「老いて新鮮」松ひさし

他人様に感心

幼いころからひ弱で運動は苦手
勉強ができるわけでもない
人前で話すことが恥ずかしく　歌うと調子はずれ
絵は　丁寧に描いても荒っぽく描いてみても下手な出来
それなら作文をと思っても　普通のこと分かり切ったことしか書けない
こんな俺にはなんの才能も無い　勤めがよく果たせたものだ

神さまが与えてくれた何かの才能が　誰にもあるらしいと聞いた
俺には何があるのか
力仕事も考える仕事も他人様のようには出来ない
他人様の優れた才能と努力の素晴らしさに感心するばかり
例えば　高級車を毎月何台も売り続ける営業マン
人間の内臓を活動させながら手術する医師
遭難が多い高峰を単独で登頂する青年
楽譜なしに聴いた記憶で長い楽曲を演奏する少年

「映像川柳」

受賞した知らせ日本を活気づけ
　　　　　　　　　　　美和山吹

「川柳歳事記」

耐える
幾年を耐えて今朝聴く蝉しぐれ
出産に耐え赤ちゃんとご対面
被災の児耐える笑顔が輝いて

「映像川柳」

愚痴一つ溶かす一人の雪見酒
　　　　　　　　　　　美和山吹

「川柳歳事記」

戦跡
戦跡の平和の像に舞う蝶々
血の色に草木を染めた硫黄島
戦跡を語るドームに火の匂い

「映像川柳」

空想が地球の未来塗り替える
　　　　　　　　　　　美和山吹

「川柳歳事記」

吸う
婆婆の血を吸って不味さにたじろぐ蚊
汗吸うた土は決して裏切らぬ
家計簿が小遣いまでも吸い上げる

「映像川柳」

結び目に遊びが欲しい夫婦仲
　　　　　　　　　　　美和山吹

「川柳歳事記」

城
軒下にくもが構えた一夜城
七坂を越えて築いた小さな城
いつからか妻が城主の顔をする

「雑詠」

生き甲斐か苦痛かブログ書き続け
美和山吹