意識的にではなく腕が上がっていくとか両手が開くとか手に持った振り子が指定した方向に揺れるとか、腕が曲がらなくなるとか椅子から立てなくなるとか、ペットボトルが好きになる(手から離したくなくなる)とか自分の名前を忘れるとかの催眠術について、実施のしかたを解説した本。
催眠術は、かける側に特殊な能力があるということではなく、したがって基本的に誰でもかけることができる、他方でかかりやすい人・かかりにくい人はいて、むしろかけられる側(被験者)の能力(催眠感受性、被暗示性)の問題というのがこの本のスタンスです。著者が自分で実験した結果(サンプル数60名)では、手の降下は78.3%、手の接近は58.3%、腕の不動は50.0%というように体の動きに関係する暗示は反応率が比較的高く、音が聞こえなくなるとか何かが見えなくなるという暗示は10%というように反応率が低い傾向にあるとされています(38ページ)。物事に集中しやすい人は催眠術にかかりやすい、カフェやレストランで隣の人の会話が耳に入ってこない(隣でこんな話をしていたねと同席した人から後で聞かされても全然聞いていなかったのでわからない)ような人がかかりやすい、飲み会で他の人のグラスが空になっていることに気づかないとか考えごとをしていて電車を乗り過ごすことがよくある人がかかりやすいのだそうです(78ページ)。
催眠術によっても、本人がイヤなことは実現されず(18ページ)、本人が何か変化が起こるという期待があったときに実際にその変化が生じる(22ページ)のだとか。本人の意思に反して、やりたくないことでもやらせることができるというわけではないのですね。それは、安心というか、逆にそれならそれほど面白い技術ということでもないということになってしまいそうですが。

漆原正貴 講談社現代新書 2020年9月20日発行
催眠術は、かける側に特殊な能力があるということではなく、したがって基本的に誰でもかけることができる、他方でかかりやすい人・かかりにくい人はいて、むしろかけられる側(被験者)の能力(催眠感受性、被暗示性)の問題というのがこの本のスタンスです。著者が自分で実験した結果(サンプル数60名)では、手の降下は78.3%、手の接近は58.3%、腕の不動は50.0%というように体の動きに関係する暗示は反応率が比較的高く、音が聞こえなくなるとか何かが見えなくなるという暗示は10%というように反応率が低い傾向にあるとされています(38ページ)。物事に集中しやすい人は催眠術にかかりやすい、カフェやレストランで隣の人の会話が耳に入ってこない(隣でこんな話をしていたねと同席した人から後で聞かされても全然聞いていなかったのでわからない)ような人がかかりやすい、飲み会で他の人のグラスが空になっていることに気づかないとか考えごとをしていて電車を乗り過ごすことがよくある人がかかりやすいのだそうです(78ページ)。
催眠術によっても、本人がイヤなことは実現されず(18ページ)、本人が何か変化が起こるという期待があったときに実際にその変化が生じる(22ページ)のだとか。本人の意思に反して、やりたくないことでもやらせることができるというわけではないのですね。それは、安心というか、逆にそれならそれほど面白い技術ということでもないということになってしまいそうですが。

漆原正貴 講談社現代新書 2020年9月20日発行