白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

こころの扉

2012-03-21 | 画廊の様子
梅の花がほころびかけた、ある春の日のこと。お父さんの
お弁当を届けに行く途中、小梅は一人の学生さんとすれ違いました。
         LOTTE 「小梅ちゃん」より

頬に一つ「小梅ちゃん」を放り込んでころがしていくとあめ玉が
三つの味に変わっていきます。
十五の小梅ちゃんと真さんの初恋物語が甘酸っぱく口の中に広がります。
小梅ちゃんはどんな女の子?
そう、小梅ちゃんは明治生まれの十五才、東京は小石川育ち、
お父さんの松蔵さんは粋な植木職人、お松と竹子ちゃんはお姉さん。
早くにお母さんを亡くしました。
小梅ちゃんはどこから見ても愛らしい少女です。
前髪をまっすぐに切りそろえてきゅっと結い上げたおだんごに
梅の花のかんざしを挿しています。
趣味はかんざし集めです。
お母さん代わりのお料理が得意です。


これは二人の女性作家がストリイを展開し画家の林靜一氏がイラストを
担当して1982年からロマンあふれる絵と物語でLOTTEのキャンディの
パッケージを飾っています。

時を経て淡い恋が大人の恋に変わっていくことは何時の時も同じです。
         振り分けの髪を短み春草を髪に束くらむ妹をしぞ思ふ
                       万葉集 詠人知らず

一粒ひとつぶのキャンデイのパッケージには胸きゅんの恋のフレーズが
ファンから寄せられていて想い出の扉をくすぐります。fu、fu、fu

あふれだす想いはぜんぶ君のもの
 会いたいなあなたが通るこの道で
 君さがすそれが私の日課です

若くて硝子細工のような思いが愛しく思われます。
恋の行方は放っておいて、さあ、心の扉をいっぱいに開いて
春風を迎えましょう。    s・y

今日の一枚    林靜一  「春子」  絵葉書
           かんざし とんぼ玉  padmin                 





乙女たちはピンク色

2012-03-02 | 画廊の様子
お雛様の緋毛氈のだんだんにはもう何日も前からぼんぼりやら
ひなあられ、お白酒、菱餅、桃の花がそれぞれのお役目をしっかりと
守ってお節句のその日を待っています。
中国では古代から桃の木は邪気を祓う仙木として信仰され、その霊力を尊ばれて
三月には桃の花の流れる水を飲んで穢れを祓う行事があったということです。
これが日本に伝わり古くには桃の実の力で鬼退治をしたというような神話が
残っているそうです。
桃の実は多くの病の薬とされ、桃湯や桃花酒としてまた葉っぱは薬茶として
今も大切に使われています。

桃はその花の美しさ故に中国の古書には嫁ぎゆく娘の姿に例えて「桃の
灼灼たる、灼灼たるその華」と讃えられているそうです。

春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出でたつ少女  家持

桃の花の匂い立つ華やかな春の庭に佇む少女は紅に染まっていっそう輝いて見えると
まるで絵筆を持って描かれているような歌です。

女の子の行く末に幸せが限りなく待っていてくれるように祈るのは今も昔も
親心は同じですね。

明日はそのひな祭り、供えられた菱餅は人が生きていくための神様からの最高の贈り物、
「心」の形に型どられた心臓…ハートです。
これも娘の長命を願う親心の現れでしょう。

ピンク色の乙女たちのためにそして我が子にも永遠に桃の花びらのような香りとその頬と唇に
紅の色を湛えた女性であってほしいと願いを込めて雛の膳を調えようと思います。

襲の色目 「桃」 表 薄紅(ピンク)匂う桃の花  裏 萌黄 新芽
                                s・y

今日の一枚    「ひなまつり」 竹久夢二   リトグラフ