伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

男はなぜ急に女にフラれるのか?

2007-11-30 22:48:28 | 趣味の本・暇つぶし本
 男と女の思考パターンの違い・すれ違いを論じた本。
 男と女は思考パターン等が違うことを前提にそれを主要には脳の構造の差や狩猟生活時代からの本能などで説明しようとする、80年代以降性差を強調したがる人たちにありがちな議論パターンを俗受けする世間話で書いたものです。
 はっきり言ってこういう議論は、個性を軽視して人の自由な成長の可能性を減少させるもので、私は嫌いです。特にそれを脳の構造の差異とか学問的な装いの説明で宿命的・本来的なものと思わせる手法には反感を持ちます。
 しかし、世間話としては、よくある話で、また妙に納得してしまうのが困るところ。女は共感脳・男は解決脳(14頁)とか、男は閉じた脳・女は開いた脳(147~150頁)とか、キャッチが妙にうまい。雑談として暇つぶしに読むには面白いのですが。


姫野友美 角川oneテーマ21 2007年10月10日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

赤い春

2007-11-30 08:23:10 | ノンフィクション
 元日本赤軍でクアラルンプールアメリカ大使館等占拠事件の被告人として裁判中の筆者がレバノン南部地域でPFLP(パレスチナ解放人民戦線)のコマンド(戦士)として活動した時期について書いた手記。
 筆者の経歴からして、どちらかと言えば、日本赤軍時代の活動部分を読みたかったのですが、その部分は裁判中のためか、筆者が日本赤軍の活動方針に疑問を持って脱退した経緯からか、ほとんど描かれていません。描かれているのは1979年に筆者が日本赤軍に脱退届を出してPFLPのコマンドになってから1982年のイスラエルのレバノン侵攻の終戦処理でコマンドがベイルートから撤退させられるまで、その後1997年に筆者が逮捕されるまでの活動もほとんど出てきません。そのあたり、読者としては欲求不満が残ります。
 敵(イスラエル軍やレバノン右派民兵)との戦闘を振り返って、気がついたときには数十人の敵が周囲に散開しており銃撃すれば十人くらい倒せるであろうしその銃撃の音で仲間たちが敵に気づき態勢が取れるという状況にあって隠れたまま動けなかった仲間のコマンドの立場に自分がおかれたら自分は戦えただろうかという問い返し(165~169頁)は、重く、考えさせられます。
 不発弾の先っぽを金のこで切り落として中の火薬をリサイクルする話(194~195頁)とか、自動車爆弾の爆発時に偶然助かった話(65~72頁)とか、派手な話もありますが、全体としてはコマンドの生活をわりと淡々と描いていて、内部での確執とか、文化的なことの方が多くなっています。


和光晴生 集英社インターナショナル 2007年10月31日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

よくわかる雇用保険

2007-11-27 21:30:22 | 実用書・ビジネス書
 雇用保険(失業保険)制度についての解説書。
 雇用保険は、労働事件特に解雇事件をやっているとよく関係してくるのですが、法律の規定がけっこう細かく、しかもよく変わるので、詳しいことはハローワークに聞いてねと答えがち。で、こういう本も読んでみるのですが、やっぱり細かくて覚える気がしません。どうせ覚えてもまた変わるだろうし。
 基本の失業給付(基本手当)だけでもけっこう数字が細かい上に、現在では実に多数の種類の手当・補助金があることが紹介されています。たぶん、多くはこういう制度も作っていますという役所の言い訳のための制度で、申請主義で誰も知らないから申請がないか役所が要件に合わないとしてはねているのが多いんじゃないかと疑ってしまいますけどね。こんなにたくさん企業への補助金制度を用意できる予算があるなら、失業者に給付する基本手当をせこい適用制限しないでもっと広く手厚く出す方がいいと、庶民の弁護士としては、改めて思いました。


労働調査会出版局編 労働調査会 2007年10月15日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ダリ全画集 第1部、第2部

2007-11-26 07:35:29 | 趣味の本・暇つぶし本
 サルヴァドール・ダリについての解説付き画集。「全画集」と題するだけに2巻組通し頁で780頁、図版1648点(全部がダリの絵の図版というわけではありませんが)という大著(それにもかかわらず定価6900円というのはさすがタッシェン社というべきでしょうね)。2002年6月発行で絶版になっていたものをタッシェン社創立25周年記念事業の一環としてリニューアル再刊したそうです。
 ダリについては、君主制への信奉/憧憬、戦争・ヒトラーへの姿勢、上流社会へのすり寄り等その生き方には共感を持てませんし、絵や芸術についての傲慢で饒舌な語りを読まされると興ざめしてしまいます。著者の熱意によりダリの出版物からの引用や絵の背景が説明されますが、少なくともダリに関してはそういうのを聞かない方が絵として楽しめると、私は思います。
 元々そう思っていたんですが、ダリが広島への原爆投下に衝撃を受けて「精神分析学のダリ」から「核物理学のダリ」に変貌したとされ、それが要するに物体の浮遊と爆発(破片化)が描かれるようになったことだとなると、複雑な思いを持ちます。強烈な爆発力に感銘を受けたということですね。その下で殺戮された人々は目に入らないみたい。ダリは元々反戦の姿勢はとっていませんが、それでもスペイン内乱(市民戦争)を受けて描いたといわれる「戦争の顔」(第1部336頁)はどくろに満ちていて殺人への批判・嫌悪が感じられるのに、原爆に衝撃を受けて描いたとされる絵はいずれも美しく殺人のにおいがしないのは、祖国と日本の違いでしょうか。
 また、習作・デッサンも含めこれまで知らなかった作品を続けて見ると、ダリが絵を量産し、同じモチーフを少しずつ入れ替えて書き続けていた様子がよくわかります。商業デザインや興行への傾倒(ディズニー映画にまで手を伸ばしていたんですね)とあわせ、アンドレ・ブルトンからドル亡者(Avida Dollars:Salvador Daliのアナグラム=綴り換え)と嘲笑されたのも納得できます。
 そういう生き方というか姿勢には共感できないダリですが、描写力というか、絵の技巧のレベルの高さは、おそらくは自ら絵筆を取ってみたことがある者は誰しも、憧れ/驚異を感じると思います。
 作成年を追って見ていくと、時期により、ピカソ、ミレー、フェルメール、マグリッド、モロー、ベラスケス、ミケランジェロの影響というか意識していたことがよくわかりますし、晩年はかなり画風というかタッチが変わっていることも新発見でした。


ロベール・デシャルヌ、ジル・ネレ タッシェン社 2007年9月発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

キーワード検索がわかる

2007-11-25 09:05:01 | 実用書・ビジネス書
 インターネットの検索エンジンやデータベースを利用した検索についての本。
 検索エンジンでの検索についても書いてありますが、中心は学者や研究者が研究対象の分野の関連文献をもれなく検索で拾い上げるという観点から、キーワードが人の手で整理された「シソーラス」を用いたデータベースでの検索の方におかれています。その場合の検索キーワードを試行錯誤して追加していく説明やデータベースの選択と利用については参考になります。でもよく利用する検索エンジンを使ってちょっとしたことの確認や考える手がかりが欲しい程度の「予備的知識を得るための検索」向きの本ではありません。
 情報検索の専門家の本ですから、索引には新書の索引とは思えないほど力が入っています。さらっと読み流せてしまうので、その充実した索引を使って読み返したいかというと疑問なのですが。


藤田節子 ちくま新書 2007年10月10日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロースクール交渉学[第2版]

2007-11-24 06:49:48 | 実用書・ビジネス書
 ロースクール(法科大学院)用の交渉学の教科書兼資料集として作成されたもの。
 執筆者は6名で元裁判官が2名、弁護士(使用者側)が1名、学者が2名、コンサルタントが1名という構成。書き下ろし部分が少なく、執筆者が過去に書いた原稿の抄録や他の本の要約紹介部分が多く、実質的には教材集という感じ。交渉についての執筆者のスタンスが異なり、書き下ろしの6名分担の章など、1冊の本とは感じにくい。全体としてはかなり寄せ集めの印象を持ちます。
 むしろ、交渉というものは学問として確立しているものではなく、様々な視点・切り口のあるものと認識するのによい教材と言うべきでしょう。
 内容的には、日頃交渉を仕事としている者としては特に目新しいことはないのですが、概念として明確化されたり整理されている点では勉強になりました。
 もっとも、その点よりは、特に元裁判官や企業側弁護士執筆部分について、そういう人々の見方・考え方や事例部分が一番興味をそそられましたけどね。
 ただ、2005年初版・2007年第2版の本にしては、日弁連の懲戒件数の表が1999年までだったり(149頁)、労働審判法が「2006年5月までの間に施行される」(242頁)なんて記載が残っているのはお粗末。書き下ろしの少なさと合わせて、もう少し本作りに手をかけて欲しいと、読者としては感じます。


太田勝造、草野芳郎編著 白桃書房 2007年9月26日発行 (初版は2005年)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マルシェ・アンジュール

2007-11-19 07:54:55 | 小説
 住宅地の中の24時間営業の高級食料品スーパーを訪れる男女の幸せなようなしかし儚げなラブストーリーの連作短編集。
 共通点は、高級食料品スーパー「マルシェ・アンジュール」がストーリーのどこかで現れることだけ。いかにも無理無理登場する作品もありますし。
 高級スーパーに非日常を求めて訪れる人、スーパーが日常の人、様々な人が登場しますが、舞台がら、小じゃれた小金持ちと少し背伸びした中流の住民たち。少し都会的でその分深く共感はできない感じのスタンスで読みました。主人公たちは基本的には幸せだけれどもどこか不安定さを感じさせ、しかし不幸や破局は落ちてこない、その意味でわりと安心して読める読み物です。
 スーパーの名前マルシェ・アンジュール(MARCHE UN JOUR)は直訳すれば「ある日/いつか市場」。寓意よりは小じゃれた雰囲気を優先したネーミングかも知れませんが。


野中柊 文藝春秋 2007年10月10日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北極のナヌー

2007-11-18 08:57:44 | ノンフィクション
 ホッキョクグマとセイウチの母子の生き様を描いた映画「北極のナヌー」の写真付きストーリーとメイキングストーリー。
 母子でさすらいながら子育てをするホッキョクグマと大群の中で子育てをするセイウチの獲物を狩り成長していく姿を追い、餌が取れなくなったホッキョクグマがリスクを冒してセイウチの群れを襲うクライマックスシーンとその後を描いています。その過程で、北極の気温上昇で結氷期間が短くなり、ホッキョクグマやセイウチの生活が変わり、生きにくくなっている様を訴え、地球温暖化問題につなげています。
 美しい写真が続き、最後にその写真を撮るまでのスタッフの苦労と孤独、襲われる恐怖などが解説されています。写真集としても十分かと思います。ホッキョクグマの餌になるアザラシの赤ちゃんがかわいくて哀れですが。


原題:Arctic Tale
リンダ・ウルバートン、モス・リチャーズ、クリスティン・ゴア、ドナリ・フィフィールド編著 訳:藤井留美
日経ナショナルジオグラフィック社 2007年9月25日発行 (原書も2007年)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

労働基準監督官の仕事がわかる本[改訂版]

2007-11-17 08:11:45 | 実用書・ビジネス書
 労働基準監督官の仕事についての紹介と受験についての解説書。
 大部分を占める労働基準監督官の経験談が読みどころです。遮光性カーテンをかけて灯りが漏れないようにして不払い残業を続けさせる縫製工場(19~20頁:女工哀史か・・・)、不払い残業の証拠となる労働者の日報を自宅の寝室に隠していた経営者(23~25頁)、外国人コックに週1万円しか払わないインド料理店経営者(49~55頁)、外国人講師の帰国間際になると給料を払わなくなる外国語学校経営者(57~61頁)、タイムカードの機械があるのにタイムカードを隠し機械は壊れていて使っていないと平然と嘘をつく総務部長(66~72頁)、労災の被害者を監督者と偽って責任を押し付けようとする実際の監督者(73~76頁)など、労働基準法や労働安全衛生法を無視した上に証拠隠しを図る悪辣な経営者と労働基準監督官の闘いの様子が大変興味深く読めます。
 労働基準監督官の仕事の多くの部分は労働者からの相談・申告への対処、定期臨検・指導と思われますが、経験談では不払い残業や労災についての刑事立件の話が多いのも印象的です。労働基準監督官としてもそれが心に残り、また後輩に語るのに適していると感じるのですね。ならもっと頑張ってどんどん立件して欲しいと、労働者側の弁護士としては思ってしまうのですが。


法学書院編集部 法学書院 2007年9月20日発行 (初版は2000年)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウィキッド 上下 誰も知らない、もう一つのオズの物語

2007-11-15 08:17:51 | 物語・ファンタジー・SF
 ブロードウェイ・ミュージカルとなった(ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでもその一部を上演している)「ウィキッド」の原作。「オズの魔法使い」の「西の悪い魔女」を主人公にしたファンタジーです。
 農民への布教に情熱を燃やす牧師と身持ちの悪い貴族の跡取り娘の間に産まれた緑の肌を持つ少女エルファバ(エルフィー)は、都会の大学で知り合った仲間たちとどこかなじめず距離を置きつつ、言葉を話す<山羊>のディラモンド先生に師事して言葉を話す<動物>の地位向上をめざす研究を進めますが、ディラモンド先生が暗殺され、学長から呼ばれて政府のスパイとなることを求められたのを機会に魔法使いへの面会を求めて<動物>差別の撤回を訴えますが拒否され、反政府活動家(テロリストと言ってもいい)になり、その過程で性関係を結んだ昔の仲間が殺され、殺された仲間とその妻への負い目から赦しを求めて放浪し、赦しを得損ねてついには魔女になっていくことになります。
 ヒットしたミュージカルの原作ということで手にしたので読みやすい作品かと思いましたが、主人公エルファバの内面はちょっとわかりにくく、ドタバタさせながらも意外に宗教とか悪についての観念的な問いかけが多く、読み通すのはけっこう骨が折れました(上下2巻で680頁ほどありますし)。
 エルファバが<動物>の差別・虐待に敏感というかテロリストへの道を歩んだのは、自らが肌の色故に差別されてきたからと思えますが、そのエルファバと放浪してからのエルファバが今ひとつ結びつかない感じで、どこかしっくりしません。また、エルファバが、父(生物学的には父でないようですが)が妹にプレゼントした靴にどこまでもこだわることにも、その父自身を放置して立ち去る姿と合わせ読むと、なんか釈然としないものが残ります。
 エルファバの人と距離を置いた突き放した態度や憎まれ口の中の哀しさにうまく共感できるかどうかが、この作品の評価の分かれ目になるでしょうね。


原題:Wicked:The Life and Times of the Wicked Witch of the West
グレゴリー・マグワイア 訳:服部千佳子、藤村奈緒美
ソフトバンククリエイティブ 2007年10月2日発行 (原書は1995年)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする