白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

三種の神器~ 夏仕様

2012-07-27 | 画廊の様子
陽が沈んで辺りに夕闇が降りてくると肌にまとわりついた汗も
引いていきます。
さっと行水を済ませて着替えをするとお嬢様は早速おめかしに
かかります。
美しい布を縫い合わせた豪華な小袖にあでやかな帯を
結びます。
髪に櫛を入れお気に入りの兎の餅つき模様の髪飾りを挿しました。
大好きな桜の花びらを散らした団扇を持つのももどかしく、螢籠は
どこなのと可愛らしい指で紐をたぐります。
この三つはお嬢様の必須アイテム、涼風を呼ぶ小道具です。


さておめかしは完成!お嬢さまはどちらへお出かけですか。

かごからほたる一つ一つを星にする  井泉水

今日の一枚の繪  真美人三十六枚揃 「娘姿」木版
         橋本周延 1838~1912

☆「真美人」は橋本周延=はしもとちかのぶの最高傑作です。

☆ 橋本は華奢な姿、卵型の顔で周延美人スタイルを創り出し、
  浮世絵の最後を華やかに飾った明治の画家です。

☆ 浮世絵版画の絵師、彫師,刷師の精巧な職人芸が消えようと
  している現代に危機感は拭えなく、木版画の伝統技術により
  復元、復刻しその伝統技術を再興しようと試みた企画で
  昭和52年にそれぞれの優れた技術を持った職人の方々に協力
  していただき実現した木版美人画集「明治の女」の一作品です。

アザミ、ひこうき、葉っぱの模様~おばあちゃんが縫ってくれた
私の浴衣…まだあります。笑 s・y

Milky Way

2012-07-07 | 画廊の様子
今日は七夕まつりです。朝、お天気はどうかしらとそっと目を開けると
カーテンの隙間から朝の光がいっぱいにあふれていました。
きっと星祭りになるわといそいそ仕度をしました。
七夕さまにちなんでのお菓子を焼きました。
名前はmilky wayとつけましょう。

私の恩師、治子先生が焼いて下さった想い出のお菓子です。
先生は夏休み、冬休みには自宅で勉強会を開いて必ずこのお菓子と
熱い紅茶を用意して待っていてくださいました。
なんて美味しいのかしらといつも感激していました。
こんなの簡単よと微笑んで、真っ赤なマニキュアの指に細いシガレットを
挟んで良い匂いの白い煙を燻らせておられました。
私も治子先生のような素敵な大人の女性になりたいと憧れていましたが、
それは二十歳の頃の夢になってしまいました。

けれどこのお菓子、ジンジャーブレッドは焼けるようになりました。
二十歳の夢の一かけらです。

今日はちょっとおしゃれにキラキラ砂糖で飾ってみました。

今夜は空のお星になった先生とお話ができそうです。
楽しみです。
                  s・y

今日のお菓子「milky way」 白珠画廊のspecial cakeでした。はい、どうぞ。


美少女コンテスト

2012-07-06 | 画廊の様子
あやめ、かきつばた、はなしょうぶはいづれも日本の誇る名花です。
それぞれ菖蒲、杜若、花菖蒲と言う文字を持っていて、いっそうその姿が
美しく演出されています。
この花たちにはその美しさにまつわる哀しい物語が伝えられています。

業平を慕う恋人杜若姫は旅にでた彼を追って行ったけれど
その姿を見失ってしまいこの橋の下に身を投げたと言う悲恋物語の舞台、
三河八橋は今も姫の化身とも思われるかきつばたの名所になっています。
室町時代のこんな物語もあります。
源頼政は怪物、ぬえ(鵺)を退治した褒美としてかねてから
噂に聞いていた美女、あやめの前を賜ることになりました。 
何人もの美女の中からあやめの前を探しだせと言われて困り果て
    五月雨に沢辺のまこも水たえていづれあやめと
         引きぞわづらふ
と歌を詠んだそう。
ここから~いづれあやめかかきつばた~と言う美女を比べるときに
使う決まり文句が生まれたとか。
あやめ、かきつばた、はなしょうぶは甲乙つけがたいよく似た姿で
美しさを競い合う美女たちです。

歌舞伎の京鹿の子娘道成寺の第六段、花笠踊りで唄われるわきて節は
古くからの民謡で~あやめ杜若はいずれ姉か妹やら、わきて言われぬ
花の色ェ、さよえ、かわゆらしさの花娘~とあります。

美人の定義はつけにくいものですがいづれにせよその時代の人々の
感性によって決められるものなのでしょう。

今日の一枚の絵  「遊歩がしたそう」 月岡芳年 風俗三十二相
                    明治風俗  木版    

浮世絵風の面立ちと日本髪に華やかな帽子、鹿鳴館風のドレスを
纏い、花菖蒲の庭園に佇む上流階級の女性は画家が描いた新しい
近代美人の理想像でありロマンあふれる文明開化の象徴でもある
のでしょう。

さて、今風の美人てどうなの?
個性が美を創り出す時代?
すると周りには美人がいっぱいいるわけね。
だから…わたしは…つまり目に見えない美、
心の中で誰にも証すことのない美しさを競っていくことにしよう。
今日から明るく生きて行こう。
                 s・y

 札幌市の月寒にある八紘学園花菖蒲園は七月半ばまで
 開園公開しています。