白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

ほたるの宿

2016-07-08 | 画廊の様子
 小暑の最初の候は温風至~あつかぜいたる~夏の暑さがいよいよやって来る時節に
なりました。
煌く星たちに無性に逢いたくなるのは夏ですね。
子供の頃に見上げた夜空の大きさ、美しさを今でもはっきりと心に描くことが出来ます。

夜空に散りばめられた無数の星たちと漆黒の谷間を舞う地上の星たちの群れは闇と光が
創りだすファンタジー。

蛍が飛び交うファンタジックなスポットがあるそうな。
北上高地、お話の郷の遠野市の西のはずれの奥深くにある早池峰神社の境内、うっそうと
茂った木立、今は人々も訪れることのない境内の草叢に蛍の群れが棲むという。
蛍は水、土、空気の清らかな場所にしか棲息できないのです。
早池峰山は霊峰とされていて、亡くなった遠野の民の魂が沢の水で清められ山の峰を伝って
天に昇って行くと信じられています。
それはまた、蛍が舞っているようだと。

美しく舞う蛍、哀しい恋に身を焦がす蛍、子供たちと戯れる蛍、亡くなった人の魂の形として、
蛍は昔々から物語や和歌、詩歌、小説に様々な姿で登場してきました。
蛍は「火垂る」とも表して人の心に灯りを点してくれる優しい生き物です。

今日の一枚の絵  「ほたる」 宮下柚葵   肉筆

 実は私、未だ蛍を見たことがありません。
 星屑の降る街、蛍が飛び交う街、遠野の外れ,蛍の宿の夏をいつか訪ねてみたいと
 夢見ています。     s・y

宮沢賢治は遠野の種山高原から眺める星空をこよなく愛したということです。

         星めぐりの歌
  1 あかいめだまのさそり      2  アンドロメダのくもは
   ひろげた鷲のつばさ        さかなのくちのかたち
   あおいめだまの小いぬ       おおぐまのあしをきたに
   ひかりのへびのとぐろ       五つのばしたところ
   オリオンは高くうたい       小熊のひたいのうえは
   つゆとしもおとす         そらのめぐりのめあて
                             宮沢賢治