白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

いとをかし 

2010-10-25 | 画廊の様子
静かに暮れた庭のそこだけがほの明るいのです。
なんとも言えずに美しいのです。

いつか種が飛んで来て芽を出し根を降ろした
五本の白樺の若い樹がすくすく育っています。
もうすぐ家の二階の窓に届きそうです。
今年もそのしなやかな枝を伸ばし緑の葉をいっぱいに広げて
影を作り涼やかな風を運んできてくれました。
この夏の暑さからほんとうによく我が家を守って
くれました。


白樺は卵形の葉っぱでぎざぎざの縁があり柄が少し長いので
小さな風にもひらひらと舞って光と影をつくります。
深い夕暮れ時、白樺の群れは銀色に輝きあたりを
ほんのり明るくします。

イギリスのある詩人は the Lady of the woods と白樺を讃えました。
また、 The birch, most shy and ladylike of trees と
美しい言葉で語った詩人もいます。

夕暮れの庭、美しい五人のladyたちに逢いに行きました。
黄色の夕日に染まって一人ひとりが輝いていました。
Wardsworthは夕映えに輝く白樺を見ることはなんと
楽しいことかと歌いました。

「秋は夕暮れ」と讃えた清少納言はなんと返すのでしょう。

朝のひんやりとした佇まいの庭、小さな綿虫がひとつ、
ふたつ、ふんわりと黄色い樺の葉っぱの中から飛んで来ます。
体の芯はるり色で真綿の様な羽をふるわせているのはいと
をかし
            s・y

まもなく雪の花びらが降ってきます。




マニキュア

2010-10-12 | 画廊の様子
美人画に描かれた女性の指先が語る心模様はなんと
豊かなのでしょう。その一瞬の表情を捉えたロマンチシズムは
日本の芸術の宝物です。
女性を美しい理想像としてだけではなく、そこには指先で髪を
そっとかきあげる色香漂う女性や我が子にやさしく手を差し伸べる
若い母、力強く自信に満ちて巧みに指先を操る大人の女性達が
描かれリアリテイを以って観る私たちを惹きつけます。

優しい仕草や指先の優雅な動きはそこからこぼれおちる
ほどにたくさんの美しい言葉を創り出しています。

お日さまに手をかざしてみました。
親指、人差し指、中指、薬指、小指の間からきらきらと
光があふれてきます。
幼い日、ほっそりとした慎ましやかな手のひらやしなやかな
白い指先そして貝殻のような可愛らしい爪先に憧れていました。
紅い鳳仙花の花びらをもんでその汁を爪にぬりました。
紅いマニキュアの出来上がりです。
指先にぽうっと染まった紅色は少しどきどきして一つお姉さんに
なった気持ちがしました。    s・y

懐かしい友、美人の祐子さんからの葉書に添えられていました。
    つまべにや夢に夢見し少女の日  祐子
                       つまべに=鳳仙花                       
   
    今日の一枚 「天保歌妓」  上村松園  シルクスクリーン