パパ活女子大生の殺人事件をめぐるミステリー。
「スマホを落としただけなのに」シリーズ(もう3作も書かれているとか)の著者でこのタイトルですから、関連作品かと思いましたが、特にスマホや携帯デバイスがポイントになるわけではなく、ふつうのミステリーです。
パパ活の背景に、莫大な奨学金の負債を抱える学生生活、さらにはその親たちの経済力の低下を示唆し、政府の新型コロナ感染拡大防止対策の貧弱さを指摘しているあたりには、社会派的なニュアンスも感じます。しかし、奨学金に関していえば、確かに(高利ではないですが)単なる金貸し・取立屋になっている日本学生支援機構の姿勢は問題ですが、そもそも給付型(返済不要)の奨学金があまりにも少なく奨学金のほとんどが貸与型(返済義務あり)という制度設計/政治選択こそが批判されるべきであるのにそこには触れず、親たちの経済力の低下も実質賃金が下がり続けている安倍・菅政権下の経済政策の問題には触れずに、政策/税金の使途が高齢者支援に偏っているなどと、政府・財界と庶民ではなく高齢者と若者の対立のように描いてみせるなど、政権の問題に直接斬り込むことを避けているように思え、これが近年は政権批判を躊躇しない「女性セブン」に連載されていた(したがって、読者は政権批判を歓迎している)ことを考えると、むしろ及び腰と思えます。なぜかジャニー喜多川を持ち上げていたり(135~137ページ)、ニッポン放送の関連会社役員という作者の立場が反映されているのかなと感じてしまいます。

志駕晃 小学館 2020年12月22日発行
「女性セブン」連載
「スマホを落としただけなのに」シリーズ(もう3作も書かれているとか)の著者でこのタイトルですから、関連作品かと思いましたが、特にスマホや携帯デバイスがポイントになるわけではなく、ふつうのミステリーです。
パパ活の背景に、莫大な奨学金の負債を抱える学生生活、さらにはその親たちの経済力の低下を示唆し、政府の新型コロナ感染拡大防止対策の貧弱さを指摘しているあたりには、社会派的なニュアンスも感じます。しかし、奨学金に関していえば、確かに(高利ではないですが)単なる金貸し・取立屋になっている日本学生支援機構の姿勢は問題ですが、そもそも給付型(返済不要)の奨学金があまりにも少なく奨学金のほとんどが貸与型(返済義務あり)という制度設計/政治選択こそが批判されるべきであるのにそこには触れず、親たちの経済力の低下も実質賃金が下がり続けている安倍・菅政権下の経済政策の問題には触れずに、政策/税金の使途が高齢者支援に偏っているなどと、政府・財界と庶民ではなく高齢者と若者の対立のように描いてみせるなど、政権の問題に直接斬り込むことを避けているように思え、これが近年は政権批判を躊躇しない「女性セブン」に連載されていた(したがって、読者は政権批判を歓迎している)ことを考えると、むしろ及び腰と思えます。なぜかジャニー喜多川を持ち上げていたり(135~137ページ)、ニッポン放送の関連会社役員という作者の立場が反映されているのかなと感じてしまいます。

志駕晃 小学館 2020年12月22日発行
「女性セブン」連載