武装闘争とそれに対する国軍の弾圧、街頭での大規模デモ・街頭闘争による「革命」と続く流れは全共闘世代左翼が夢見たような展開とも言えますが、同時にマオイストの支配下の村人の苦渋やマオイストも彼らが敵視して殺害する警察官もともにネパールの貧民層出身という現実も身につまされます。


小倉清子 NHKブックス 2007年1月30日発行
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ぼくはアメリカを学んだ

2007-03-21 08:30:27 | ノンフィクション
 高校生のうちからアジアの貧民街を旅していたバックパッカーの著者が高校卒業後アメリカに貧乏留学してスパニッシュの荒廃した街やアメリカ先住民居住地で自らも差別を受け命の危険にさらされながら底辺の移民やアメリカ先住民と暮らしつつ勉強してカリフォルニア大学バークレー校やUCLAに進学してアメリカ先住民研究者となるまでの経験を綴ったノンフィクション。
 底辺の人びととともに生きる著者の実践というか生き方には、グッと来ます。その人たちのその後の人生もあわせ読むと切ないけど。
 その環境で勉強を重ねて、大学に進学したことも驚きます。これ自体、1つのアメリカンドリームといえます。もちろん、著者の周りの人々が同じ夢を見つつ、おそらく夢を果たすどころかいつの間にか殺されたりアル中になったりしていったように大半の人には夢のままであることも事実ですが。高校でドロップアウトしていた著者をバークレー校が拾うのもアメリカの1面なら、著者や周囲のスパニッシュやアメリカ先住民が激しい差別を受けるのもアメリカの1面。そういったよく報じられるのと違ったアメリカを見せてくれる本です。


鎌田遵 岩波ジュニア新書 2007年1月19日発行
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許される嘘、許されない嘘 アサノ知事の「ことば白書」

2007-03-20 07:25:45 | エッセイ
 元宮城県知事・現東京都知事候補のエッセイ集。雑誌に「新・言語学序説」のタイトルで連載していたものをまとめたそうですが、この時期に出されたら読むしかないですね。
 選挙演説について、街頭演説は歌、個人演説会は散文、選挙カーからの訴えは標語(199頁)というのは言い得て妙。消防も弁明も最初の1分が大事でそれを誤ると燃え盛る火は消せなくなる(93頁)とか、ネーミングは施策の中身と何をやろうとしているかがが一目でわかることが大事(25~29頁)とか、なるほどと思います。一方でキャッチ・フレーズ、ワン・フレーズ・ポリティックスの怖さを指摘している(156~160頁、173~177頁)のもむべなるかな。両方あわせてじゃあどうするのとなったら難しいところですが・・・


浅野史郎 講談社 2007年2月26日発行
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一瞬の風になれ2 ヨウイ

2007-03-19 07:51:21 | 小説
 2年生になりインターハイ予選などを経てライバルや後輩ともつれたり、連の故障があったりで、タイムを順調に上げ力をつけながら県大会は通過できても関東大会では惨敗の春野台高校陸上部4継チーム。陸上部の部長になった新二が練習を積み、秋の関東大会は善戦して決勝に進みますが、新二の兄の交通事故の報で動揺して決勝は惨敗、新二は兄の右足の重症を見て陸上部から逃亡というあたりまでが2巻のお話。
 でも、読んでいて、兄のけがで新二が陸上部から逃亡する経緯が今ひとつしっくり来ません。試合会場から病院に駆けつけた新二に「そんな、チームジャージ着て、何してるんだ?」「そんな格好で病院に来るなっ。帰れ!」(235頁)という台詞は、それまでの兄の性格設定からすれば、私には「部長のお前が戦場から逃亡してきたのか」という流れに見えたんですが、その後の話からはそうじゃなくてサッカーができない俺の前でユニフォームを見せつけるなという意味のようなんですけど。兄が死んだわけでもなし、生活に影響のある事態でもなし、ましてや陸上部に関係ないことだし、それでこうなるのかなあ・・・って思いますけど。


佐藤多佳子 講談社 2006年9月21日発行
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一瞬の風になれ1 イチニツイテ

2007-03-19 07:43:19 | 小説
 陸上競技のスプリント(短距離)と4継(100m×4リレー)に挑む高校生の青春小説。
 主人公の神谷新二はサッカーのスーパーエリートの兄とスプリントの天才の友人一ノ瀬連の陰で目立たないサッカー選手だったのを高校進学を機に陸上競技に転向、そこからめきめきと力をつけていくという設定です。
 友人の連が天性の素質で練習嫌いで体力もないのに美しいフォームで走り中2で全国大会7位の結果を出しながら、中3では陸上をやめたり、高校でも合宿から逃走したり国体予選をすっぽかしたり、でも飄々と現れて練習不足でも新二より上の成績を出したりする中、新二は不公平だとぼやきながらハードな練習を積み重ねて行きます。ただ新二は凡人だと言いながら、サッカー選手時代の走り込みの成果か、素質はあると評価され、陸上の練習を始める前から陸上部では連に次ぐタイムをたたき出しますから、ひたすら努力でたたき上げってことはなくてやはりエリートの闘い。
 新二はあがり体質で大試合の本番前には腹を下すとか、そういう設定も含めて、暗い根性物にしないで軽いコミカル路線がとられています。元不良の天然パーマボサボサ髪の陸上部顧問三輪先生が、いい味出しています。


佐藤多佳子 講談社 2006年8月25日発行
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