白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

見上げてごらんよ

2011-10-09 | 画廊の様子
松の木や楢の木の林の下を深い堰が流れて居りました。
‥‥‥ カン蛙、ブン蛙、ベン蛙の三匹は年も大きさも同じくらいで
生意気でいたずらものでした。
ある夏の暮れ方、三匹はカン蛙の家の前のつめくさの広場にすわって
雲見ということをやって居りました。‥‥‥これは宮沢賢治の
「蛙のゴム靴」というおはなしのはじまりです。
蛙たちは見事に金色に輝やく雲の峰を眺めるのが大好きなのです。
蛙のおめめは上を向いていて空を見上げるのが便利なのでしょうか。
雲が蛙の頭や春の卵の形になったり金色に光ったりするのが
楽しいのでしょうね。
私達、人間は月見をします。今夜は十三夜ですね。日本のお月見です。
まだ少し欠けていておちゃめなお月さまです。

賢治のたくさんのおはなしの中には風やきらきら輝く陽の光や
水や雲が優しくも恐ろしくもあふれています。

「これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野原や鉄道線路やら
虹や月明かりからもらってきたのです。」と賢治はおはなしの
はじめに述べています。

賢治が生まれた年の前後に三陸沖で大きな地震と津波が起きました。
その死の半年ほど前にも大きな地震がありました。
今年の大きな災害を彼が生きていたらどんなふうに受け止めたでしょうか。
イーハトブの海岸は彼が深く愛した三陸海岸です。

彼は「世界の幸せなくしては個人の幸せはない」と言い切りました。
若き日に親友と皆の幸せのために生きると誓い合いました。

月や雲や風や光を感じながら人を世界を地球を愛することを
大切に生きたら、ほんとうのしあわせがいったいなんであるのか
わかるのかもしれませんね。

                    s・y