小さなデザイン会社で不景気になり単価を切り詰められて仕事量が増えて働きづめになり恋人にはふられ(他の男とのHの真っ最中に遭遇しながらあきらめられずに追いすがりそれでもふられ)うつになったデザイナーの由人、赤貧の家庭に生まれ絵を描く才能に恵まれ政治家2世の絵画教師の青年と結ばれるが環境が合わずに逃げ出して東京でデザイン会社を作り軌道に乗せるがバブルが弾けると追い詰められる社長野乃花、姉が幼くして病死したことから母親が過敏・過干渉になり父親の仕事のために転校を繰り返して高1でようやくできた友人の双子の姉が末期癌で死に弟とも母親のためにひき裂かれたのに切れて引きこもり・リスカを続けたあげく家を出た正子の3人が、ともに死を考えながら浅瀬に乗り上げたクジラを見に行き、地元の老婆と交流しながら思いを新たにする小説。
前作の「ふがいない僕は空を見た」での福田とあくつに見られた一所懸命に生きているのにうまく行かない生きづらさ、現代の貧しさ・苦しさの表現を押し進めたニュアンスの作品です。リストラと非正規雇用への転換が進み福祉が切り下げられ弱肉強食化が進む格差社会の現代日本では、ますますリアリティを感じる設定ですが、読んでいてなかなかに重苦しい。
正子については貧しさの部分よりも少子化の中での親子関係について考えさせられるところで、親の方でよかれと思うことが子への重圧になっていくあたり、親としてはやはり読んでいて切ない。正子の母親は極端にやり過ぎではありますが、親心という点ではどこかしら正子の母親の持つ心情には思い当たるところがある親が多いかと思います。
そういった重さになかなかページが進まない読みづらさがありますが、重苦しさの向こうにホッとさせるものがあり、少し温かな気持ちになれました。
窪美澄 新潮社 2012年2月20日発行
前作の「ふがいない僕は空を見た」での福田とあくつに見られた一所懸命に生きているのにうまく行かない生きづらさ、現代の貧しさ・苦しさの表現を押し進めたニュアンスの作品です。リストラと非正規雇用への転換が進み福祉が切り下げられ弱肉強食化が進む格差社会の現代日本では、ますますリアリティを感じる設定ですが、読んでいてなかなかに重苦しい。
正子については貧しさの部分よりも少子化の中での親子関係について考えさせられるところで、親の方でよかれと思うことが子への重圧になっていくあたり、親としてはやはり読んでいて切ない。正子の母親は極端にやり過ぎではありますが、親心という点ではどこかしら正子の母親の持つ心情には思い当たるところがある親が多いかと思います。
そういった重さになかなかページが進まない読みづらさがありますが、重苦しさの向こうにホッとさせるものがあり、少し温かな気持ちになれました。
窪美澄 新潮社 2012年2月20日発行