白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

恋しくば尋ね来てみよ~

2014-11-07 | 画廊の様子
今日は二十四節気の立冬「地始凍」、冬隣りに安心しては
いられません。
小春日和と時雨る日がかわるがわるに来てお相撲を取っています。
ほんの二三日前、夜のうちに初雪が降りてきて、山の頂上から
街の隅々まで薄化粧をして行きました。
散歩道に吹き寄せられた落ち葉が氷の下できらきら輝いていて、
そうっと踏み出した足元から錦の衣の衣擦れのような幽かな音が
追いかけて来ました。
西洋の人々はシャンソンに歌われるように枯れ葉に心を寄せ、
日本人は燃えるような木々の紅葉、山一面の照葉に生命の終わりと
再生のエネルギーを見出して、これを紅葉の美学として遥か古代から
持ち続けて来ました。



絵師 三代豊国(1786~1864)の錦絵 「葛の葉}
     歌舞伎舞台の役者絵 
      葛の葉  四代目 中村芝翫(1831~1899)     
      安倍保名 河原崎権十郎後の九代目 市川團十郎
                   (1839~1903)

「葛の葉」~葛の葉狐、信太妻、信田妻~ 伝説
     安倍保名は信太の森で狩人に追われていた白狐を助けた折に
怪我をしてしまう。葛の葉と云う少女が現れて介抱してくれるが
いつしか二人は結ばれて男の子が生まれる。この子は童子丸と
名づけられ五才になった時、母親の葛の葉はあの白狐であった
ことを知られ、歌を一首書き遺して信太の森に帰っていく。
 
    恋しくば尋ね来て見よ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉

保名と童子丸は葛の葉に逢いに森へ向かい、水晶の玉と黄金の箱を
受け取る。
童子丸は後の安倍晴明で陰陽師、天文博士になったということです。

百年以上の時を経ても色褪せない鮮やかな錦絵の中に日本人の
真の心が宿っているのですね。
 
この「葛の葉」は昨年の七月の歌舞伎鑑賞教室で中村時蔵さんが
その公演を前にテーマとして講師をしました。  


 これはおまけです。散歩道で出会ったヒースの群れ、
 スコットランドの花です。まだ可愛いつぼみが秋風に
 吹かれてにぎやかでした。 s・y