白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

股引、笠の緒、三里の灸

2010-03-01 | 画廊の様子
元禄二年二月、芭蕉は春の匂いが立ち込めてくると漂泊の思いが止まず
二度と帰れるかどうか分からない旅に出ることにしました。
見えない旅の果てを思いやり、心にかかることのないように
隅田川のほとりにあった草庵を引き払い杉風の別荘に移りました。
身の回りの旅支度に細やかな心配りをしながら
さすがに江戸の花の景色や友達に別れるのは寂しく、人に譲ったあの
わびしい家も懐かしく思えるのでした。

       草の戸も住みかはる世や雛の家      芭蕉

☆ 久しく住んだ庵が妻と娘を持った人に代が変わって
   この雛祭りには人形が飾られてやさしい雛の宿に
   なっているでしょう。

三月二十七日、芭蕉は親しい人々に見送られて千住という所から、白河の関を目指して
「おくのほそ道」の三千里の旅に出ました。

  私はお雛様飾りの中ではやさしいぼんぼりの灯りが大好きです。
  この芭蕉の句「雛の家」からこぼれてくる仄かな明かりが幸せそうでたまらなく
  心打たれるのです。

                      s・y
                                            

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