つむじ風

世の中のこと、あれこれ。
見たこと、聞いたこと、思ったこと。

お祓い師

2016年06月20日 10時59分02秒 | Weblog

 丁度、今野 敏さんの「パラレル」を読み終わった日、職場の同僚から妙な話を聞いた。同僚の山田さんは6月9日から4日間、お休みを取り、出身の奄美大島へ飛行機で帰省した。嫁さんも同郷の人で久々の楽しい里帰りということで、ここまではよくある話しである。

 奄美大島に着くと、今回は義理の弟(嫁さんの弟)の所に世話になり、その日は積もる話で盛り上がり、楽しい夕べを過ごしたようだ。翌日(10日)は幼馴染を訪ね、島の景気や暮らしを尋ねたりしてあっという間に時間が過ぎてしまったようだ。明日(11日)にはもう上京しなければならない。翌日の午後、楽しかったひと時を思い返しながら二人で空港へ向かった時のことである。

 二人が空港に着いたとたん、何故か山田さんの右足に丁度足が吊ったような強烈な痛みが走り、その場にへたり込んでしまったのである。元々左足は腱が弱くあまり無理が出来ない持病があるところに持ってきて、今度は右足である。嫁さんが備え付けの車椅子を借りてきてそれを使って何とか空港の外に出て、そのまま救急車で病院へ直行するはめになってしまったのである。

 病院では触診及びレントゲン等で外科的障害ではないことを確認し、マッサージと湿布、テーピング処置をしてもらった。しかし、痛みは一向に退かず、松葉杖でも歩けない状態に。
 あまりの突然なことに困り果て、介護師をしている友人に電話して、状況を説明、何かしらよい方法はないものかと助けを求めたのである。友人も仕事の関係上足腰が不調になることもあり、どうしても治らないときは医者ではないがマッサージや整体もやる、接骨院を訪ねるということだった。そこでよければということであったが、勿論山田さんはワラにもすがる思いで紹介してもらうことにした。

 友人の肩を借り付き添われてその接骨院を訪ねてみると、接骨院の主はすでに玄関の前に出て出迎えてくれたのだが、その時独り言のように「また、変なのを連れて来やがって」と言ったようなのだ。山田さんはそれを小耳に挟んで、随分失礼な奴だな、と思ったそうである。それでも痛みには逆らえず、主の指示に従ってともかく友人と一緒に院内に上がり込んだのである。院内は、格別どうということもないところだったが、主の指示で床にうつ伏せになり、触診と軽いマッサージを受けたという。

 それで、「痛みは無いはずだから、立ってみよ」と言われ、恐る恐る立ってみると、多少痛みはあるものの付き添い無しで立てるではないか。今度は立ったりしゃがんだりしてみるように指示があり、これもやってみたが、どうもない。まったく信じ難い状況である。

 それから、どうにか歩けそうなので礼を言って接骨院から一歩出るとまた、急激な痛みが沸き起こって来るのである。院に入ると収まるらしい。主は「やはり、そうか」と言って、山田さんを再度床にうつ伏せにして何かお祓いのようなことをしたらしい。一体どういうことなのか、主に聞いてみたところ、どうも良くない所に近づいたことで「悪いものに足を撫でられたのだ」という。
 良くない所と言われても心当たりもないが、山田さんは空港へ行く途中で道に面して斎場があったのを思い出し、主にその旨説明したところ、多分そこだろうとのことであった。人は「気」が弱くなると、邪悪なものが寄ってくるのだそうで、中には獲り憑くこともあるのだとか。

 その後、痛みは少し残るものの歩行には問題ないようで、ようやく友人と一緒に院を出ることが出来た。友人によると、今まで何度か来ているが、玄関に出迎えてくれたことは一度もなく、戸口で声を掛けると、中から戸を開けて入るよう指示があるのが通常なのだそうな。山田さんは友人が先に電話で予約を入れてくれたものとばかり思っていたが、そのようなことはしなかったという。

 また、「また、変なのを連れて来やがって」と言ったのは、山田さんのことではなく、山田さんに憑いて来たものが主には見えたのではないだろうか、と。12日(日)の夜、山田さんはやっとの思いで、どうにか東京に帰って来ることが出来たのである。そして13日(月)、山田さんは職場で右足をさすりサロンパスを塗りながら、昨日のにわかにはとても信じ難い出来事を大真面目に語ってくれたのである。

 厄年で厄を祓うのは、年齢によって「気」が弱まる頃を見計らって邪悪なものを祓うという意味が、葬儀などに出席して帰ってきたとき、家の玄関前で塩を振るのは憑いて来たかもしれない邪悪なものを祓うという意味があるのかもしれない。健康で、何も問題が無いときは、とても信じられたものではない。いや山田さんのように自ら体験しても尚信じ難いらしいが、実は現世の我々には知り得ない魑魅魍魎の世界が、そこかしこにパックリ口を開けているのかもしれない。ただ、見えないだけで、、、。

 最悪の場合は、鬼龍光一(鬼道衆)、安倍孝景(奥州勢)の両氏にお願いして、お祓いをしてもらうしかないだろうな。それにしても、接骨院の主はいったい何者なんだろう。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿