つむじ風

世の中のこと、あれこれ。
見たこと、聞いたこと、思ったこと。

かっぽん屋

2014年12月23日 12時09分02秒 | Review
 重松 清/角川文庫

 著者には2012/01/21に「ニッポンの単身赴任」という本でお目にかかったことがある。面白おかしく、ほろ苦い、週刊誌が得意とする範疇だった。今回の作品も恐らく同時代のものだろう。

 2002年6月25日初版、2006年5月25日第8刷。「かっぽん屋」とは何の商売かと思ったが、、、とにかく青春グラフィティそのものだ。で、一冊まるごとそうなのかと思っていたら、途中(Side B)からガラッと話が変わってしまう。あれれ、「かっぽん屋」は何処へ行ったの?てな具合。「作品の色合いがバラバラ」なのは承知の上で、この一冊にまとめたらしい。早い話が「短編集」なのである。各作品の発表の時期も相当離れているようで、何でこの作品の収録なのかは判らない。

 著者は作家、或いは小説家と称するより「リライター」と言った方がシックリ来るということだが、なるほど確かに。でも、根っからの作家、或いは小説家で、他のものには目もくれないと言う人は稀。大方は自分の可能性を信じて(試して)色々なものに挑戦するのが常である。その上で「リライター」と言っているのだ。

 人にはいろいろ趣向というものがあって、同じ人間でも時と場合によって選択が変わる。それでもやはり作品の中で一番面白かったのは「デンチュウさんの傘」だろう。人は、自ら変革することもあるし、環境(時と場合)によっても変わるものだ。その際のキッカケというのも大事なことだ。いや、人生いたる処にキッカケ在り、というべきか。関わり方が積極的か、消極的かの違いはあるかもしれないが、そう考えると「かっぽん屋」も悪くない。それも、A面にもってくる所が著者らしい。

 最後の「ロングインタビュー」も面白い。この手の稼業の実態が窺い知れる。決して真似したいなどとは思わないが。


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