―アルバイト探偵アイシリーズ―
大沢在昌/講談社文庫
1996年1月15日初版、2006年12月4日第28刷。4作品集録の短編集。痛快コメディアクションということでシリーズにもなっているらしい。
・避暑地の夏、殺し屋の夏
・吸血同盟
・調毒師を捜せ
・アルバイト行商人
元内閣調査室職員だった父と高校生の息子のやっている探偵事務所の話し。いずれの作品も主人公や取り巻きの顔ぶれは同じ。事件毎にその関係者があらたに登場する。確かに「烙印の森」から始まって「涙はふくな、凍るまで」「砂の狩人」「影絵の騎士」「炎蛹」「風化水脈」「らんぼう」「新宿鮫」「毒猿」「標的はひとり」など読んできたが、そんな作品と比べればそれなりに「痛快」と言えるかもしれない。しかし、世の中全体から見ると、それほどでもないように思う。今ひとつ「抱腹絶倒」に至らない不満が残る。軽ハードボイルド、軽アクションというカテゴリーになるらしいが、それはそれ、これはこれと言われれば、そうなのだが。とにかくあまり深く考えず、ポンポンと調子よく読み進めるのが、この手の作品の流儀らしい。
著者は高校2人のとき、1年間で1,000冊の本を読んだとか。確かにミステリーでもハードボイルドでも縦横無尽に書き分ける多彩さがある。ただ作品がエンターテイメントとして「面白い」のかということで言えば、厳しく言えば一言の但し書きも無しに諸手を上げることは出来ない。そんな作品はめったに無いのだけれど、好みから言えば軽すぎて面白くない。シリーズを追いかけてみようとも思わない。不良の主人公に憧憬を抱くことも無い。ほとんどリアリティに欠けている。まあ、世の中こんな作品もあるのだなあと思うだけである。
ただ、重い作品に読み疲れたときは、いやし効果があるかもしれないが、NS400Rで疾走しているほどに「痛快」とはいかないだろう。