不法行為法の「標準的な教科書ないし参考書を目指して執筆された」本。
民法の規定(条文)は少なくシンプルなものでありながら、裁判で争われることが多く多岐にわたる論点がある不法行為の領域について、全体を扱う教科書的な本を読むのは、ふだん目配りしない問題での知らない判決の存在などに気がつき、大変勉強になります。
弁護士業務では裁判で通じるかどうか、裁判官をどう説得できるかばかり考えているので、学説には関心を向けないのですが、現実の事件と被害救済を考えて学者がさまざまな理論を構築しているのだなということを改めて認識しました。基本は大学での講義用ということもあって、主として人身被害(生命・身体・健康の侵害)を想定して、名誉毀損とか取引上の不法行為とかはあまり意識されていないところが、弁護士の目からはやや物足りないという感想は持ちますが。
時効・除斥期間問題では、じん肺・アスベスト被害に加えて、旧優生保護法による強制不妊手術問題でも起算点(時効等の進行開始時)について被害救済に配慮する判決が出ているのですね(大阪高裁2022年2月22日判決:206ページ)。頭に置いておきましょう。
不法行為の領域で共同不法行為については、学生の頃も読んでもなんだかよくわからないという印象でしたが、弁護士になった今読んでもやっぱり今ひとつわからない。実際にそれが問題になる事件をやらないと具体的なイメージなり問題点が見えにくいんでしょうね。

吉村良一 有斐閣 2022年8月30日発行(初版は1995年10月10日)
民法の規定(条文)は少なくシンプルなものでありながら、裁判で争われることが多く多岐にわたる論点がある不法行為の領域について、全体を扱う教科書的な本を読むのは、ふだん目配りしない問題での知らない判決の存在などに気がつき、大変勉強になります。
弁護士業務では裁判で通じるかどうか、裁判官をどう説得できるかばかり考えているので、学説には関心を向けないのですが、現実の事件と被害救済を考えて学者がさまざまな理論を構築しているのだなということを改めて認識しました。基本は大学での講義用ということもあって、主として人身被害(生命・身体・健康の侵害)を想定して、名誉毀損とか取引上の不法行為とかはあまり意識されていないところが、弁護士の目からはやや物足りないという感想は持ちますが。
時効・除斥期間問題では、じん肺・アスベスト被害に加えて、旧優生保護法による強制不妊手術問題でも起算点(時効等の進行開始時)について被害救済に配慮する判決が出ているのですね(大阪高裁2022年2月22日判決:206ページ)。頭に置いておきましょう。
不法行為の領域で共同不法行為については、学生の頃も読んでもなんだかよくわからないという印象でしたが、弁護士になった今読んでもやっぱり今ひとつわからない。実際にそれが問題になる事件をやらないと具体的なイメージなり問題点が見えにくいんでしょうね。

吉村良一 有斐閣 2022年8月30日発行(初版は1995年10月10日)