新型コロナウィルス感染が拡大する中で、ウィルス等と闘う免疫の仕組み、人とウィルスの関係、新型コロナウィルス対策の現状等を取り扱ったNHKスペシャル「人体vsウィルス 驚異の免疫ネットワーク」(2020年7月4日放送)を書籍化した本。
医療関係者への感染を防ぐために新型コロナウィルス感染による死亡者の病理解剖を避けるべきだという勧告に従わずに、ハンブルグ・エッペンドルフ大学医療センターの医師たちが研究のために病理解剖を続け、その結果、新型コロナウィルス感染による死者には肺血栓塞栓症が多数生じていて、約3割では血栓が直接の死因となっていること、好中球の過剰な自爆攻撃が生じておりこれを防ぐ必要があることなどがわかったことが紹介されています(65~72ページ)。感染のリスクに曝されながら、治療や研究を続ける医療関係者の志には頭が下がります。
新型コロナウィルスに感染した際に作り出せる抗体の質と量には大きな個人差があること、ロックフェラー大学の研究チームが新型コロナウィルス感染症から回復した患者149名の血漿中の新型コロナウィルスを無力化する能力のある抗体を調べたところ、33%の人は検出限界以下で、他方2人はずば抜けて多かったのだそうです(86~88ページ)。人の個体差は意外と大きいのですね。89ページにはその棒グラフがありますが、149名の患者の比較で棒が60本しかないのはなぜ?(33%が検出限界以下でも100人程度は数値があるはずなんですが…)
人体のさまざまな活動、仕組みが、ウィルスが免疫の攻撃を防いだりウィルスが細胞に感染するのと似た機序で行われていることが紹介されています(110~116ページ)。胎盤は前者の一例、脳の長期記憶は後者の一例だそうです。生物の進化の過程で、ウィルスとの闘いと共存があったことを物語っていて、生命の神秘と世界の複雑さを改めて感じました。

NHKスペシャル取材班 講談社 2021年1月13日発行
医療関係者への感染を防ぐために新型コロナウィルス感染による死亡者の病理解剖を避けるべきだという勧告に従わずに、ハンブルグ・エッペンドルフ大学医療センターの医師たちが研究のために病理解剖を続け、その結果、新型コロナウィルス感染による死者には肺血栓塞栓症が多数生じていて、約3割では血栓が直接の死因となっていること、好中球の過剰な自爆攻撃が生じておりこれを防ぐ必要があることなどがわかったことが紹介されています(65~72ページ)。感染のリスクに曝されながら、治療や研究を続ける医療関係者の志には頭が下がります。
新型コロナウィルスに感染した際に作り出せる抗体の質と量には大きな個人差があること、ロックフェラー大学の研究チームが新型コロナウィルス感染症から回復した患者149名の血漿中の新型コロナウィルスを無力化する能力のある抗体を調べたところ、33%の人は検出限界以下で、他方2人はずば抜けて多かったのだそうです(86~88ページ)。人の個体差は意外と大きいのですね。89ページにはその棒グラフがありますが、149名の患者の比較で棒が60本しかないのはなぜ?(33%が検出限界以下でも100人程度は数値があるはずなんですが…)
人体のさまざまな活動、仕組みが、ウィルスが免疫の攻撃を防いだりウィルスが細胞に感染するのと似た機序で行われていることが紹介されています(110~116ページ)。胎盤は前者の一例、脳の長期記憶は後者の一例だそうです。生物の進化の過程で、ウィルスとの闘いと共存があったことを物語っていて、生命の神秘と世界の複雑さを改めて感じました。

NHKスペシャル取材班 講談社 2021年1月13日発行