メタンガスの良いところは、燃焼時に窒素酸化物(NOx)の発生が極めて少ないことがある。即ち空気が汚れないということだ。その他、低温圧縮すると液化して気体に比べて体積が1/600に縮まること。コンパクトになって持ち運びに便利、これが「液化天然ガス」と言われるものだ。
外食産業や食品加工工場などから排出される食品廃棄物、畜産業から廃棄される畜糞などの一部は堆肥として再利用されているが、しかし、その大半は大量の石油エネルギーを使って焼却処分されているのが現状である。そこでこのメタンガスの威力に目を付けて有機物を含む食品廃棄物や畜糞からメタンガスを取り出し、そのメタンガスをエネルギーとして有効活用する「メタンガス発酵プラント」というものがある。メタンガスはそのまま燃料として利用できるほか、発電設備を通して電力としても利用できる。東京都水道局でも「汚泥処理過程で発生する未利用エネルギーであるメタンガスを発電設備の燃料として活用する」というプラントを平成14年から稼働しているらしい。
ここまではメタンガスそのものの話しだが、ここから二酸化炭素を食べてメタンを出す微生物の話しだ。このような微生物の存在はかなり前から知られているが、この微生物に活躍してもらって本格的にメタンガスを生成するという壮大な計画がある。 場所は青森県の県下北半島沖の海底炭田。この一帯には厚い粘土層に覆われた褐炭層があり、この中に二酸化炭素(CO2)をメタン(CH4)に換える「メタン生成菌」の生息が確認された。そこで、この褐炭層の下に二酸化炭素を押し込めば、セッセと「生成菌」がメタンに変換してくれるという訳だ。
簡単過ぎて夢のような話しだが、「厚い粘土層」の下とは2,000~4,000(m)も地下の話しで、しかも「生成菌」のメタン転換能力は、通常1億~100億年掛かるという気の長いもの。せっかちな人間の時間感覚ではとても太刀打ちできない厳しいものだ。 しかし自然任せでは1億~100億年掛かるが、何かしら工夫して100年くらいに時短することが出来たら、グッと現実味を増してくる。東北から北海道沖の褐炭層に、日本の年間排出量の100倍以上にあたる最大2,000億(t)の二酸化炭素を封入することが可能と推定されているのである。こうなれば、将来巨大な天然ガス源に化ける可能性がある訳だ。
勿論、メタンを燃焼させれば二酸化炭素が発生するのだが、メタンそのものを空気中に放出させずに済む。更には燃焼で発生した二酸化炭素を集めて再び地下へ押し込める・・という環境を劣化させない循環が成立する。2013年まで調査して、結果に応じた実証実験に移行する予定らしい。いや本当にSFのような話しだが、光が見えてくるといいね。