goo blog サービス終了のお知らせ 

ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 152ページ目 盲目のソムリエ  1953年の再来   

2015-03-22 15:35:37 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【152ページ】



 専属ソムリエの打田が、2番と書かれた紙を取り払うと、シャトー・パルメ1989年が

現われた。


「大沢理事長のテイスティング力すばらしいですね」


 和音が褒めると、大沢理事長は首を振りながら答える。


「いやいや、シャトー・パルメに限ってのことです。」

「そうだ!大沢理事長、シャトー・パルメが一番のお気に入りになった訳を聞かせて

くださいよ」

「それでは、シャトー・パルメ1989年を飲みながら、聞いていただけますか?」

「ええ、ぜひ」と和音が頷く。


「私は、二人兄弟で兄がいます。

彼は優秀で、父の経営する大沢病院の医師になり、将来大沢病院の院長が約束

されていました。

それに対して私は、優秀な兄に反発して、勉強をせず遊んでばかりいました。

そんなある日、私は両親から呼ばれました!

また小言かな?と思ったのです。」


 和音と粉河は、シャトー・パルメを飲みながら大沢理事長の話を聞いている。


「ところが、『ちょっと教えてほしい』とのこと。

病院と関係する事業で、将来有望と考えられるものは何かという問いであった。」


大沢理事長も1953年の再来と噂される1989年のスーパースターを一口飲む。


「和さんならどう答えますか?」

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 151ページ目 盲目のソムリエ  シャトー・パルメ   

2015-03-21 00:33:32 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【151ページ】


 粉河は、ワインの香りを嗅ぐ。


「おや?」


 粉河は、首を傾げた。

彼は、ワイングラスを口に運ぶ。


「うーん」と唸って、ワイングラスをテーブルに置いた。


「粉河さん、ワイン名とヴィンテージは和さんの推測通りでしたか?」


 大沢理事長が粉河に訊いた。


「大沢理事長なら直ぐに判ると思います。」

「和さん、それでは我々も飲みましょう」


 専属ソムリエの打田は、2番のワインを二つのグラスに注いだ。


 大沢理事長と和音は、それぞれグラスを手に持つ。

大沢理事長が、ワインを口に含む。


「おっ、これは私のお気に入りのワインだ!」


 和音もワインを一口飲む。


「あっ、私の『おてつき』でした!

このワインは、シャトー・マルゴーではなく、シャトー・パルメでした。

シャトー パルメ シャトー パルメ 2010 赤 750ml
クリエーター情報なし
メーカー情報なし



大沢理事長、粉河さん、ヴィンテージは、1級シャトーを凌ぐほどの出来栄えとの

評判の1989年では?」

「ワイン選びは、打田さんに任せたが、私も1989年だと思う。」

「私もそう思います。」と粉河が頷いた。



シャトー パルメ ヒストリカル・19th・センチュリー・ブレンド [2006]3本入り《木箱》
クリエーター情報なし
シャトー パルメ



 ※シラー種をブレンドした19世紀のシャトー・パルメ風だそうです。

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 150ページ目 盲目のソムリエ  トリックが通用しない?   

2015-03-17 11:41:09 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【150ページ】


 打田は、ソムリエナイフを手に持って、2番のワインを抜栓しようとした。
しかし、彼の心は動揺して、それに集中できなかった。
和音に、ワイン名とヴィンテージを言い当てられたからではない。
彼に、ワインを飲む前にワイン名とヴィンテージを推測で言われたからである。

 和音とのテイスティング対決で考えていたトリックは、師匠の粉河が先にテイスティングして、
先に正解を答えて勝利する仕掛けであった。

しかし、その前提は崩れ去った。

和音は、テイスティングをしなくても、先に答える可能性が出てきたのだ。
師匠の粉河もそのことに気付いたに違いない。

すると、より早く答えようと思って、テイスティングの判断を誤るかもしれない。


「打田さん、抜栓に手間取っていますね?」


 大沢理事長が、怪訝そうな表情を浮かべながら催促した。

「あっ、すいません」と打田が我に返った

「粉河さんに、先に注いでやってください」

「承知しました」


 打田は、2番のワインを抜き、グラスに注いでテーブルに置いた。

「粉河先生、ワインをテーブルに置きました。」

打田は、粉河にワインを置いたことを知らせた。

粉河は、いつものように目が見えているかのようなスムーズな動きで
グラスを手に持った。

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 149ージ目 盲目のソムリエ  100点満点のワイン 

2015-03-15 14:14:33 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【149ページ】


「ええ、だから偉大なヴィンテージである2003年のシャトー・ジスクールだとすぐ推測できました。」

「なるほど」と大沢理事長が頷いた。


「和さん、4本目のマルゴー村のワインを飲みましょう。
2番のワインでいいでしょうか?」


「ええ」と和音が大沢理事長に答える。


 専属ソムリエの打田が、2番のワインを手に持った。

「大沢理事長、ワイン名とヴィンテージを予想してみましょうか?」

「ワインを飲む前に、ワイン名とヴィンテージが判ると?」

 和音は、笑みを浮かべながら頷く。


「マルゴー村のワインの飲み比べですね?

1番は、大沢理事長のお気に入りのシャトー・パルメだと思います。
3番から5番のワインは、格付けにとらわれず、高評価のおいしいワインでした。
大沢理事長のプライベートワイン会では、第3級のワインしか出さなかったと
うわさになれば困るでしょうから、打田さんならシャトー・マルゴーを必ず入れる
と思います。

そして、ヴィンテージですが、お気に入りのシャトー・パルメなら珍しいオールドヴィンテージ
を選ぶ可能性がありますが、シャトー・マルゴーなら近年の最高評価のワインを選ぶでしょう。
著名なワイン評論家から100点満点の評価を受けたヴィンテージそれは、2000年です。
打田さんの手に持ったワインは、シャトー・マルゴーの2000年だと予想します。」

[2000] シャトー・マルゴー Ch.Margaux 750ml
クリエーター情報なし
シャトー・マルゴー





「なるほど!

では、粉河さんにテイスティングしてもらいましょう。」

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 148ージ目 盲目のソムリエ  シャトー・ジスクール 

2015-03-10 15:01:04 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【148ページ】


 大沢理事長は、和音からワインを受け取り、紙を取り払うと、驚きの声をあげた。


「おお、ワインのラベルのデザイン、ヴィンテージが和さんの例えと同じだ!
すべてを見通したうえでの右脳トレーニングの話だったのですね?」

「大沢理事長、そんなに驚くことではないですよ!

私と和音さんは、このワインを飲んだ時、広大な敷地の美しいシャトーの同じイメージを
浮かべました。

この時、ワイン名はシャトー・ジスクールと判っていたのです。
すると、ラベルは金色の人魚のデザインになるわけです。
私は、実際に見ることができないので、聞いた情報から想像した人魚ですが。」

「では、ヴィンテージは?」

和さんは、楽しんでワインを飲むときは、ヴィンテージを意識しないのでしょう?」

「ヴィンテージの件は、私から説明させていただきましょう。
プライベートワイン会のマルゴー村のワインですが、大沢理事長から依頼された打田さんは
すばらしいワインを用意していると推測できます。

特別評価の高いヴィンテージは限られているので、予想がつきやすいのです。
このワインを飲んで浮かんだ金色の人魚のイメージは、まだ少女のような顔つきだったのです。
しかし、数年後には絶世の美女の人魚になる顔立ちだと想像できました。」

「それは、比較的若い年代のヴィンテージで、熟成が進めば、偉大なワインになると
いうことですね?」


 大沢理事長が、和音に真意を訊ねた。



シャトー ジスクール 2012 赤 750ml
クリエーター情報なし
シャトー ジスクール




プティット シレーヌ ブラン シャトー ジスクール 2012 白 750ml
クリエーター情報なし
シャトー ジスクール



 ※シャトー・ジスクールの白ワインはお手頃な価格です。