白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

A Season for Everything

2010-06-13 | つれづれ
  見渡すと黒土の畝がどこまでもこの広い大地の向うに伸びて行きます。
  畑と畑の間に心地よい散歩道が一本まっすぐに走っています。
  青い風が東の畑から渡って来て木々の枝を揺らし光輝く風景が
  ここにあります。
       
  芽吹きを促すやさしい雨と光を注ぐ太陽、命を守る大地が豊かに
  備えられています。

  五月、種を蒔く時です。
  この道を歩いていると汗を滴らせて働く人たちの力に満ちた姿に出会います。

  六月、蒔かれた種は弾けてふくらんで、両手をいっぱいに広げた若苗に成長し
  緑の風に吹かれています。
  大きく一人前になるにはまだまだ自然の大きな恵みと育てる人の共同作業が
  なくてはなりません。良い結果はすぐにはやって来ないのです。

  どんな花を咲かせてどんな実を結ぶのでしょうか。
  収穫の時はまだ誰にもわかりません。  
  
  その「時」が満ちるのを必ず何かが整え教えてくれるはずです。
  人は静かにその時を待たなければなりません。
  
  悲しくも、慌て者の私、今までの人生においてその「時」をすべてはずして
  おります。
 
  私はこの元気な緑が育つ畑の散歩道を歩いているといつも、美しい「時」が刻まれて
  いるのを感じます。
  そして、そこに働く人々と私自身にも次のような詞をおくりたくなります。
  
    涙と共に種を蒔く人は喜びの歌と共に刈入れる  詩篇 126.5
      
        ~バビロニアの捕囚の民が解放され祖国イスラエルに帰る時のことを
                               歌った詩~
                         

                            S・Y

わつぷる。

2010-02-11 | つれづれ
「その手の甲は わつぷるのふくらみ」
萩原朔太郎の詩『その手は菓子である』の一節です。

恋人の手をうたったこの詩の“わつぷる”とは、何のことだと思いますか?



 そう、ワッフルです。

きっと朔太郎の恋人は、小さくてふっくらとした優しいかわいらしい
手をしていたのでしょう。
女性の瞳や唇を美しくうたった詩は数知れずあります。しかし、これほどに
手を愛らしくうたった詩は他にはないように思います。

ふわっふわのアメリカンワッフルを焼きながら、ふとこの詩を思い出し
ました。

詩ではありませんが、東郷青児画伯の絵はどれも細かな手の仕草が
丹念に美しく描かれているように思います。
東郷画伯の絵は唇や睫毛がとても愛らしいのも特徴のひとつですが、
手もとても美しく優雅なのです。


今日は東郷画伯の絵を眺めながら、わつぷるで珈琲タイムを楽しみたいと思います。
                           
                        Ruri    

春来むと人は言へども‥‥‥

2010-02-02 | つれづれ
節分の次の日は立春です。

旧暦は月の満ち欠けを基準としているので、その年によってはお正月を迎える前に先に立春が来ることがあるのです。
それを「年内立春」と言います。まさに今年2010年は「年内立春」。


  年の内に春は来にけり ひととせを去年(こぞ)とや云はむ
                     今年とは云はむ  在原元方
  
この和歌に詠まれているのは「年が明けてからの立春に比べると、年内立春は春らしさをあまり感じないなぁ」「立春と言われてもいまいちピンとこないなぁ」といったような気持ちが感じられます。


では他の平安時代の人々の春に対する想いはどうでしょうか。


   春来むと人は言へども鶯の
             鳴かぬ限りはあらじとぞ思ふ  壬生忠岑
   
「鶯の声を聞くまでは春だなんて思えない!!」といった少しやんちゃとも言える、春を待ちわびる積極的な心が詠まれている様に思います。


お正月、そして立春‥‥‥と順序立ててゆったりと季節を楽しむ優雅な心。
春告げる鶯の声によって季節を感じよう、待ってるぞという心意気。
どちらも春を待つ心であることに違いはありません。

もう如月です。
京都の梅は今が一番の見頃なのだと、学生時代に先生から教えて頂きました。
それからというもの毎年二月になると、梅の花を詠んだ和歌について先生とお話ししながら梅の開花のニュースを待つのが楽しみでした。
先生は忠岑のように「京都で梅が咲いたと聞かないうちは、春が来たとは思わない!!」そんな気持ちで梅の花を楽しみにしておられたようです。

わたしは先生に倣って、「梅はまだか」と少しやんちゃな心で春を待つことにしましょう。


 岩田 専太郎 『しら梅』     
                               Ruri





朝の光

2010-01-01 | つれづれ



明け方のラジオの気象情報が耳に残っていたのでしょう、恐る恐る目を開けるともう、清々しい光が射し込んでいました。
静かな元日の朝です。

あけましておめでとうございます。
今年もみなさまに喜んでいただける画廊に育つよう、さらなる日本の美を学んでいきたいと思います。
どうぞ宜しくご指導とお力をいただきますようにお願いいたします。
                                
今朝、降り積もった美しい新雪のような心を持って一歩を進めていきたいと思っています。

静かな美しい地球の上に優しい人々が暮らす豊かな世界を目指していくことが
出来ますように。

みなさまが健康でお幸せでありますようにお祈りいたします。  s・y                                                                     
                             

                              

蛇の目

2009-12-09 | つれづれ
 お料理用の日本酒を買った時に、おまけでついてきたお猪口です。

このお猪口は利き酒に使うもので、通称“蛇の目”と呼ばれるものです。
白地で、底面に紺色で二重丸が描かれたものをそう呼びます。

この“蛇の目”の二重丸について少し調べてみましたら、面白い使い方をすることがわかりました。

利き酒をするときは、まず、この蛇の目に八分目までお酒を注ぎます。
そして、白地の部分で色を見ます。
 青みがかったものは新しいもの。
 黄色みがかったものは古いもの。
 赤みがかったものは鉄分を含んでいるので良くない
という判断をするそうです。

次に白地と紺色との境目で透明度を見ます。
 透明度が高いものは炭素による濾過率が高いため、淡い風味のものが多いそうです。

お酒を頂く前に、ちょっと二重丸でチェックするのも楽しそう‥‥‥。
舌で味わう前に、目で楽しむ。そんな感じでしょうか。

さて、今日のお酒はどんなお酒でしょう?

                             R・Y

☆Thanksgivingday☆

2009-11-26 | つれづれ
今日は11月の第4木曜日。感謝祭です。
秋の収穫を神様に感謝する日なので、朝から張り切って考えたメニューは‥‥‥


☆鶏の蒸し焼き
☆キノコのパイスープ
☆かぼちゃのマッシュ
☆梅ご飯

シーズニングスパイスとオリーヴオイルをたっぷり揉みこんだ鶏。
パイ皮のお帽子を被ったキノコのスープ。
にゃんこの形に盛り付けた、かぼちゃのマッシュ。(干しぶどうでおめめとおハナを付けています)
梅漬けをたたいて、炊きたてのご飯に混ぜた梅ご飯。

メニューを考えるのも、お料理するのも盛り付けるのも、思いきり楽しんだThanksgivingdayでした。
秋の実りを神様に感謝するのはもちろんのこと、実りをお料理する楽しみも与えられていることにも改めて感謝する一日でした。

                           R・Y

キュートな和小物。

2009-08-26 | つれづれ
お気に入りのお店で購入したかわいいお重。

風呂敷で包んでももちろん良いのですが、
使わない時のケースも兼ねた、自分らしいものを
手作りしました。

色彩はさんざん迷って母に相談。
「イメージは手鞠のような感じで、水色は絶対入れ
たい」とリクエストし、水色とオレンジにポイントとして赤。

イメージ通り、手鞠のようなキュートな仕上がりです♪

さて、この週末はこのお重に何を入れておでかけしましょうか。
散らし寿司?おはぎ?
考えるだけでウキウキします。

そしてそして…お気に入りのものをひとつ編むと、すぐ色違いを
編みたくなってしまいます。(欲張り!!)
今度はどんなイメージの和の色彩にしようかしら???

画廊で絵を眺めながら、色彩のアイディアが次から次へと
浮かびます。

さて、お次はどんな和小物をご紹介できるでしょうか…?


R.Y☆彡

御宿かわせみ

2009-07-24 | つれづれ
毎週月曜日 朝10:05~NHK総合テレビで再放送されている「御宿かわせみ」。
わたしが毎週こよなく楽しみにしているドラマです。

江戸の大川端にある小さな旅籠“かわせみ”。そこに投宿する様々な人々を巡って起こる事件の数々…。
事件の渦の中に巻き込まれながら、宿の若い女主人るいと恋人の神林東吾の二人の絆はしっかりと結ばれていきます。

おるいさんと東吾様の恋模様ももちろん気になるところですが、一番楽しみなのは、おるいさんのお着物と簪です。最近の放送で着ていた藤色のお着物が、高島礼子さん演じるおるいさんによく似合っていました。島田に結った髪に挿した珊瑚の簪も華を添えていました。

おるいさんは気品があって美しくて、でもとてもかわいい女性で(おきゃんなところもあるのです)とても魅力的な女性です。焼きもち妬きなところもかわいらしくて好き。

『御宿かわせみ』の原作を常に手元に置いたり、画廊の美人画を見るときにはおるいさんと重ねたり・・・周りのありとあらゆるものをかわせみと関連づけてしまいます。

そんな中で、おるいさんみたい…といつも思いながら見ている絵を一枚ご紹介します。
上村松園の「若葉」。
東吾様の訪れを待つおるいさん・・・。
「待つ嬉しさ」。そんな思いが描かれているように思えます。


☆R・Y☆

珈琲たいむ

2009-07-15 | つれづれ
近頃、ミルで好きな豆を挽いて珈琲の香りをゆっくり楽しんでいます。

「珈琲」と書くと、「コーヒー」と書くよりも、なんとなく香ばしいような美味しそうな感じがしませんか?
「コーヒー」には「珈琲」以外にも「可否」「可非」「骨非」「骨喜」など色々な当て字があります。

中でも一番使われているのは、蘭学者の宇田川榕庵が使い始めた「珈琲」ではないでしょうか。

榕庵は[女性の髪飾り]の意味を持つ「珈」と[玉を通して連ねた飾り]の意味を持つ「琲」の字を用いて、赤い実がたわわに実るコーヒーの木の様子を表したとのことです。

何気なく使っていた「珈琲」の字には、そんな素敵な意味があったことを最近知りました。
ますます珈琲たいむを楽しめそうです。

最近のわたしのお気に入りの珈琲は、大和屋さんの“マハラジャ”。
大和屋さんには他にも“クリスタルブレンド”“サントスピーベリー”など、美味しい珈琲があります。
その他にも素敵な和の器や和小物を扱っており、美味しい珈琲を試飲しながらゆっくりお買い物をすることができます。
美味しい珈琲を頂きながらの“和のこころ”探し、おすすめです。


★☆★大和屋  札幌月寒店★☆★
札幌市 豊平区 月寒東2条16丁目2番15号
(011)857ー8511

★☆★大和屋  札幌西町店★☆★
札幌市 西区 西町 南7丁目2番31号
(011)665ー8111



R・Y

しらたま。

2009-07-13 | つれづれ
わたしの大好きな古典文学のひとつに『伊勢物語』があります。

好きな和歌や説話がいくつもありますが、なかでも一番好きなのが
「芥川」の段です。


昔むかし・・・
ある男が、さる高貴な姫君に恋をします。想いを抑えきれずに
姫君を連れ出し、夜道を逃げます。芥川という川を渡った時に、
背負われた姫君は男に問います。
「あれはなぁに?」草の上に輝く夜露でした。
屋敷の中で大切に育てられた姫君だった為、恐らく初めて見た
光景だったのでしょう。
その後、心配して追って来た兄達によって姫君は連れ戻されてしまいます。

実らぬ恋を悲しんだ男が詠んだ歌が
「しらたまか なにぞとひとの問ひしとき 露と答へて消なましものを」
(「あれはなぁに?真珠?」とあなたが聞いた時「露です」と答えて
わたしも一緒に露となり、はかなく消えてしまえば良かった)

夜露を知らずに「あれはなぁに?」と訊ねた姫君の無垢な愛らしさは、そのまま
“しらたま”=真珠のようです。


真珠は古代から“月のしずく”“人魚の涙”と呼ばれ、世界各地で珍重されてきました。
わたしは“しらたま”との呼び名が、純粋な愛らしい姫君のようで真珠には一番ふさわしい
呼び名のように思います。

古典文学を詠んでいると、いろいろな古い言葉に出会います。まさに“和のこころ”です。
現代小説も古典文学も、どちらも楽しめるのは現代に生きるわたしたちの特権とも言える
のではないでしょうか。

古典文学の中で、色々な“和のこころ”探してみませんか?

☆R・Y☆