小池真理子/中公文庫
1997年2月18日初版、2002年2月15日第六刷。新聞などでお名前はよく見かけるのだけれど著者の作品は読んだことがない。特段魅かれたという訳ではないが、たまたま手に取る機会があり、読んでみた。長めの短編で以下の五作品が集録されている。
・贅肉
・ねじれた偶像
・一人芝居
・誤解を生む法則
・どうにかなる
どれも、独特の(表現し難い)文体(雰囲気)で読者を引き込むのがうまい。この得体の知れないミステリアスな不安、喪失感、孤独感は何ともいやらしい。気持ち悪いけど先を読みたくなるのだから巧みである。このような作品ははなんと言うカテゴリーになるのだろうか。ミステリー&サスペンスとは違うように思うし、オカルトの類でもない。解説者の朝山 実さんによれば「サイコホラー」などと言うらしいが、なるほどね。
どの作品もそうだが、そんな事があるわけないよと思いながら、妙なリアリズムが押し寄せてくるから不思議だ。しかもそれが生々しいから気色悪い。おそらく自らの心の中にも「そう考える」瞬間があり、心ならずもイメージが湧くからだろうと思う。そんな心象を描く巧みさは半端じゃない。
どのような取材、或いはきっかけがあってこんな作品が生まれるのか知るよしも無いが、これもまた小説の一つの面白さなのだろう。