伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

究極の速読法

2009-04-30 22:02:54 | 実用書・ビジネス書
 著者の開発した速読法「リーディングハニー」の解説本。
 この速読法のポイントは、要するに旅行をするなら下見をしようということです。後書きや解説、著者紹介と目次から何についてのどのような構成の本かを把握する、最初から最後までパラパラと眺める(1ページ1秒見当)ことでどんな言葉が使われているか、どんなキーワードがあるかを把握し、1ページ2、3秒程度の流し読みで全体の構成や大方何が書かれているかを把握し、その後自由に速く読むという流れです。順番にその本に慣れていき次第に何が書かれているかを把握していき、それが把握できればかなり速いスピードで読めるし、内容を理解できるということです。理屈としては理解できます。
 しかし、小説、特に推理小説、ミステリーでは絶対にやりたくない方法ですし、本格的に読む前に飽きてしまいそうです。取っつきにくくて、そういうやり方でもしないと読めそうにない本にはそうしたいと思いますが。少なくとも読書に楽しみを求める人には向いていないと思います。まぁ、著者が最初に書いているように、読書が苦痛だと思っている人に苦痛をなくすためということですから、その前提で読むべきでしょうね。


松崎久純 研究社 2009年4月3日発行
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ロースクール生と学ぶ 法ってどんなもの?

2009-04-30 21:27:32 | 人文・社会科学系
 ロースクール生が友人や兄弟などから相談を受けて法律問題を論じたり説明する体裁で、身近な法律問題を元に子ども向けに法律の考え方を解説した本。
 いじめ、校則、文化祭と著作権や周辺住民とのトラブル、賃貸借契約、未成年の契約、店の商品を破損したときの弁償(不法行為)、未成年の結婚、刑事事件、未成年の飲酒・喫煙と参政権を取りあげています。
 ロースクール生が周囲の人から法律相談を受ける体裁で、たぶん現実にロースクール生だというだけで法律に詳しいと見られて周囲の人の相談を受けているのでしょうけど、仕事がらちょっと不安を感じます。天然パーマの子どもが「ちりりん」というあだ名を付けられたという素材で「言葉によるいじめがその子にとってトラウマになってしまったような場合には損害賠償が認められる可能性は十分あると思うよ」(10ページ)って、私にはかなり大胆に思えます。後日弁護士になってそういう依頼を積極的に受けてそういう判決を自ら勝ち取っていただきたいですね。目的と手段の相当性を何度も論じながら「たとえば人をぶん殴ったり、万引き、恐喝、飲酒・喫煙、援助交際などをしたりしたら、それらは学校の決まり以前に法律で禁じられていることだから、停学・退学処分をしても不当とはいえないだろうね。」「そうだね。そんな重いことをやっちゃったら退学させられてもやり過ぎとは言えないと思うよ」(36ページ)というのも、ちょっとビックリします。喧嘩や飲酒・喫煙でその程度を問わず一発退学にしてよいというのでは、それまでやってきて手段の相当性の議論は何だったのかなと思いますし、現実問題としてもかなり不当な場合が出てくると思います。このあたりも、実務経験・実務感覚のないロースクール生が法律相談物を書いてしまう怖さを感じます。
 エピローグで法律解釈や法律の考え方には様々な視点が必要で一概には言えないということが書かれていて、ここはいい読み物になっていると思います。しかし、本文の具体例を読んだ読者が、エピローグとあわせ読んで本文の書きすぎを感じ取り修正してくれることを期待するのは、たぶん無理だと思います。


東大大村ゼミ著 岩波ジュニア新書 2009年3月19日発行
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ミレニアム2 火と戯れる女(上下)

2009-04-29 19:53:24 | 小説
 シリーズ1巻のラストでミカエルの元を去ったリスベット・サランデルが、月刊誌「ミレニアム」のスクープとなる人身売買組織の実情を告発する記事を準備していた記者とその恋人の殺人事件に巻き込まれ、全国指名手配を受けながら真犯人を追うというミステリー小説。
 1巻はミレニアムの記者ミカエルが主人公でしたが、2巻では、1巻でハッカーとしての実力を見せつけた社会性に欠け歪んだところとある意味でのまっすぐな正義感を併せ持つアンビバレントな魅力に満ちたリスベット・サランデルが主人公となります。1巻を読んでも、このキャラの不思議な魅力には引き込まれるところで、作者もそう感じたのでしょう。2巻は、全体を通じて、リスベット・サランデルの出生から、実際には映像記憶能力やハッキングの能力を持ち高い知能を持っているにもかかわらず精神病院に入れられ無能力者とされたのは何故かという秘密が、明らかにされ、それが事件の鍵となって展開していきます。1巻でリスベットファンになった読者のためのファンサービスという感じですね。
 リスベット・サランデルがストーリーの中心となるため、女を虐待する男を許さないという信念が、1巻より色濃く表れ、差別主義者・マッチョな男たちへの嫌悪がはっきり表されます。女性の/性の自由ということが1つのテーマとなることもあってか、日本の感覚よりはかなり自由な恋愛というか奔放な性生活が描かれています。後半はそういう余裕はなくなりますが。フェミニスト嫌いか貞操観念の強い読者には、たぶん面白くない/耐え難いシリーズとなりそうです。
 ミステリーとしてのできばえもよく、1巻同様に、あるいは1巻以上に楽しめます。しかし、リスベット・サランデルの魅力に惹かれた読者としては、1巻のレイプの時もそう思いましたが、あんまりボロボロにしないで欲しいなと思います。素直に胸を痛めてしまうたちなもので。
 プロローグも、その意味がわかったときには、やられたと思いましたが、その後の展開には影響せず、ただ読者にやられたと思わせるためだけという感じもして、むしろなくていいんじゃないかとも思います。


原題:FLICKAN SOM LEKTE MED ELDEN
スティーグ・ラーソン 訳:ヘレンハルメ美穂、山田美明
早川書房 2009年4月15日発行 (原書は2006年)
1巻 ドラゴンタトゥーの女は、2009年2月11日の記事で紹介しています。
コメント (2)
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ぼくと1ルピーの神様

2009-04-26 21:41:56 | 小説
 ムンバイにある「アジア最大のスラム街」ダラヴィに住むウェイターのラム・ムハンマド・トーマスが10億ルピー(約20億円)という史上最大の賞金を賭けたクイズに出場して全問正解して、不正を疑われるが、クイズの質問がすべて自分の人生で直面したことばかりだったと、弁護士に説明する形でそれまでの人生を説明しつつインドの貧民が直面する不幸と運命を描いた小説。
 日本語版が出てすぐに一度読んで2006年10月24日の記事で紹介済ですが、映画化されたのを機会に再読しました。
 映画はかなり設定を変えてシンプルな恋愛ストーリーに書き替えています。やはり原作の方がラムの人生の波瀾万丈としたたかさ、たくましさとせつなさを味わえますし、様々な布石・伏線をきちんと処理していて読み物としてもいいできです。
 映画をきっかけに原作を読む人が増えるといいなと思います。


ヴィカス・スワラップ 訳:子安亜弥
ランダムハウス講談社 2006年9月13日発行 (原作は2005年)
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図解表示のカラクリ[改訂版]

2009-04-25 18:33:49 | 趣味の本・暇つぶし本
 日常生活で見る図や記号表示の読み方についての解説本。
 電話番号で東京23区以外でも三鷹市中原1丁目、調布市国領町8丁目・仙川町・西つつじヶ丘2丁目・東つつじヶ丘・緑ヶ丘・若葉町、狛江市(西和泉と神代団地を除く)は「03」だ(35ページ)とか、洋服のドライクリーニングマークはドライクリーニングできる(ドライクリーニングでなくてもいい)(46ページ)とか知りませんでした。紙のB版って江戸時代の美濃紙のサイズで江戸時代は将軍家と徳川御三家しか使えなかったそうです(96ページ)。
 そういうところ勉強になりますが、各項目本文1ページ図1ページの2ページ構成で、大部分は知っていることで突っ込み不足。項目の選択も場当たり的な感じです。暇つぶしに読み飛ばす本ですね。


表示の謎研究会編 彩図社 2009年3月16日発行 (初版は2007年)
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続・世界の日本人ジョーク集

2009-04-25 08:38:21 | 趣味の本・暇つぶし本
 外国での日本人が登場するジョークを集めて紹介した本。
 著者の主張は、日本人が思っているほど日本人のイメージは悪くない、日本人よ自虐的になるなという点に集約されます。
 この種のエスニックジョーク自体、品のよくないこととして公の席で語られることが減り、日本人に限らず露骨に貶めるジョークは衰退していると思うのですが。
 ジョーク集なんですが、その間に著者の主張が色濃く出ていて、日本の「格差社会」なんてたいしたことじゃない(89~92ページ)、歴史認識など国によって異なるのが当たり前で共有できるはずがない(140~143ページ)、戦前戦中の日本はナチスドイツとは違う(147~149ページ)などの政治的な主張が前面に出ています。娯楽本として読むには、そのあたりがちょっと鼻につきます。
 職業柄、エスニックジョークとは別に、天国の神様から訴訟をちらつかされた地獄の悪魔が「訴訟は望むところです。でも、そちらには弁護士が1人もいないんじゃないですか?」って(29ページ)いう方が気になりました。うーん・・・


早坂隆 中公新書ラクレ 2009年3月10日発行
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一気読み!日本史

2009-04-24 23:06:19 | 人文・社会科学系
 日本史を新書1冊で解説する本。原始・古代編(平安時代まで)、中世編(鎌倉・室町時代)、近世編(戦国・江戸時代)、近現代編(明治以降)の4つの時代に区分して、それぞれについて政治、経済、対外関係、文化の4つに分けて説明しています。
 時代区分を大きくすることで、それぞれの流れがわかりやすくなることが目的ですが、事実・固有名詞の羅列になりがちで今ひとつ流れがわかりやすいとはいいにくい感じです。特に文化は、いかにも羅列です。政治は教科書的ですから、流れをつかむという目的で見ると、経済が一番それらしく書かれていると思います。政治と経済、経済と対外関係というあたりの関係も、少し見やすいかなと思いました。
 これだけで目を見開かされるような発見はありませんが、少し違う区分で歴史を読んでみることは、いい経験だと思います。
 漢字圏の外国人のふりがなが、李承晩(イスンマン)、金日成(キムイルソン)、朴正煕(パクチョンヒ)の3人だけが現地読みで、他は全部日本語読みっていうのはちょっと違和感がありました。どういう基準なんでしょう。


瀧音能之 青春出版社 2009年1月15日発行
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ザ・プーチン 戦慄の闇

2009-04-22 22:11:47 | ノンフィクション
 プーチン政権下で石油の高騰を背景に取られている強いロシア復活のための傲慢な姿勢と、反プーチン派に対しては暴力・犯罪による抹殺が平然と行われ事件の真相が解明されない社会の出現を嘆く本。
 西側に亡命して放射性物質による暗殺未遂事件の被害者となったニコライ・ホフロフ、プーチンに追われた元新興財閥ボリス・ベレゾフスキー、ベレゾフスキーを批判する著書を書いていた暗殺されたポール・クレブニコフ、プーチン批判の記事を書き続けた暗殺されたアンナ・ポリトコフスカヤ、西側に亡命し放射性物質で暗殺されたアレクサンドル・リトヴィネンコらを題材に、プーチンの覚えめでたくない者たちの死に様を描写しています。
 しかし、この本の結論は、プーチン政権下で、犯人が何者かはわからないが暗殺が公然と行われ真相が解明されない社会が出現しているというところにとどまります。他の者が、暗殺にプーチンや政権上層部が関わっていると述べているのを、著者は、その証拠はないとか自分はそうは思わないとか私の勘ではそうではないなどと述べています。
 プーチンを批判する体裁の本でありながら、暗殺・事件へのプーチンや政権上層部の関与への言及には妙に慎重で、「プーチンに対するフェアネス」に満ちたプーチンに申し開きが立つことに意を用いた本という印象を私は持ちました。
 取りあげた人物も、ポール・クレブニコフはむしろプーチンの味方というべき人物で、その暗殺を取りあげているのはプーチン批判派のみが暗殺されているわけではないという印象づけに思えますし、プーチン批判派の描写でも、アンナ・ポリトコフスカヤ以外については信頼の置けないいい加減な人物という側面をも繰り返し描いています。
 どうも読んでいて何が言いたいのかはっきりしない中途半端な本です。一体何のために書いた本なんでしょ。
 ノンフィクションにしては本論に関係ない人物描写が多く、「暗殺」を論じることよりも「暗殺された人物」を描きたかった感じです。しかも、その人物選択が複数で統一感がないので、ますます雑多な散漫な展開となっています。
 最初と最後にプーチン政権への批判的なことを書いているのと、アンナ・ポリトコフスカヤ部分だけはストレートな記述になっているので、辛うじてプーチン批判本に読めますが、それがなければ「裏切り者の末路」を描いたプーチン批判派への批判本とさえ読まれかねません。
 その中途半端さ、論旨の不明快さのため、読み進むのがとても苦痛でした(アンナ・ポリトコフスカヤのところだけはスッキリしているので一気読みできましたが)。


原題:Putin’s Labyrinth
スティーヴ・レヴィン 訳:中井川玲子、櫻井英里子、三宅敦子
阪急コミュニケーションズ 2009年2月11日発行 (原書は2008年)
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トーキョー・クロスロード

2009-04-22 20:42:06 | 小説
 まじめで純情でそれなりにしっかりしている高校1年生森下栞が、中学卒業後の春に行ったハイキングの帰りにキスされた相手の月島耕也に抱いた恋心を暖めていて、耕也と再会して織りなすほのぼの寄り道ラブ・ロマンス。
 栞と2人の友だち亜子・美波の典型的な学園もの展開に、高1のとき密かにできちゃった婚して赤ちゃんを育てながら通学する河田貴子とジャズバンドに入りアルトサックスを吹く青山麟太郎の2留コンビが華やぎを与えています。どちらかというと栞と耕也のエピソードよりも、貴子、麟太郎の生き様の方が輝いて見えるくらい。
 栞が耕也への思いを一貫して持ち続けているので、栞の側から読む限りラブ・ロマンスですが、それを隠して読んだら耕也のやってることはかなり酷い。再会して憎まれ口きいた上で栞に親友のかわいい亜子を紹介させて付き合いながら栞につきまとって送り狼となり亜子をつまみ食いして別れた挙げ句に栞にストーカー状態。そういう経過でありながら栞は一度として耕也を嫌うことなく思い続けてハッピーエンドというのですから、見てくれのいい男は何をやっても許されるってことなんですね、と拗ねたくなります。男の目からは、いかにもわがままでいやなヤツと見えるのですが。
 私が作者なら、栞が幼い身勝手ストーカー男耕也への思いを捨てて自力で人生を切り開くたくましさを身につけた麟太郎に思いを寄せることで成長を見せるという展開を、迷わず選びます。
 でも、若い女性には、(あくまでも見てくれはいい)不安定なわがまま男への一途な愛路線もありなのかと思って作者のプロフィールを見たら、私より4つ年上。ちょっと頭がくらっとしました。


濱野京子 ポプラ社 2008年11月発行
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図書館の女王を捜して

2009-04-20 21:06:16 | 小説
 読書好きの妻を亡くして便利屋を始めたが開店休業状態の主人公が、豊満な未亡人サチエに迫られ、妻の想い出との間で葛藤する様子を、サチエの夫ヒロミチの霊、霊的能力のある主人公の借家人明と絵描きヤガミ、主人公の妻の霊、飼い犬パピを絡めてややコミカルに描いた小説。
 サチエが主人公に迫ったのが、ヒロミチの霊がサチエを主人公に支えさせようとしたためということから、霊絡みの謎解きのストーリーとなっていきますが、はっきり言ってそっちはあまりにも展開が見え見えで興味を持てません。
 霊の部分はむしろ和風のファンタジーというか単純な道具と割り切って、むしろ夫婦の愛情物語と読んだ方がいいでしょう。そのレベルでは、ほんわか・のほほんとした読み心地を味わえます。
 ラストに付された「長めの後書き」は、作者にとっては意味があるから書いているのでしょうけど、読者にとっては小説とは関係ない話。せっかくほんわりと読み終えたところに作者の思い入れでつんのめった文章を読まされて興ざめします。自伝は自伝として別に書くべきだと思います。


新井千裕 講談社 2009年3月23日発行
コメント (1)
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