詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

アハロン・ケシャレス&ナボット・パプシャド監督「オオカミは嘘をつく」(★)

2015-01-28 20:47:41 | 映画
監督 アハロン・ケシャレス&ナボット・パプシャド 出演 リオル・アシュケナージ、ツァヒ・グラッド、ロテム・ケイナン、ドブ・グリックマン

 クエンティン・タランティーノが絶賛したそうである。予告編を見るかぎり、そういう名作という印象がなかった。そして、実際に見てみたら、やっぱり駄作。予告編の映像には立体感がなかった。映像の情報が紙芝居のように美しい。底が浅い。映像のなかに謎の情報がちりばめられているという印象がない。それが猟奇的な殺人とその謎解きというには、かなり不似合い。
 また、最後が大どんでん返しという触れ込みだったけれど、どこが? それ以外にない結末(犯人)だった。
 おもしろい部分をあげるなら、「目には目を」の精神がイスラエルには完全に根付いているのだと感じさせる部分。拷問がエスカレートしていく、そしてそれを楽しんでいるのがすごい。指を折る、爪を剥ぐというのは拷問の常識。「おまえは軍隊で何を学んできたんだ」という父親が登場し、「拷問にいちばんいいのは火だ」と教え、バーナーで体を焼く。「目には目を」をあっと言う間に超えてしまうんだけれど、その匂いを嗅ぎながら「いい匂い」とうっとりする。ブラックユーモアにかえてしまう。食事療法で肉を断っているので、肉のこげる匂いがなつかしい。父親が息子に「おまえは子どものときバーベキューが好きだったよなあ(ハンバーグだったかもしれない。忘れた)」というようなことを言いながら微笑みあうシーンなんか、傑作だなあ。
 あと、男同士の陰湿な拷問とストーリーが、母親、妻からの電話(女性からの電話)で何度も中断するのも、この映画をスリラー・サスペンスというよりもブラックコメディーに仕立て上げている。
 衝撃の大結末などという触れ込みではなく、ブラックコメディーを前面に出して宣伝すべきだろうなあ。そうしないとケーキ作りのシーン(ケーキを食べたあとのシーン)なんかが浮いてしまう。ストーリーの「ご都合」になってしまって、おもしろくない。ブラックコメディーだからこそ、わざわざ卵を割って、タイマーをつかって、というていねいな手順が効果的なのだ。
 売り方を間違えた映画だね。「謎解き」を前面に出すと、神経が「誰が犯人?」という部分に働いてしまって、気楽に笑えない。笑いの毒に、「あっ、やったね」と拍手が出来ない。そういう余裕が亡くなる。
 それにしても。
 最初のタイトル紹介の部分に「イスラエル(政府/大使館?)」がこの映画を「推薦」みたいなことをしているという表示がなかった? こんなイスラエルの「目には目を」主義を前面に出した映画を「政府公認」にしていいのかなあ。悪い印象が生まれない? それとも、何かあれば「目には目を」でやり返すぞということを映画を利用してアピールしたいのかな?
                      (2015年01月28日、KBCシネマ1)




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