伊東良徳の超乱読読書日記

読んだ本の感想を中心に本に対するコメントを書き散らします。読み終わった本は図書館に返すのでフォローは保証できません。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

裏切りの月に抱かれて

2008-05-31 07:32:12 | 物語・ファンタジー・SF
 コヨーテに変身する「ウォーカー」で車修理工のマーシィが、人狼の首領を襲いその娘を誘拐した何者かと人狼グループの戦いに巻き込まれというか自ら首を突っ込み、娘と首領の救出に向かうというストーリーのファンタジー。
 マーシィは自らの意思で瞬時にコヨーテに変身でき、聴覚・嗅覚に優れているほか魔法を察知することができる能力があり、かつて人狼グループに預けられてその中で育ったために人狼の特徴やグループに詳しいという設定です。人間社会の中に数多くの人狼、ヴァンパイヤ、妖精(フェイ)、魔法使いが潜んでいて、フェイだけがその存在をカミングアウトし、他の超人類たちは息を潜めてカミングアウトしたフェイたちのその後を見つめているという社会状況で、人狼がカミングアウトすべきかが人狼社会で問題となっていることが背景とされています。
 襲撃犯をめぐるミステリー仕立てにはなっていますが、謎解きとしてはいまいちです。
 独立心旺盛で気が強く行動的なマーシィの人物像と、人間社会以上に父権社会と描かれている狼社会(でもきっと人間社会もそうだって作者は言いたくて書いてるんだと思います)の首領や一匹狼たちとマーシィの掛け合いを味わうアクションものとして読むべきだと思います。


原題:MOON CALLED
パトリシア・ブリッグズ 訳:原島文世
ハヤカワ文庫 2008年4月20日発行 (原書は2006年)
コメント

ご愁傷さま二ノ宮くん1、2、3

2008-05-27 07:41:11 | 物語・ファンタジー・SF
 丘の上の豪邸に住む高校生二ノ宮峻護が、スタイルは完璧の究極の美少女で男から精気を吸い取らないと生きていけない身でありながら男性恐怖症で引っ込み思案の月村真由と同居することになり、引き起こすドタバタを中心に、怪人物の峻護の姉と真由の兄、高校生にして日本有数の財閥を率いつつ峻護に思いを寄せる北条麗華、その付き人の保坂光流らがからむラブコメ小説。
 主人公は豪邸住まいで金には不自由せず親はどこで何してるかわからない、相手の少女は究極の美少女で男性がなくては生きていけないのに男性恐怖症でしかも主人公だけは一緒にいても大丈夫、ついでに魅力的で強くて金持ちの姉が同居、ルックスも実力も財力も申し分ないスーパー女子高生も主人公に思いを寄せて「メイド」として同居という、アキバ系オタクの妄想全開の超都合のいい設定。
 これで主人公を読者の期待通りに動かしたら、お話はせいぜい2、3話で終わるところ、主人公を超まじめの堅物に設定し、いちいち大仰に驚かせて場をつなぎながらしかしことは進行させず長引かせていくあたり、この作者意外にくせ者かもと思わせます。
 文章は読みやすいのですが、主人公の白々しいわざとらしい思い部分が違和感を感じさせ、そのあたりは北条麗華の自分への言い訳もそうだし、峻護の姉と真由の兄はぶっ飛んでいて面白いけど一貫性のかけらもないご都合主義の言動に終始するし、真由はいかにもただのお人形さんで、普通に思考に付いていける人物って保坂くんだけなもんで、ちょっと読み続けるのがつらい。
 2巻で北条麗華の過去を主人公とつなげてストーリーの中心に投入して波乱を巻き起こし、真由の男性恐怖症を治すという白々しいお題目を3巻で激しい禁断症状を見せてそれなりに説得力を持たせてしまうなど、ストーリーの展開力はあるようですから、人物造形や設定に物足りないか呆れて飽きてしまわなければ、この先も楽しめるかも知れません。
 「ご愁傷さま」が8巻までとその後に新シリーズもありますが、図書館で予約するとだいぶ先になるし、私はこのあたりで切り上げさせていただきます。


鈴木大輔 富士見ファンタジア文庫
1 2004年9月25日発行
2 2005年2月25日発行
3 2005年5月25日発行
コメント

毒草師 白蛇の洗礼

2008-05-24 08:42:57 | 小説
 お茶会の場での連続毒殺事件の取材を命じられた雑誌記者西田真規が前作同様に関係者に恋愛感情を持ちつつ関わっていく形でストーリーが展開し、隣人の毒草師御名形史紋が謎を解いて事件を解決するミステリー小説。
 基本的な線は、毒物に関する知識を用いたミステリーで、謎解きも少しひねりがあって楽しめます。
 作者に中世史がらみの蘊蓄へのこだわりがあって、この作品ではお茶会の話でもあり、千利休がキリシタンだったかどうかをめぐる論争が第2の軸となり、延々と論じられています。それに興味を持てないと、その部分に入ると途端に読みづらくなって、疲れます。


高田祟史 朝日新聞出版 2008年4月30日発行
前作の「毒草師」は2007年6月27日の記事で紹介しています。
コメント   トラックバック (1)

暗闇のヒミコと

2008-05-24 00:46:16 | 小説
 超高級養護老人施設で起こった殺人事件で物証なしで元看護師が逮捕された事件の捜査段階と裁判を司法記者を語り手として描いたリーガルサスペンス小説。著者は仮名の著名現役弁護士だそうです。
 同業者ですから刑事事件の描写が詳しいのは当然ですが、驚くのは司法記者をめぐるディテールの迫真性です。私自身は日弁連広報室にいた関係と取材対象になる事件を少なからずやってきたことから司法記者とのつきあいがそれなりにありますからわかりますが、この描写は司法記者と相当回数飲まないと描けないと思います。著者が著名事件で司法記者といろいろおつきあいした成果が現れているのでしょう。
 被告人の運命がそれを扱う人の個性・人生観・能力に大きく左右されるということがこの作品のテーマです(表紙見返しで著者自身が明言しています)が、裁判官の1審2審の対比はさておき、同業者への見方が考えさせられます。登場する弁護団で「黒田弁護士」は極めて有能、他は無能と明確に区分けされ、その点でも著者の視線は厳しい。
 その上、その「黒田弁護士」にも著者が批判的(敢えてぼかしてはいるものの、弁護活動をゲームのように考えているという批判を匂わせています:299頁)なのが同業者として悩ましい。ここは机上の議論としてはさておき実務の現場では、弁護士は証拠と依頼者と現実には必ずしも明らかといえない「真実」の境目で試行錯誤・自問自答し、悩み続けるものだと思います。著者がこのように書ききってしまうところに、著者の気持ちの中で実務が遠のいたのかなと感じてしまいます。
 また、控訴審弁護団に、被告人が刑事にありもしない証拠があると騙されて自白したことが法廷で明らかになったのに対して、違法収集証拠排除の申立さえさせなかったことにも、私は疑問を感じました。東京高裁でも特に「鬼の部」と言われている裁判長佐藤伴哉の率いる部(300頁:業界的には笑うしかないですが・・・)には通じないということかも知れませんが、最高裁を考えたら弁護士としては当然しておくべきことでしょう。そこをそうさせずにアメリカの外交機密を不正な手段で入手した記者が処分され自殺するエピソードを重ねて、記者は制裁を受け警察は制裁を受けないことを対比させて自ずから感じさせるという方向性は、現役弁護士よりも作家側にシフトしている感じを持ちます。


朔立木 光文社 2007年12月15日発行 
コメント

月のころはさらなり

2008-05-23 06:47:18 | 小説
 母の実家の山里の隠れ里に逃げるように転がり込んだ母について、おんば様と「預かり子」茅が暮らす庵に滞在することになった高校生悟が、山里に伝わる子どもたちの神秘的な力や態度のでかい小学生真に翻弄されながら、山里の庵の暮らし、母と村人の過去、そして母と父の関係に思いをはせる小説。
 生意気な登場から次第に親しみを覚えさせる真、人形のような受動性から包容力を見せる茅の2人の子どもと悟の関係とその変化がストーリーの主軸となり、虚脱して危なげな様子から立ち直り先を見据える母の変化がもう1つの軸をなしています。暗く怪しげなスタートから先行きへの希望と活力を見せるラストへの流れは読んでいてホッとします。
 山里に伝わる子どもたちの神秘的な力は、物語のあちこちで小道具にはなっていますが、特にその力でストーリーが変わるでもなし、謎解きがあるでもなし。夜の山道と、川向こうの祠とともにイメージを高める役には立っていますが、別にそれがなくても描けたような感じがします。


井口ひろみ 新潮社 2008年1月30日発行
新潮エンターテインメント大賞
コメント

あの空をおぼえてる

2008-05-22 08:32:38 | 小説
 7歳の妹ウェニーと一緒に道路を渡っていてトラックにはねられ、自分は命を取り留めたが妹は死んでしまった11歳の少年ウィルが、その後の自分と家族の様子を天国の妹への手紙で語るスタイルの小説。
 時が過ぎても娘を亡くした哀しみから立ち直れない父と母の様子を、自分も妹を失った哀しみ、妹を救えなかった自責の念、妹を慕う気持ちと恨み・妬み、そして父母が生き残った自分のことよりなくした娘のことの方ばかり考えることに傷つく心に揺れ動きながら描写しています。
 日本語タイトルは、お話の最初にウィルが語る臨死体験でトンネルを抜けた先に見た空の明るい光の印象にポイントを置いたもの。でも、作品としては、それよりも、死んだ娘のことばかり考えて凍り付いた家族の中での生き残った少年の複雑な思いがテーマとなっています。
 現に生き続ける子どもがいる限り、その子のためにも親は哀しみから速く立ち直らなくちゃね、さらに言えばそれは子どもが死んだときに限ったことじゃないよねと、子どもを持つ親としては、気づかされてしまう作品です。


原題:Wenny Has Wings
ジャネット・リ-・ケアリー 訳:浅尾敦則
ポプラ社 2003年2月発行 (原書は2002年)
コメント

シークレット・オブ・ベッドルーム

2008-05-21 09:19:50 | 小説
 アル中で女好きのエジンバラ市環境衛生局のレストラン監視官ダニー・スキナーとゲームオタクで熱心な新入り監視官ブライアン・キビーが繰り広げる愛憎劇と、父親を知らないダニーの父親探しを絡めたストーリーの小説。
 ダニーがまじめな新入りブライアンを激しく憎み、自分の体に受けた傷害やアルコール・ドラッグなどのダメージを翌朝にはすべてブライアンの体が引き受けるという呪いが実現してしまうということが重要な材料となって話が展開しています。これを楽しめるか、これでしらけるかで評価がだいぶ変わりそうです。
 スコットランドの地理・社会がわからないとついて行きにくい、本が分厚い、訳が日本語としてこなれていない、という事情で読み通すのがちょっとつらく思えました。最初の100頁あたりまではいつぶん投げようかと思いながら読んでいた感じ。ダニーの調子のよさとブライアンの悲惨さが対照的で、多くの章で語り手がダニーとブライアンの切り替わりなもんで、快・不快が揺れてやや居心地が悪い。
 ダニーの父親探しが、それほどこだわる価値があるのかなという思いも残りますが、エンディングは展開にスピード感があり、やや鮮やか。


原題:THE BEDROOM SECRETS OF THE MASTER CHEFS
アーヴィン・ウェルシュ 訳:田内志文
エクスナレッジ 2008年3月26日発行 (原書は2006年)
コメント

訴えられたらどうする!!

2008-05-20 08:44:46 | 実用書・ビジネス書
 民事裁判についての弁護士による解説書。
 弁護士が民事裁判を素人向けにどう解説するのかということを考えれば、だいたいこうなるよねってところで、私が自分のサイトで書いていることとおおかた同じです。
 当事者は何でもかんでも自分のいいたいことを弁護士に代弁して欲しいと思いがちだけどむしろ勝ち筋の事件では主張はシンプルにして余計なことはいわない方がいい(71~79頁)とか、弁護士との打ち合わせで何度も同じ話を蒸し返さないで欲しい(88~91頁)とか、同業者としてしみじみわかります、こういうことを書きたくなる気持ち。苦労してるんですねぇ・・・。
 基本的には、この本に書いてあることに私も同意見ですが、民事裁判の判決は聞きに行かないもの(105~106頁)というのは、好みの問題で、私は日程上行ける限りは判決日に判決を受け取りに行っています。負けた場合の控訴の検討期間を1日2日稼ぐよりすぐ次の動きに入った方がいいと思っていますので。


高島秀行 税務経理協会 2008年4月10日発行
コメント

経営者のための株式上場ハンドブック

2008-05-20 08:14:39 | 実用書・ビジネス書
 法人が新興企業向けの証券市場(ジャスダック、マザーズ、ヘラクレス等)への上場をする際の制度や準備等に関する概説書。
 薄い本なのですが、繰り返しが多くて情報量が少なく、抽象的な説明が多くて具体例がほとんどないので、ちょっと読んでいて退屈だし、読んでイメージしにくい。法律の解説書にはありがちではありますが、役人が書いた法律解説書のような感じ。
 上場で問題になる事柄を短時間で流すにはいいと思いますが、それをどうすればいいかはたぶん、経営者が読んでもよくわからない。どちらかというと、読んで上場にはいろいろなことが問題にされ、具体的なことはよくわからないから、とにかく監査法人とかコンサルタントに任せて言うことを聞かないといけないんだなあという感想を持つことが予想されます。コンサルタントにとってはそれでいいのかも知れませんが。


優成監査法人、優成コンサルティング株式会社編著 
財経詳報社 2008年3月17日発行

コメント

ドラゴンキラー売ります

2008-05-19 08:30:56 | 物語・ファンタジー・SF
 4月29日の記事で紹介したドラゴンキラーシリーズの完結編。
 再度第1作の南の帝国から皇女を取り戻しに来たドラゴンキラーとの争奪戦に戻り、多数のドラゴンキラーが入り乱れ、隣国から派遣されたドラゴンキラーと提携したマフィアに対抗するためにココが対抗勢力の荒くれ者800人を扇動して街中大騒動になり、街を挙げての騒乱の中でドラゴンキラー同士の戦いが繰り広げられるというまあハチャメチャというか何でもありの展開。
 で、まぁ第1作から口汚く罵り合うココとリリィの行く末について、大方の予想通り完結編らしく落ち着き、収まるところに収めています。第1作から予想された展開ではありますが、ココの人物造形からは、落ち着きが悪い感じも残ります。


海原育人 中央公論新社C★NOVELS 2007年12月15日発行
コメント