白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

生まれは津軽のおひめさま

2012-08-06 | 画廊の様子
あつ~い暑い夏の日にも元気にお池の中を泳いでいる金ととちゃんは
紅いおべべとお昼寝が大好きなやんちゃ姫。
津軽のお城で生まれたの。
大事にだいじにお育ちでプリンセスネームは津軽錦ですって。

八月、日本中はお祭りで大賑わいです。
中でも巨大で勇壮な火祭の青森ねぶたは歴史と伝説と物語が
力強く描かれた姿で世界に誇れる祭りと言われ、重要無形民俗
文化財に指定されています。

この華やかで巨大な灯篭はさておいて、紅い金ととちゃんは
このお祭りには欠くことのできないねぶた祭りのヒロインです。

その昔、津軽のお殿様のお池に紅いおべべのお魚が
遠い上方からもらわれてきました。
見慣れないその姿に人々は不思議がり嫌な噂をたてました。
お殿様はこの噂を解くために竹で丸を作り、紙を貼り、紅く染めて
目に墨を入れ「これは幸せを呼ぶ魚」と子供たちに配ったそう。
それからはこのお魚は金運魚、金を運ぶ魚、幸せを運ぶ魚~
金魚と呼ばれて人々に愛されるようになったんですって。
めでたし、めでたし。

明治になってからは大きなねぶたが街々に巡って来るのを待つあいだに
この金魚灯篭を門口に提げて灯を点し、足元に盥を置いて水に映る
その姿を眺めながら短い夏を楽しんだということです。 

金ととちゃんはその時から数えて何代目でしょうか。
まんまるなお腹にあぶくをいっぱいつけて目と目がちょっぴり離れた
お茶目なおひめさまは末永く幸せを人々に運んで来てくれることでしょう。
そして人々にこれからもずっとずっと愛され続けることでしょう。

津軽のねぶた祭りは七日まで。

はつ夏に金魚の赤を点じれば翡翠の色に水は輝く   俵 万智

母は金魚を可愛がり「きんちゃん」「ととちゃん」と呼んで
長生きさせました。       s・y