ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 56ページ目 3本のコルトン・シャルルマーニュのトリック   

2013-03-03 22:39:34 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【56ページ】


「白庭園芸で販売する花をすべて、白色に替えさせたのだが」

「あの有名なウェディングホワイトローズですね?」

「ああ、それは白花の第一号。花を白色に替えさせたのだから、趣味で飲むワインも

すべて白ワインに替えることにした。」


 白庭社長は、カール大帝の本に目をやった。


「赤ワインをすべて白ワインに替えさたのは?」

「シャルルマーニュです」

「私はナポレオンとカール大帝が大好きだった! 白ワインのお気に入りは自然とカール大帝が

造るように命じたワインすなわちコルトン・シャルルマーニュになったのです。」


 専属ソムリエの草木は2本目のコルトン・シャルルマーニュを抜栓し、ワイングラスに注いだ。

ワイングラスを手に取った白庭社長はすぐテイスティングを行なった。


「これは1997年だね?」


 草木はワインを覆っている紙を取り払って、ラベルを白庭社長に見せた。


「白庭社長は、いとも簡単にビンテージを当てますね?

和音さんとのテイスティング対決ではトリックを仕掛けなくとも勝負できるのでは?」


「コルトン・シャルルマーニュに限定すれば、トリックなしで互角以上の勝負ができる。

しかしそれではダメなのだ!」


 草木は首を傾げた。


「なぜ、ダメなのですか? 白庭社長が絶対負けない対決なのに?」

「私が正解する! 和音さんが正解する!そしてテイスティング対決が引き分ける。

そこにワイン通倶楽部の仲間に自慢できるドラマ性がどこにある?」

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 55ページ目 3本のコルトン・シャルルマーニュのトリック   

2013-03-03 00:11:03 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【55ページ】


 白庭社長は、本棚に目をやった。

本棚には、『ナポレオンの生涯』『皇帝ナポレオン』『ナポレオン言行録』『ナポレオン戦争』

『ナポレオン戦争従軍記』等のナポレオン関係の本と『カール大帝時代』『カール大帝のヨーロッパ』

『カール大帝巡遊記』『シャルルマーニュ伝説』等のシャルルマーニュ関係の本が並べられていた。

カール大帝のフランス語読みがシャルルマーニュであるので同一人物である。


「私はヨーローッパの歴史の方に興味があって、日本の武将よりもナポレオンやカール大帝に

憧れていたのです。大人になってワインを飲むようになると、お気に入りのワインがナポレオンの

愛したブルゴーニュのシャンベルタンになったのは自然な成り行きだったのです。」


「判りました! 赤ワインはシャンベルタン、白ワインはコルトン・シャルルマーニュがお気に入り

になったのですね?」


 白庭社長は、首を振った。


「いや、赤ワインの方が好みだったので、君のお父さんが専属ソムリエだった頃は、シャンベルタンばかり

飲んでいたのですよ!」

「私はコルトン・シャルルマーニュを開けることが多いです!」

「シャンベルタンからコルトン・シャルルマーニュにお気に入りが変わったのは、夢枕でのお告げがあった

からなのです。」

「ええ? お告げですか?」

「お告げはワインではなく花の方で、白い花を広めなさいということだったのです。」


 夢枕でのお告げは本当にあったのではなく、白庭園芸が次ぎから次へと新しい色の花の作出に対して、

それを妬んで流した辱めの噂を封じ込めるための作り話であった。