眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

手紙と切りそろえられた前髪

2012-06-04 | 
少女が口笛を吹いて僕は目をつむった
 風が緑の草原を走り
  僕らは黙ってアルコールを摂取した
   僕は古い友人の面影を想い
    何度もおどけて乾杯の挨拶をする
     長すぎる前髪を悪戯して
      遥か彼方の約束の地平を望んだ

      拒まれた優しさ
       虚像を捏造する工場の煙突の様に  
        想いは地上を徘徊する
         日常の愚鈍さに呆れ
          僕らは酩酊の時間を優雅にすごす
           コークにマイヤーズラムを入れ
            見慣れない評論家を無視し
             ただ永遠を想った

              ただ永遠を想った

              ね、
               歌って。

               少女が口笛を吹いた
                僕はその哀しいメロディーに詩をのせた
                 愚かしい正義の微笑
                  愛すべき地団太の孤独
                   僕らはふしだらなこの世界を愛した
                    何万回も愛した
                     死んで生まれ変わり
                      カルマの螺旋に乗り
                       君と僕は出会ったのだ

                       決して偶然等ではなく

                       近隣の郵便局から
                      一通の手紙が届いた
                     差出人は不明だったが
                    その字体の書き方で
                   すぐに君だと分かった
                  古い友人
                 いつか離れ離れで暮らす日常



            「やあ。元気かい?
           僕は元気にやっている。君もそうだと嬉しい。
          長い時間が経ったね。
         今でも僕は僕を許せないんだ。
        たぶん君と同じ様にね。
       ところで、
      ところでそっちの世界はどうだい?
     相も変わらず愚鈍な輩がトランプを切っているのかい。
    でも君は安心していいよ。
   何故なら
  ジョーカーのカードは僕がこっちに持ってきたからね。
 奴等は永遠に上がれない。
永遠にゲームは続くのさ。」

  くすくす微笑む君の表情を想った
   だとしたら。
    だとしたら僕らのゲームも永遠に終わらないんだね。
     くすくす、と君が微笑む
      僕らは狭い部屋で
       ハルシオンの錠剤をジャクダニエルで飲み干した
        すぐに酩酊した意識の範疇で
         世界の尺度を分析した
          君は物理と天体に詳しかったから
           この世界について永遠に喋り続けた
            僕は黙って君の声を聴いた
             どんな音楽よりも優美な音色を

              君が去った寒い冬が行き去り
               何度も暑い夏の幻想が訪れた
                何度も何度も夏が訪れた
                 僕の時間は永遠に真夏の炎天下の下なのだ

                 僕らはアルコールを飲み続けた
                  現実界隈の人込みに塗れ
                   呆れたゴシップと
                    現実特有の気だるい疲れの中

                    緑の草原
                   少女が語りかける
  
                  あなた
     
                 前髪が長すぎるのよ

               そんなんじゃ前が見えないわ

             前?

            どうして前を見なくちゃならないんだい?

           少女がくすくすと微笑んだ

          約束なのよ。この世界にあなたがいる為の。

         目をつむってお酒でも飲んでて。
        すぐに終わるから。

       僕が目をつむると
      はさみで前髪が切り落とされてゆく

     君さ、
    何で髪切ってんのさ?

   なんだっていいじゃない、切れ味が問題なのよ。

  ちょきちょき

 終わったわ。ジ・エンデ。

  目を開けると青すぎる青さの空が見えた

   眩しすぎる日差し

    駄目だよ、僕にはこの世界は眩しすぎる。

     また前髪を伸ばすことにするよ。

      そうしたら、

       また前髪を切ってあげるわ。

        簡単なことよ。

         少女が優しく語りかける

          くすくす

           緑の草原の中

            少女が口笛を吹く

             哀しき口笛

              僕は酔いのまどろみに

               永遠のまどろみに





 
               手紙と切りそろえられた前髪

















             
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする