シリア政府軍が、化学兵器を使用したことを許せないとして、アメリカ、イギリス、フランスなどが軍事介入を検討していると報じられています。その当事国であるイギリス下院がシリアへの軍事攻撃参加を否決したとのことです。当然といえばそれまでですが、過去イギリスはアメリカの言いなりとなって、イラクフセイン政権転覆などにアメリカブッシュ政権と一緒にイギリス軍を派遣し、軍事介入を行いました。そして、イギリスが国際テロ集団の標的となり、テロ事件が引き起こされ、罪のない英国市民がその犠牲となりました。
他国の紛争、宗教対立、内紛などは歴史的経過、複雑な事情などがあり、他国が軍事介入を持って改善、解決できるような政治問題ではありません。当事国内部の各政治勢力が、きちんと話し合い、結論を導き出さない限り、政治的な安定は作り出せないことはこの間の歴史が示すとおりです。
まして、アメリカのように自国にとって死活的利益がかかる政治課題として他国への軍事攻撃、介入を正当化するなどはあってはならにことです。また、化学兵器の使用は許せないとーーアメリカ政府が一方的に判断し、軍事攻撃するようなルールも世界的に通用しないことはあきらかです。過去において、アメリカはイラク戦争、ベトナム戦争でイラク、ベトナム市民を殺害しました。日本にも原子爆弾を投下しました。そのようなアメリカが世界の裁判官、警察官のごとく化学兵器の使用は許せないとの理由で軍事攻撃するようなことは絶対に容認できるものではありません。
安倍、自民党政権がアメリカのシリア攻撃を容認することを検討しているといわれています。アメリカ政権の主張を鵜呑みにし、その決定に従う様は、世界から見れば、日本政府の知的、政治レベルの低さを証明知る以外の何者でもありません。
<報道>
英下院は29日、シリアでの化学兵器使用疑惑を受け、英軍がシリアへの軍事介入に参加する前提となる政府提出議案を反対多数で否決した。議決に拘束力はないが、軍事介入への英軍参加は極めて困難になった。キャメロン首相は否決後、「軍事行動を望まない議会の意思が明確になった。政府はそれに従って行動する」と述べ、議会承認なしに介入に乗り出さない意向を表明した。 英国との共同行動を視野に介入方針に傾斜していた米国にとっては、米軍が単独で介入に踏み切るのか決断を迫られることになる。米英などの「有志国連合」にとって大きな痛手となった。
<報道>
安倍晋三首相は、米国などがシリアへの軍事攻撃に踏み切れば、「支持」を表明することを検討している。ただ国連安全保障理事会の決議がなければ、支持より低い「理解」を示すにとどめる可能性もある。シリア周辺で増加が予想される難民支援の資金拠出などの検討にも入っており、事態の急変に備えている。
「オバマ政権が化学兵器の使用をどれだけ証明できるかにかかっている。それを止めるためオバマ政権が議会や国民の理解を得たなら、わが国として支持するという明確な意思表示をしなければならない」。自民党の石破茂幹事長は29日のテレビ朝日の番組でこう強調した。
急速な情勢の悪化を受けて首相官邸や外務省は27日ごろから協議を始めたが、「具体的に何をするという話を米国としているわけではない」(政府関係者)。
シリア政府が化学兵器を使用したとの米国の見解を踏まえ、首相は28日の会見で「国際社会と連携する」と強調、米国をバックアップする意向をにじませた。だが、攻撃を容認する安保理決議案の採択は中露両国の反対で難航しており、態度表明のあり方を慎重に検討している。
1991年の湾岸戦争や2011年のリビア攻撃の際、日本は国連決議により国際社会が賛同したとして、首相や外相が支持の談話を公表した。米軍などによる01年のアフガニスタン攻撃、03年のイラク戦争では、直接の国連決議はなかったが、対米協力を重視する小泉純一郎首相が支持表明に踏み切った経緯がある。一方、99年の超法規的なユーゴスラビア空爆に対し、日本は「理解」を示すにとどまった。
今回、米英などの軍事攻撃は巡航ミサイルによる空爆など限定的なものになるとみられ、地上部隊は派遣されない見通し。このため、政府は憲法解釈で禁じられた「海外での武力行使」に関わる自衛隊派遣の議論が国内で起きることは当面想定していない。
政府内には、軍事介入に慎重なロシアに配慮すべきだとの意見もある。安倍政権は北方領土交渉の進展に向けロシアとの関係改善を目指しており、ロシアとの関係をこじらせたくないとの意図も働く。政府高官は「支持か理解か、方法は一つではない」と語った。