白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

ゆきのあさ

2012-11-26 | 画廊の様子
ふんわりと軽やかに雪が降っています。
ふーうつと吐いた息が頬を温かく包みます。

今日はペンの日ですって。
昭和10年に日本ペンクラブとして誕生しました。
初代会長はかの島崎藤村です。
ペンの日ということでペンを走らせるのではなく
キーを叩く・・のでもなくて軽く弾いてみます。

一年12ヶ月、旧暦ではそれぞれの月の呼び名は山ほどあります。
新暦でもひと月ほどの季節のずれがあるけれどそのまま使われていて、
日本の四季の美しさが一つ一つの名前に豊かに映されています。

よく使われている11月の和の月名は霜月、ほかにもたくさんの和名を
持っていて雪見月とか雪待月とも呼ばれその由来はそのままに
趣深いものがあります。

雪を待つ、降る雪を見る、雪を踏む。
手のひらに消えていく雪、白く吐く息、真っ赤な鼻の頭、大きな長靴、
凍った毛糸の手袋、次から次へと言葉の追いかけっこが止まらない。
懐かしい日々~清潔で熱くて真っ直ぐな子供の頃。
帰りたい。
そうしたらあなたに会える。
ね、お母さん。
思ってみるだけですもの、良いでしょう?
                 s・y

今日の一枚の絵  「ゆきもよい」 鈴木春信  江戸中期の浮世絵師
手足の細い小柄な美人を描きシックな色彩のロマンチックな画風
                        手刷り木版
         
           二十四気  小雪 虹蔵レテ見エズ 

雨ニモマケズ

2012-11-14 | 画廊の様子
 今年九月、詩人宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の詩を画家つかさおさむ氏
~司 修~が絵本にしました。
この詩の一つ一つのフレーズに一枚づつ、白地にブラックの
フエルトペンで賢治の物語の世界がデフオルメされて少しコミカルに
描かれています。
つかさ氏はこれに色を入れて自分だけの絵本「雨ニモマケズ」を
完成させて下さいと本の帯に添えています。

東日本大震災での避難の最中、ある小学校の女の先生が子供達と寒さに
震えていた恐怖の時間、この詩が心に浮かんできてみんなで口ずさんだと
ききました。
東北の人々は賢治を尊敬の念を込めて賢治さんと呼んでいます。
あれから被災地の様々な場所でこの詩が朗読され、それが
世界中に静かに広がりつつあります。

賢治は百あまりの童話とたくさんの詩そして自ら作曲作詞をした歌を
残しました。
それらは彼が生涯愛してやまなかった故郷の自然から拾い上げた
美しい宝石のような言葉で語られています。
岩手山から吹き渡って来る風、小岩井農場の青い牧草の匂い、黒く輝く大地、
北上川のせせらぎ、夜空を旅する銀河、そこに暮らす人々や動物たちは
不思議の人宮沢賢治を壮大なロマンの夢追い人に育て上げました。
「雨ニモマケズ」は賢治亡き後に彼のトランクのポケットから偶然に
発見されました。
賢治がその短い生涯の中で探し続けていた目標は何だったのでしょうか。
誰にも証さずにひっそり仕舞っておいた彼の祈りのようなこの詩は
今、力強いメッセージになって広い世界に語り始めました。
世の中のすべての人が幸せになるように尽くすと少年の日に心に
誓った彼の魂は生き続けていると思います。

つかさ氏のこの絵本には左のページに詩のフレーズが書かれていて
右のページの絵のなかにはもう一度このフレーズの文字が繰り返されて
います。

色を入れて仕上げると、きっとステンドグラスのように深い輝きが
出てくるのでしょうね。

わたしはしばらくこのままにしておいてこの「雨ニモマケズ」を
そらで口ずさめるようにしっかり心に刻みたいと思います。
                   s・y

今日の一冊  「雨ニモマケズ」 詩・ 宮沢賢治
                絵・ つかさおさむ
                    偕成社