「川柳歳事記」

艶
美しく老いて妖しい艶ばなし
艶やかな黒髪少女脱皮する
ハイになるまでは骨は艶々に

「川柳歳事記」

食べる
出たものは残さず食べる戦中派
空想も食べておんながとんでいる
満月を二人で食べる罪一つ

「老いて新鮮」松ひさし

御免ね　虫さん

青い色の青虫さん　キャベツがおいしいでしょう
黒い色の黒虫さん　白菜がおいしいでしょう
虫さんの嫌いな毒入り薬は
野菜つくりに使っていませんからね
ムクリ　ムクリ　モッコ　モッコ　虫さんが動く
サック　サック　パリン　パリン　虫さんが食べる
コロン　コロン　ポロリ　ポロリ　虫さんがうんちをする
キャベツや白菜は虫さんたちに食べられて
葉っぱが穴だらけ
破れたようになった葉っぱもあるよ
これは困った
キャベツや野菜を育てたワタシが食べられなくなるよ

青虫さんや黒虫さんには悪いけれど
ワタシは悪魔の心になって
虫さんの命をちょうだいします
罪なことだけれど許してね
ワタシは虫さんをつかまえ　手袋をはめた手でつぶす
ワタシは虫さんを地面に投げ　長靴をはいた足で踏みつぶす
御免ね　御免ね　虫さん


（つづく）

「川柳歳事記」

太鼓
乙女らの色気も弾む撥捌き
太鼓判推せる議員の顔がない
自己管理説いてる上司太鼓腹

「川柳歳事記」

袖
無い袖を搾り取られる新学期
袖にした彼女が何と玉の輿
無い袖も振らねばならぬマニフェスト

「川柳歳事記

世話
もっとずっと世話女房で居たかった
敬老会世話するつもり世話になる
野に山に沢山世話になりました

「川柳歳事記」

すっきり
十日ぶり浸かる断水後の湯船
素っぴんになって女の今日閉じる
瀬の音を枕に旅のいい目覚め

「川柳歳事記」

シンプル
シンプルなハートが恋に着火せぬ
結果から話そう分かり易いから
シンプルに生きる女の台所

「川柳歳事記」

少年
胸の奥　少女の名前いつか住み
少年の心の鍵が錆びて鬱
デッサンのまま少年の恋終わる

「老いて新鮮」松ひさし

御免ね　虫さん

青い色の青虫さん　キャベツがおいしいでしょう
黒い色の黒虫さん　白菜がおいしいでしょう
虫さんの嫌いな毒入り薬は
野菜つくりに使っていませんからね
ムクリ　ムクリ　モッコ　モッコ　虫さんが動く
サック　サック　パリン　パリン　虫さんが食べる
コロン　コロン　ポロリ　ポロリ　虫さんがうんちをする
キャベツや白菜は虫さんたちに食べられて
葉っぱが穴だらけ
破れたようになった葉っぱもあるよ
これは困った
キャベツや野菜を育てたワタシが食べられなくなるよ

（つづく）