つむじ風

世の中のこと、あれこれ。
見たこと、聞いたこと、思ったこと。

ヨウ素

2011年03月27日 12時30分22秒 | Weblog

 放射性物質として「ヨウ素」というものがよく話題になっている。周期律表で見ると、記号「I」、原子番号53、原子量126.9044(≒127)の元素である。別名ヨウド(沃度)とも呼ばれている。人間にとっては劇物(毒物の一歩手前)なのだが、消毒薬としてもよく用いられる。ヨウ素のアルコール溶液がヨードチンキである。

 このヨウ素は人間にとって、体内で甲状腺ホルモンを合成するのに必要不可欠な元素でもある。人体に摂取、吸収されると、ヨウ素は血液中から甲状腺に集まり、蓄積される。もし、これが不足すると「ヨード欠乏症による甲状腺異常」が発生することが知られている。日本では海藻などから自然にヨウ素の摂取が行われるが、大陸の中央部ではヨウ素を摂取する機会がほとんどない。従ってアメリカや中国では食塩に一定量のヨウ素を混ぜて「ヨード欠乏症による甲状腺異常」を防いでいる。

 ここで言うヨウ素は「ヨウ素127」という海水に一定量含まれている安定元素である。同じヨウ素でも原子量の異なる「同位体」というものがあり、ヨウ素にはその同位体が37種類もあるらしい。「ヨウ素127」は、その中で唯一安定している元素である。他の同位体は常に放射線を出しながら崩壊の途上にあり、異なる物質(キセノン)に変化していく。丁度作りたての食べ物が時間とともに劣化、腐敗していくのと似ている。この際の「賞味期限」は「半減期」と相対的に同じである。

 「ヨウ素129」は、宇宙線やウランの自発核分裂によって常に一定量が大気中に放出されているもので、半減期は1,570万年と長い。つまり、大昔から常に人間の頭の上から降り注いでいるものである。これに対し、ヨウ素131は、通常核分裂によって生成されるもので、β線、γ線を放射しながら崩壊していく。その半減期は8日とされている。

 ヨウ素は、他のミネラルと同じように人間の生命維持に対し必要不可欠な元素でもあるが、その同位体によっては、かなり性質が異なっている。半減期の短い(nsからms)ヨウ素同位体はSPECTやPETといった先進医療(断層撮影)にも応用されている。つまり、薬にもなれば毒にもなる。すべては、「量と時間」を厳密に制御(コントロール)出来るかどうかに掛かっている。

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放射線

2011年03月25日 20時53分11秒 | Weblog

 今、福島の原子力発電所が地震と津波による被災で不安定な状態に陥って、その運転(制御)が困難になっている。そのことについては、個人として何もすることは出来ないが、この際、せめて「放射線」について勉強しておこうと思う。放射線にはどんなものがあるのだろうか。

 「~線」と言えば、一般的に紫外線、赤外線、遠赤外線などが知られているが、これらは何処にでも存在し、「紫外線」などに当たることは出来るだけ避けねばならないとされている。シミ、ソバカスの元でもあり、人によっては皮膚ガンにもなる。一方その紫外線は殺菌効果があり、いろいろな機器器具の消毒や医療にも使用されている。赤外線や遠赤外線は暖房機器にも使用されている。ご承知の通り、あまり近くで長く当たっていると火傷する。遠赤外線では、表面だけでなく内側からもこんがりと火傷することになる。

 そもそも、毎日お世話になっているお天道様(太陽)や宇宙の彼方で起こる星の生成(誕生や消滅)で、我々の頭の上には何等かの「線」が大昔から常に降り注いでいる。それが自然の状態である。従って、何の「線」もない「無菌室」のような状態というのは逆に有り得ない。ただ、人体が「線」にさらされるその「線量と時間」が問題なのである。その他、「~線」と言われるものには以下のようなものがある。
・α(アルファ)線
・β(ベータ)線
・γ(ガンマ)線
・X(エックス)線
・中性子線
・重粒子線

 α線やβ線は、かなり破壊力が小さく、透過力も弱いようで紙や薄い金属で遮蔽することができるものらしい。とは言え「線量と時間」によっては危険である。それが3/24日、原発で作業中の3人が受けた「β線熱傷」だ。足下の水溜まりは400(mSv)ほどあり、その水が靴の中に入ったらしい。受けた線量は173(mSv)~180(mSv)だという。

 γ線は「コバルト照射」などと呼ばれてガンなどの治療に使われている。ガンの放射線治療と言えば、X線の他に最近では重粒子線も使われている。また、昔から体内の様子を見るレントゲン写真撮影にはX線が使われている。

 原子力発電所から出る「~線」と、身の回りにある医療機器の「線」は、別ものであるかのように思えるが、実は全く同じものである。違いがあるとすれば、それはそれぞれの「線」の性質に応じて照射の量と時間を厳密に制御(コントロール)しているかどうかであって、どれを取っても安全な「線」などと言うものは1つもない。原子力発電に限らず、高度な医療機器であっても、そこらの暖房器具であっても使い方を誤れば、文字通り「火傷」するのである。

 X線写真や消化管造影、CTなどで受ける線量は、1mSv以下から数十mSvの線量である。1999年の東海村臨界事故の際には、主に中性子線で2名の方が亡くなった。大内さんは16~20Sv以上の被曝で3ヵ月後に多臓器不全で亡くなった。篠原さんは6~10Svの被曝で7ヵ月後、呼吸器不全で亡くなったとされている。その凄まじい治療の記録は「NHK「東海村臨界事故」取材班『朽ちていった命──被曝治療 83日間の記録』」に詳しく記されている。中性子線はパワーがあるようで、他の「線」よりダメージは数倍になるらしい。

 過去のこのような経験から、放射線被爆致死量は6~7(Sv)で、計算上X線写真で連続6,000回以上の撮影をしたのと同等になる。自然界から受けるものも含めて人体に影響がないであろうと思われる年間被爆線量の限度は1(mSv)とされている。

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