白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

役者色

2018-07-23 | 画廊の様子
今日から夏の最後の節気「大暑」です。極熱の盛んなる時、季節は正しく
廻って来て、お昼のニュースでは関東地方で観測史上最高の41度を
越えたそうです。耐えられない蒸し暑さ、心からお見舞い申し上げます。

散歩道の土手の茂みに真っ白な十字の花の群れを見つけました。
どくだみ~十薬、なんて清潔な姿でしょう。
濃い萌黄色~深い夏の緑の葉の重なりの隙間を縫って風が通り抜けると
七色の紫陽花がゆらゆら右へ左へ。雨をたっぷり吸い込んで美しい様々な
違いの茶色に染まった地面を黄金色の陽の光が温めています。

水や土、樹や葉や花、実、自然の中にある様々なものから名づけられた
日本の色名は美しくゆかしくあります。

今日の一枚の絵  役者絵  錦絵  豊原国周 「団七九郎兵衛」 木版
                  
              九代目 市川團十郎 四代目 沢村源之助
         興行名  「花菖蒲慶安実記」 明治16年         
         外題   夏祭り浪花鑑  
                     
歌舞伎の舞台を覆う定式幕は勢いのある太い縦に並んだ黒、柿色、濃き萌黄で
なんとも粋で力強い色合いなのです。

お江戸のスター、アイドルは歌舞伎役者で彼らの身に着けるものは髪型、衣裳、
アクセサリーなどたちまち大流行しもてはやされました。しかし、江戸の中期
からは度々奢侈禁止令が出されて庶民の暮らしの全てに厳しく制約が課されました。
地味で洒脱で粋な江戸の文化がここで生まれました。
お茶の葉を煮出して作った茶色は厳しい制約の中で様々なニュアンスの色が工夫して
世に出されました。團十郎茶は代々の團十郎が狂言の衣裳に使った茶色で柿渋と
弁柄~土を焼いて作った顔料~で染めた色です。四十八茶百鼠という言葉もあります。

今日の一枚の絵 くにちかの團十郎は粋で洒落た柿渋茶(團十郎茶)の格子柄は
素敵ですね。江戸っ子が憧れるのは無理もねえ!

私は海老茶が好きです。明治の女学生たちの袴姿素敵ですもの!
もち!海老さまもね!       s・y