
春の女神さまのいたずらでしょうか。
降っては解ける淡雪だとロマンチックだけれどもう少し
積もったようですね。
遥か万葉のむかし、大伴旅人宅で催された観梅の宴では
白梅の美しさを愛でつつ冬に別れを告げ春を迎える喜びが
そこに集った三十二人の人々によって梅の連歌に詠まれました。
我が園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れ来るかも 旅人
万葉の春を告げる花は梅であり、男たちはその枝を頭にかざしたり、
袖に挿したりまた、花びらを盃に浮かべて楽しんだそう。
ももしきの大宮人は暇あれや梅をかざしてここに集える 万葉集
「花は梅」が「花は桜」に変わって行ったのは平安時代になって
からでありましょう。
しかし、梅は花の兄なりと伝えられるように、未だ凍える大気の中で
ひっそりと一輪一輪、つぼみを膨らませてほのかに香り、春を白に紅に染め上げて
いきます。梅はまさに日本の大切な「花の兄」なのです。
ふる雪にいづれを花とわきもこが折る袖にほう春の梅ヶ枝 順徳天皇
今日の一枚 「しら梅」 岩田専太郎 木版
木版美人名作撰
春の襲の色目 梅 表(白)花の色 裏(蘇芳) 幹や枝の色
ここ、北国に梅の花が匂い立つにはあとふた月、ゆっくりと春の鼓動に耳を澄ませて
時を待つ心を大切にしたいと思います。
白雪に覆われた山や街が密やかに春色に染まって行くのを見逃さないように。
