ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

5 特急列車の売り子 116ページ目 

2012-11-07 23:31:38 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
【116ページ】


「特急列車の座席で隣り合わせた?」


和音が佐山社長に訊いた。

すると、ハイランズ・コーヒーを入れる準備していた桃子が答えた。


「私は、特急列車で売り子をしていたのです。」

「そう、売り子をしていた彼女にコーヒーを注文したのが初めての出会いです。

紙コップに入れられたコーヒーだったのですが、マイセンのコーヒーカップに

我が社の最高級コーヒーを入れたものにも負けず劣らずおいしかったのです。」

「それは旅行中だったからだと思います。

旅行中に食べる駅弁はおいしいが、スーパーの駅弁セールの駅弁を家で食べると

あれ?と思うほどおいしく感じられないわ!」


和音は、うなずきながら話を聞いている。

そして20年熟成のポートワインを一口飲んで、佐山社長の話の続きを待った。


「それからは、勝浦からの帰りは、彼女に出会った同じ時刻の列車に乗ることに

したのです。いつもコーヒーを注文して顔見知りになったある日、彼女はおいしい

コーヒーを入れるだけではなく、コーヒーのテイスティング力に優れているのに

気付いたのです。」


ここまで話すと、佐山社長もポートワインを一口飲んで一息ついた。


「そこで、彼女を我が社の社員にスカウトし、最初は品質管理部でテイスティング力を磨き、

その後、秘書室へ配属したのです。」

「荒川さんのコーヒーを飲みたくなった?」


和音が笑いながら訊いた。


「まさにその通り!」

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