眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

カレーライス

2011-09-18 | 
カレーライスという物は
 何度作っても適度な量が解らない
  独りなのに鍋いっぱい作ってしまう
   他に食べてくれる人も居ないので
    三日続けて食べて
     もうカレーなんか作るか、と不機嫌になる

      スパゲティーも似た感じがある
       空腹で倒れそうな時にビール片手に作ると
        茹で加減が曖昧だし
         カレーのように大量のディチェコの麺を茹でてしまうのだ
          大量のスパゲティーは味ポンで味付けして
           そのまま僕の食道を通り抜け
            胃袋に貯蓄される
             満腹中枢が破壊され
              もう、スパゲティーなんか作るか、と不機嫌になるのだ

              僕等が根城にしていたバーは
               かなり怪しいバーだったので
                飛込みで来る一見さんのカップルなど
                 店のドアを開いてたむろする僕等を見て
                  そのままドアを閉めて出て行ってしまう
                   僕等は皆汚しい長髪で
                    酒を飲みながら楽器を持って遊んでいた
                   やがて朝方になると
                  柔らかなソファーや冷たい床下で寝た
                 急に一人が起き出して
                寒い、と呟き店の外へ出て
               在るだけの雑誌や新聞や角材をかき集め
              店の横の電柱で火をつけて暖炉の代わりにする
             僕は警察が来ないか辺りを監視しながら
            ピースの両切りに灯をつけるのだ

           バーのマスターは一風変わった人物で
          胡散臭い夢物語を熱く語る人だったが
         この店で一番人気のカレーライスはやたらと美味かった
        仲間の一人が店のドアを蹴飛ばすなり

       マスター、カレー!

     と悪びれもせず注文する

    うちはカレー屋じゃないぞ
   とぶつぶつ云いながらマスターはまんざらでもなさそうだ

  ある深夜
 僕はバーの扉を開くなり

マスター、酒。

 と呟いた

  お、なんかかっこいいね。まるで此処がバーに見えるよ。

   意味不明な言葉を残し
    彼はジャックダニエルをロックで出した
     缶詰めのオイルサーディンとオリーブを出して
      おごりだ、どうせ何も食ってないんだろう?
       と笑いながらグラスを拭いていた

        あんたさ、食べないと。

         マスターは煙草を咥えながら僕を諭す

          酒と煙草で十分。カレーはマスターが味見してよ。

           そういう僕にマスターは不思議そうな表情をした

            この店のカレーなんて食べたこと無いよ。

              僕は驚いて彼に尋ねた

             味を見ないの?

            カレーは不思議と何を混ぜても大抵美味いんだ、
           不味いカレーが出来る可能性はゼロに近いのさ。
          そう云ってギターを引っ張り出し
         エリック・クラプトンを引き始めた
        僕は黙ってジャックを舐めていた

       そうして僕はカレーを作るとき味見をしたことが無い
      マスターの言葉を忠実に守っているのだ
     そうして独りで作りすぎたカレーを食べながら
    たまにあの店のことを想いだすのだ

   作りすぎたカレーの味と共に






                        

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